朝、出掛けに所持品のチェックをしていると、財布がない。
上着を替えたからかな、酔っぱらってトランクに放り込んだかな、もしかしてベッド脇に落としたかな、などとあらゆる可能性を考えて探してみたものの、やはり見当たらない。
前日の記憶を探ります。
行きつけの安いバル(生ビールの大とタパスがセットで2ユーロ)に行こうと思ったら、満員だったので、別のバル(ここも混んでいた)でビールを3杯ほど飲み、飲み足りなかったので、最初に行った店に行ったら、なんとか二人席に割り込むことができ、そこでも2杯。
最初の店では割り勘で財布から20ユーロを払った記憶があります(後で、連れも同じことを証言しました)。
そして二軒目は、ビールをカウンターにセルフサービスで取りにいくときに、その都度精算するシステムだったので、連れが立て替えていた。店を出るときに、
「いくら?」
と聞くと
「4ユーロだから後でいいですよ」
といわれ、上着の外ポケットから出しかけた財布をひっこめた(ような気がする)。なにしろ、それまでにビールを5杯空けていたから、相当酔っていました。
すでに店を出たときには雨が降り出していて、傘を持っていなかったわれわれは、途中で雨宿りをしながら、ホテルまで徒歩15分ほどの距離を小走りで帰ってきました。
ホテルに帰ったのは12時近く。服を脱ぎ散らかしてそのままベッドに倒れ込み、朝目覚めたのは6時過ぎ。
こう考えてくると二軒目があやしい。
相当混んでいたうえに、通路が狭く、人とすれ違うときに体が当たらざるを得ない。更に、テーブル間が狭くて、客同士の背中がぶつかるくらい。通りすがりや席で、上着の外ポケットに入れていた財布を掏(す)られた可能性があります。
また、店を出た後、走っているときに体の上下動のはずみでポケットから落下した可能性も否定しきれない。
落としたか盗られたか、いずれにしても、もはや財布は私の手元にない。
紛失が確定した時点で、今度は財布に何が入っていたのかを考え始めました。私は財布を二つ用意していて、一つはいつも使っているもの、もう一つは海外出張時にだけ使うものと分けています。
海外用には、両替した外貨と、海外で使えるクレジットカードを2枚、いつもの財布から移し入れる。それ以外に、各航空会社のマイレージカード、ソウルの交通カード、ホテルのポイントカードなんかが入っていたはずですが、正確には思い出せない。
現金は、たいして入っていなかった。そもそも両替したのは日本円で2万円。その半分以上を使っていたので、残っていたのは50ユーロほどでしょう。
問題はクレジットカード。さっそく、午前中に日本に連絡(日本は深夜)し、カード会社への連絡を妻に頼みました。
さらに、現地のスペイン人社員と、日本からきた通訳の手をわずらわせて、警察へ。幸い、グランビアの警察署は会社の事務所から近かった。外国で警察にいくのは初めての経験です。
こぢんまりした警察署に入ると、入口の警官に、番号札(紙切れ)を手渡しされ、薄暗い廊下で待つこと20分。担当の警官が、取り調べ調書を作成してくれました。
パスポートのコピーから始まって、紛失した場所、時刻、状況を通訳を通して説明すると、それをパソコンで入力し、10分ほどでできあがり。
落としたのか盗まれたのかわからない、と正直に言ったのですが、警察側は、いちおう盗られたことにしましょう、などと言っていたようです。
最後に、この証言が虚偽でないことを誓って署名します。帰国後、旅行保険を申請する際、警察での調書が重要だということです。
幸い、2枚のクレジットカードのほうは24時間体制で対応してくれたようで、すぐに差し止めることができました。
日程はあと二日残っていましたが、その後はもう一枚残っていたクレジットカードと同僚からの借金でしのいだのでした。
被害額が少なかったので、外国の警察署で取り調べを受けるという面白い経験ができたことで、よしとすることにしました。
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