破墓（パミョ）

　韓国の与党、共に民主党のキム・ホンゴル議員は、７月１日、国立墓地設置・運営法改正案（親日派破墓法）を発議しました。

　以下は、７月１日付朝鮮日報の記事です（リンク）。

与党、「親日派破墓論」現実化…キム・ホンゴル、国立墓地破墓法発議

キム・ホンゴル議員、「反民族行為者が国立墓地に…ありえないこと」
破墓論を繰り返し主張するイ・スジン議員も発議に賛成

　共に民主党のキム・ホンゴル議員が１日、親日行為で叙勲が取り消された人を、国立墓地の外に移葬させる法改正案を代表発議した。４月１５日の総選挙で圧倒的な議席を確保した与党から出た「親日破墓論」を法律として定め、推進しようというものだ。

　キム議員がこの日発議した「国立墓地設置・運営法改正案」は、親日反民族行為真相究明委員会が決めた親日反民族行為者と叙勲取り消し者は国立墓地に埋葬することができないようにし、すでに埋葬されている人は報勲処長が国立墓地の外へ移葬を命じるという条項を新設した。報勲処長の移葬命令に応じない場合、別途案内文を設置するという内容も含まれている。

　キム議員は「国家功労者とともに親日反民族行為をした者らがいっしょに国立墓地にいるということはありえないこと」と主張した。

　与党では国立墓地に対する破墓の主張が繰り返されてきた。民主党のイ・スジン議員は５月２４日ソウル銅雀洞の国立ソウル顕忠院で「親日派の墓を破墓しよう」と述べた。イ議員は「親日派を顕忠院から破墓するのは当然のこと」であり、「今国会で親日派破墓法をつくるつもりだ」と述べた。イ議員は顕忠日の６月６日にも「抗日運動家のすぐそばに親日派の墓が置かれていたら、わが国の子どもたちにどのようにして護国と報勲の話ができるだろうか」と、同様の主張をした。イ議員は今回のキム議員の法案発議にも賛成した。

　破墓という見慣れない言葉が繰り返し出ています。お墓を爆破するようなイメージですが、韓国の標準国語大辞典によれば、破墓とは、「移したり埋め直したりするために、墓を掘り起こすこと」となっています。「破壊する」という意味ではないようです。

　この記事が出た直後、「救国の英雄」白善燁（ペク・ソニョプ）将軍が亡くなりました。ペク将軍は陸軍葬のあと、国立大田顕忠院に埋葬されました。

　ところで、白将軍は、親日反民族行為真相究明委員会が決めた親日反民族行為者リストに載っています。植民地治下の満州の間島で抗日ゲリラ討伐に従事したことが問題視されているのです。

　したがって、法案が成立すれば、埋葬したばかりの白将軍の墓が掘り起こされるという事態も起こりえます。

　死後に墓を掘り返すというのは、日本人の感覚では理解が難しいのですが、韓国は歴史上、繰り返し破墓を行ってきたようです。

　故尹学準（ユン・ハクジュン）という在日作家の作品に、『歴史まみれの韓国』（亜紀書房、1992年）があります。そこには、韓国の両班（ヤンバン、朝鮮時代の貴族階級）が、いかに墓のことでもめごとを繰り広げてきたかがコミカルに描かれています。

　朝鮮時代には、祭礼儀式が煩雑で、莫大なカネと労力が費やされ、それが亡国の一因となったと説明されています。そして、この悪弊を、朴正煕大統領が強権をもって廃止させ、韓国の近代化をなしとげたとも。

　願わくは、文在寅大統領が白将軍の破墓を強行し、「それはあんまりだ」という世論が盛り上がって、大統領支持率が大幅に下落することを。