犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

日本語と韓国語④~高句麗語

2008-02-28 00:50:05 | 言葉
 ウィキペディアの「日本語の起源」という項目を読むと,これまで多くの学者が日本語の起源を追求し,「日本語アルタイ起源説」,「日本語・高句麗語同系説」,「日本語・朝鮮語同系説」,「オーストロネシア語起源説」,「タミル語説」など,さまざまな説が唱えられたことがわかります。

 韓国でも日本語と韓国語の同系論を唱えたがる学者は多く,「日本語は古代韓国語(祖語)から分かれた」式の説を,さしたる根拠もなく主張します。

 韓国言語学界の泰斗、李基文博士の論文集は日本でも翻訳されていて,読んだことがありますが,そのような民族主義的学者たちを批判している。

『韓国語の形成』(韓国文化選書6、成甲書房1983)は,次の5つの論文を収録しています。

Ⅰ韓国語形成史(1967
Ⅱ言語の親族関係(1968
Ⅲ韓国語とアルタイ諸語の比較研究(1975
Ⅳ高句麗の言語とその特徴(1978
Ⅴラムステッドの韓国語研究(1970

 彼は、古代の三国の言語について、

「高句麗・百済・新羅の言語に関する従来の見解は、大きく二つに分けることができる。その1つは、韓国の学者たちの見解で、これら古代三国の言語が単一であったと見たのであった。これは、たしかに現代韓国語または中世韓国語が与える偏見によるものだといえる。そして多くの著書に、古代三国の言語資料が互いに区別されずに同一言語の資料のように取り扱われていたのである。しかし、現代国家が単一言語であるから古代三国の場合にもかれらの言語が単一であったろうという先験的前提が容認されないことは、自明なことである。
 これとは反対に、高句麗の言語を今日の韓国語とは完全に分離してしまおうとする見解があった。これは主に日本の学者たちの主張で、高句麗をわが国と別に分離してしまおうとしたかれらの努力の一環といえる」

と述べ、入手可能なあらゆる言語資料をもとに日本語と高句麗語の類似を指摘、アルタイ諸語の中で、まず、トルコ・モンゴル・ツングース共通語と扶餘・韓共通語が分離、後者が、原始扶餘語と原始韓語に、さらに原始扶餘語が原始日本語と高句麗語に、原始韓語が新羅語に分離したという仮説を唱えている。

 ただ、博士自身も認めているとおり、言語資料が絶望的に少ないため、証明にはほど遠い。

 また,ここで存在が前提されている「アルタイ諸語」そのものに対し,懐疑的な学者もいる。の親族関係にすら懐疑的な学者が多いようです。

 たとえば風間喜代三は,百科事典の「語族」の項目で,これまで語族が確定したのは、

「インド・ヨーロッパ語族,セム語族,フィン・ウゴル語派にサモエード諸語を加えたウラル語族,ドラビダ語族,アウストロネシア(マレー・ポリネシア)語族,インドのムンダ諸語,ニコバル島の諸言語,それにモン・クメール語族とベトナム語などを包括するアウストロアジア語族,エスキモー・アレウト語族をはじめ多くの語族を含むアメリカ・インディアン諸語など」

で、アルタイ諸語については、

「チュルク諸語にモンゴル,ツングース,あるいは朝鮮語をも含めた名称として用いられている。それらの諸言語はたしかに類型的な一致を示しているが,音対応という比較言語学にとって最も重要な手がかりを十分に与えることができないために,この語族の仮定に否定的な学者も多い」

としている。

 シナ・チベット語族も言語の特性上音対応が求めにくいため、意見の一致を見ていないらしい。

 言語が似ている理由として、同じ起源から枝分かれする(同系)とは逆に、長期間にわたる隣接によって統合がおこる(言語同盟)場合があり、アルタイ諸語を同系と見ない学者は、言語同盟だと考えているのでしょう。

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