犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

韓国便り~三角地

2024-09-27 23:56:54 | 韓国便り(帰任以後)

写真:三角地のボンサンチプ


 三日目の夜、古くからの知り合いの韓国人と、二人で飲みました。

 場所は三角地(サムガクチ)。地下鉄4号線です。

 三角地には、私のお気に入りの食堂、飲み屋があったのですが、尹錫悦大統領が就任して、大統領府を青瓦台から三角地にある国防省ビルに移したので、もしかしたらなくなっているかも、と思っていました。

 けれども、チャドルパギの名店(峯山家、ボンサンチプ)は健在だったのが嬉しい。

 昔ながらの汚い食堂で、イルミネーションがないのでやっていないかと思ったら、店の外で数人が待っていました。今も人気があるようです。

 知り合いの韓国人は、50歳で大手の会社を辞め、今は小さな化粧品の会社で働いている。昨年会ったとき、給料は安いけれど、気が楽だと言っていました。

「一次会はぼくがおごるから、二次会を出してね」


 ボンサンチプには、私が通っていたときからいるアジュンマ(おばさん)がいて、今も店を切り盛りしています。ハルモニ(おばあさん)になっていましたが、お元気そうでした。私のことを覚えていてくれたのが嬉しい。主人のハラボジ(おじいさん)の姿が見えなかったのは、引退したのか。高齢だったので、亡くなったのかもしれません。

 チャドルパギ(牛肉の冷凍薄切り肉)の値段はかなり上がっていて、1人前22,000ウォン。

「もう、お子さん、大きくなったんでしょう?」

「はい、上の娘はサムソンで働いていて、息子は大学4年生です」

「サムソンなんて、すごいじゃない?」

「はい、このスマホ、娘がプレゼントしてくれたんです」

「息子さんのほうも、あとちょっとだね」

 あらかた肉を食べ終わりましたが、もう一軒行くことにしていたので追加はせず、テンジャンチゲを頼みました。

「この肉入りテンジャンチゲ(味噌鍋)が美味しいんだよ」

 網を下げ、テンジャンチゲの鍋を、炭火の上にじかに置くのがこの店の流儀。

「おいしいですね!」

 二軒目は、 ボンサンチプから数十メートルのところのテグタン(大口湯、鱈の辛い鍋)の店。テグタンの店はいくつか並んでいますが、最も有名はウォンテグタンに入りました。



「テグタン二人前と焼酎ね」

 われわれが注文する前に、アジュンマが確認してきます。この店の客のほとんどがそれを頼むんでしょう。

「ネー(はい)」



 数年前に会ったとき、不動産屋のお父さんが危篤だという話を聞いていました。私と会って2週間後に亡くなったそうです。お母さんは70代でまだ健在とのこと。

「不動産でお金を儲けたいとか言ってなかったっけ?」

「ハハハ、あれは失敗しました。投資用に買ったけど、ぜんぜん上がりませんでした。上がるのはソウルだけで」

夢(クム)

「息子が就職したら、田舎に引っ越そうと思ってるんです」

「田舎って、カンウォンド(江原道)?」

「いや、そこまでは。チュンチョンド(忠清道)あたりかな」

「ソウルは人が多すぎるよね」


「はい、田舎でのんびり暮らしたいです。そしてときどき日本にラーメンを食べに行ったりして」

 彼は、日本のラーメンが大好物だったのでした。

「来月またソウルに来るけど、時間がないかも。来年もたぶん来られると思うよ」

「じゃ、来年お会いしましょう」


 別れたのは10時過ぎ。地下鉄で市庁まで行き、昔飲み歩いていた一画をぶらぶら歩きながら、ホテルに戻りました。


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