犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

コーヒーの話③~バリコーヒー

2024-08-19 22:55:12 | その他諸国便り

写真:中津「バグース」のバリコーヒー


 お盆休み前、大阪に出張した折、馴染みのインドネシアレストランでランチをとりました。

 久しぶりだったので、アルバイトのインドネシア人は新顔でした。

「インドネシアのどこの出身?」

「バリ島です」

「じゃ、豚肉、食べるの?」

「はい、食べます」

「牛肉は?」

「本当は食べちゃいけないんですけどね…」


 インドネシアはイスラム教の国ですが、バリ島はヒンドゥー教。イスラム教で禁じられている豚肉の代わりに、牛は神聖な動物なので食べない、と聞いたことがありましたが、ゆるい人たちもいるみたいです。

 メニューのサテカンビンの説明に「ラムの串焼き」と書いてありました。

「カンビンはヤギでしょう?」

「そうですね…」


 マスターに聞くと、日本で入手できるヤギ肉は堅くておいしくないので、少し前からラム(羊)肉を使っているとのこと。

「生まれて6か月ぐらいのヤギの肉はやわらかいんだけど、日本のヤギ肉は2~3歳なので堅いんですよ」

 アルバイトの学生に聞きました。

「羊って、インドネシア語でなんだっけ?」

「えっと、カンビンじゃなかったかな」

「カンビンはヤギでしょう?」

「ヤギはgoatで、羊はsheepですよね。インドネシア語は…」

「ドンパだよ」


 マスターが教えてくれました。

「彼はインドネシア語より英語のほうがよく出来るんですよ」


 話を聞いてみると、ご両親はジャワ語とインドネシア語ができるけれども、彼は幼稚園から英語の学校に通っていて、家の中でも英語を使っていたんだとか。インドネシアでインターナショナルスクールは高いはずだから、裕福な家で育ったんでしょう。

 サテカンビンと生ビールの後は、ナシゴレン(インドネシア風チャーハン)をいただきました。



「コーヒーありますか」

「はい、こちらです」


 メニューには、「トラジャコーヒー」「バリコーヒー」がありました。

「バリコーヒーって、どんな特徴があるの」

「えっと、バリコーヒーはフィルターを使わないんです」

「鍋で煮るの?」


「いえ、コーヒーの粉に熱湯を注ぐんです」

「インスタントコーヒー?」

「じゃなくて、コーヒー豆ですけど、フィルターを通すと薄くなっちゃうんで…」


(よくわからないが…)

「じゃ、バリコーヒーをお願いします」

 出てきたのは、真っ黒なコーヒー。カップの内側に、コーヒーの粉末が浮かんでいます。

「よくかき回して、粉が完全に沈むまで、1分ほど待ってから飲んでください」

 飲んでみると、濃厚でコクのある味わい。

 最後に、カップの底にドロリとしたコーヒーのかすが残っていました。

 バリコーヒーは、豆の種類も違うんだろうけど、淹れ方にも特徴があるようです。

「日本にはあとどのぐらいいるの?」

「大学はあと6か月です。でも、就職も日本でしようと思ってます」

「次に来るのはたぶん半年ぐらい先だから、会えないかもね」


とても感じのいい青年でした。

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