夏に帰任してから何かと忙しくて,昔の友達に会いそびれていました。
年末も近づいたことだし,忘年会をやろう,ということになり,私の後輩が「犬鍋を囲む会」を企画してくれました。
最初は,いつもの飲み仲間3~4人でということだったのですが,いろいろ連絡をとるうちに,前の会社に同僚たちに次々と連絡がつき,結局8人集まることになりました。
場所は私に一任されたので,迷わず新大久保の延辺(ヨンビョン)料理,「チョンニヒャン(千里香)」に決定。
7時に予約をして,早めに着いたのでセットされた席で待っていると,見知らぬ団体さんが私の席に通される。
(なんだなんだ?)
店の人に聞くと,
「えっ? 犬鍋さんの予約は5時でしょう?」
「そんな。7時ですよ」
(そういえば,携帯に5時10分に着信があった…)
結局,手違いで予約がとれていないことが判明。押し問答の末,地下の席に通された。しかも,8人なのに6人席。
しかたなくそこで待っていると,階段を降りてくる人がいる。
まず下半身が現れ,顔の下半分が見えたとき,
「よっ! 久しぶり」
「おお。…」
しかしそのあとの言葉が続きませんでした。顔の上半分(というか頭部)が劇的な変貌を遂げていたからです。
「そ,そんなになっちゃったんだ…」
「えっ? あ,これね」
A氏はきまり悪そうに頭をなでる。
「もう無駄な抵抗はしないことにしたんだ。なりゆきまかせで」
(たしかに潔い…)
次々になつかしい顔が表れます。
仕事で遅れると言っていた同じ会社のT氏もやってきた。
7人中3人は前の会社を辞めたあとも定期的に飲んでいましたが,それでも最後の飲み会のは4年ぐらい前。中には,私が前の会社を辞めて以来,実に17年ぶりに見る顔もあります。
まずM氏。
テニスの達人なのですが,ある日足の指先に変調をおぼえ,検査の結果腫瘍であることが判明。指を切断しましたが,幸い良性だった。それを機会に,医療関係の会社に転身。
彼は,私の滞韓中,遊びに来てくれた唯一の友達です。
そして前述のA氏。
会社の業績にかげりが出るや,教職を目指すなどといっていち早く退社し,その実,完全な競合他社に転職した。頭部の惨状は,その報いかもしれません。
高校大学時代は卓球少年で,子どもの名前にも「卓」の字を入れたのに,子どもは意に反して野球少年になり,今は地域の少年野球チームの監督を引き受けているお人好しでもあります。
その次に辞めたのが私でした。
その数カ月後,私の口利きで,関連会社に転職してきた一年後輩のT氏。彼の場合,量は十分なのですが,白くなるのが早かった。もし染めていなければ真っ白だということです。
会社がはっきりと傾いてきたとき,スポーツ新聞社に転職したT氏(その2)。彼もずいぶん薄くなったなあ。
S氏は,5年ぐらい前でしょうか,突然韓国に電話をくれた。「退職して職探しをしているんだけれども,どこかあてはないか」と。残念ながら役に立てませんでしたが,今は,老舗出版社に勤務しているとのことです。
そして,T氏(その3)は二年後輩。
17年ぶりに会うのに,ほとんど変わっていません。もと高校球児で会社のソフトボールチームの主力選手。今は独立して,奥さんといっしょにフリーランサーです。
一時間ほど遅れて,最後にやって来たのがZ氏。
社長のコネで入社した手前,会社に見切りをつけることができず,統廃合を繰り返す中我慢して働き続けている,義理堅いやつです。
この年代の男たちが久しぶりに再会すると,話はどうしても髪の毛のことになります。
「最近,量だけじゃなく太さも細くなってきたんだよなあ」
「あ,おれもそれを感じる」
話はほかの毛にも及びます。
「この前,鼻毛に白髪を見つけてショック受けたよ」
「おれは耳毛が生えてきた」
いやはや,中年男性の会話です。
会わない間に,タバコをやめたなんていう裏切り者が出ていなかったのも嬉しい。
さて,メニューはやはり羊の串焼延辺風が中心。
豆腐(を細く切って干したもの)のサラダに,空心菜のニンニク炒め,そしてカムジャタン(豚の背骨とジャガイモの煮込み)。これはケンニプ(エゴマの葉)のかわりに春菊が入っているのがやや不満でしたが…。
満州に住む朝鮮族の料理だけあって,韓国料理と中国料理のチャンポンです。さりげなく「香皮串」も人数分頼む。
「なんだこりゃ? やけに脂っこいな」
全員が食べたのを見計らって種明かしをします。
「それ,犬の皮だよ」
「ゲッ」
今日は「犬鍋を囲む会」ですから,補身湯(犬鍋)を頼まないわけにはいかない。満州風のあっさりした味です。
これも最初は何の鍋かを伏せて,全員に食べさせました。
酒はもちろんチャミスル。輸出用でやや味が違うのと,高い(1200円!)のは我慢しなければなりますまい。
前の会社の人々の話,いまの仕事のこと,子どものこと…。
話は尽きないのですが,料理と酒が尽きたところで,われわれは立ち上がりました。
「さて,イチャロ カジャ(二次会に行こう)。今日はとことん飲むぞ!!」
(つづく)
年末も近づいたことだし,忘年会をやろう,ということになり,私の後輩が「犬鍋を囲む会」を企画してくれました。
最初は,いつもの飲み仲間3~4人でということだったのですが,いろいろ連絡をとるうちに,前の会社に同僚たちに次々と連絡がつき,結局8人集まることになりました。
場所は私に一任されたので,迷わず新大久保の延辺(ヨンビョン)料理,「チョンニヒャン(千里香)」に決定。
7時に予約をして,早めに着いたのでセットされた席で待っていると,見知らぬ団体さんが私の席に通される。
(なんだなんだ?)
店の人に聞くと,
「えっ? 犬鍋さんの予約は5時でしょう?」
「そんな。7時ですよ」
(そういえば,携帯に5時10分に着信があった…)
結局,手違いで予約がとれていないことが判明。押し問答の末,地下の席に通された。しかも,8人なのに6人席。
しかたなくそこで待っていると,階段を降りてくる人がいる。
まず下半身が現れ,顔の下半分が見えたとき,
「よっ! 久しぶり」
「おお。…」
しかしそのあとの言葉が続きませんでした。顔の上半分(というか頭部)が劇的な変貌を遂げていたからです。
「そ,そんなになっちゃったんだ…」
「えっ? あ,これね」
A氏はきまり悪そうに頭をなでる。
「もう無駄な抵抗はしないことにしたんだ。なりゆきまかせで」
(たしかに潔い…)
次々になつかしい顔が表れます。
仕事で遅れると言っていた同じ会社のT氏もやってきた。
7人中3人は前の会社を辞めたあとも定期的に飲んでいましたが,それでも最後の飲み会のは4年ぐらい前。中には,私が前の会社を辞めて以来,実に17年ぶりに見る顔もあります。
まずM氏。
テニスの達人なのですが,ある日足の指先に変調をおぼえ,検査の結果腫瘍であることが判明。指を切断しましたが,幸い良性だった。それを機会に,医療関係の会社に転身。
彼は,私の滞韓中,遊びに来てくれた唯一の友達です。
そして前述のA氏。
会社の業績にかげりが出るや,教職を目指すなどといっていち早く退社し,その実,完全な競合他社に転職した。頭部の惨状は,その報いかもしれません。
高校大学時代は卓球少年で,子どもの名前にも「卓」の字を入れたのに,子どもは意に反して野球少年になり,今は地域の少年野球チームの監督を引き受けているお人好しでもあります。
その次に辞めたのが私でした。
その数カ月後,私の口利きで,関連会社に転職してきた一年後輩のT氏。彼の場合,量は十分なのですが,白くなるのが早かった。もし染めていなければ真っ白だということです。
会社がはっきりと傾いてきたとき,スポーツ新聞社に転職したT氏(その2)。彼もずいぶん薄くなったなあ。
S氏は,5年ぐらい前でしょうか,突然韓国に電話をくれた。「退職して職探しをしているんだけれども,どこかあてはないか」と。残念ながら役に立てませんでしたが,今は,老舗出版社に勤務しているとのことです。
そして,T氏(その3)は二年後輩。
17年ぶりに会うのに,ほとんど変わっていません。もと高校球児で会社のソフトボールチームの主力選手。今は独立して,奥さんといっしょにフリーランサーです。
一時間ほど遅れて,最後にやって来たのがZ氏。
社長のコネで入社した手前,会社に見切りをつけることができず,統廃合を繰り返す中我慢して働き続けている,義理堅いやつです。
この年代の男たちが久しぶりに再会すると,話はどうしても髪の毛のことになります。
「最近,量だけじゃなく太さも細くなってきたんだよなあ」
「あ,おれもそれを感じる」
話はほかの毛にも及びます。
「この前,鼻毛に白髪を見つけてショック受けたよ」
「おれは耳毛が生えてきた」
いやはや,中年男性の会話です。
会わない間に,タバコをやめたなんていう裏切り者が出ていなかったのも嬉しい。
さて,メニューはやはり羊の串焼延辺風が中心。
豆腐(を細く切って干したもの)のサラダに,空心菜のニンニク炒め,そしてカムジャタン(豚の背骨とジャガイモの煮込み)。これはケンニプ(エゴマの葉)のかわりに春菊が入っているのがやや不満でしたが…。
満州に住む朝鮮族の料理だけあって,韓国料理と中国料理のチャンポンです。さりげなく「香皮串」も人数分頼む。
「なんだこりゃ? やけに脂っこいな」
全員が食べたのを見計らって種明かしをします。
「それ,犬の皮だよ」
「ゲッ」
今日は「犬鍋を囲む会」ですから,補身湯(犬鍋)を頼まないわけにはいかない。満州風のあっさりした味です。
これも最初は何の鍋かを伏せて,全員に食べさせました。
酒はもちろんチャミスル。輸出用でやや味が違うのと,高い(1200円!)のは我慢しなければなりますまい。
前の会社の人々の話,いまの仕事のこと,子どものこと…。
話は尽きないのですが,料理と酒が尽きたところで,われわれは立ち上がりました。
「さて,イチャロ カジャ(二次会に行こう)。今日はとことん飲むぞ!!」
(つづく)
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