犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

新大久保の反応

2011-12-23 23:20:45 | 日々の暮らし(帰任以後、~2015.4)

 金正日の死を受けて、日本にいる韓国人の反応を知るために、新大久保に取材に行きました(嘘)。

 一軒目のお店は最近よく行く韓国バー。

「ちょっと不安ですね。ソウルに電話したら、予備役の軍人が動員されるかもしれないって言ってました」

「予備役?」

「ええ、兵役を終えた人達です」

 韓国は徴兵制。兵役を終えた人も、いざというときに実戦で働けるように、定期的に訓練を受ける。私が駐在していたころは、単に訓話を聞くだけだったようですが。

 二つ目の取材先は初めていく韓国バー。カウンターの向こう側には、日本に来てまだ半年ほどの若いアガシが二人いました。

「ナムドンセン(男同生=弟)が二週間後に軍隊に行くんですよ。よりによってこんなときに…」

「私のオッパ(兄)は今軍隊に行ってます」ともう一人のアガシ。

「どっちの方面?」

「カンウォンド(江原道)」

「北との国境のほうだ。いちばん危ないね」

「とっても不安です」

 やはり、まず心配になるのは身内なんでしょう。

「カンウォンドっていえば、前に潜水艦の事件もあったよね」

「潜水艦? 哨戒艦じゃなくて?」

「ほら、潜水艦で侵入してきて何十人も死んだでしょう。もう15年ぐらい前かな」

「15年前じゃ私まだ小学生だから覚えてないです」

 潜水艦事件(→リンク)は私がソウルに赴任してすぐに起きたので印象に強く残っています。新聞に「共匪(コンビ=共産匪賊)」という単語が踊っていたことを覚えています。

 あんな大事件も今の若者たちには知られていない。金大中、盧ムヒョンという親北政権が続いたので、学校教育の中でもわざと教えなかったのかもしれません。

 三軒目もやはり、初めて行く韓国バー。このところ、新大久保に韓国バーが増えているようです。隣に座っていたお客さんは韓国人男性。

「軍隊は行きましたか?」

「いえ、私はアメリカ人ですから」

 聞いてみると、在美僑胞でした。8歳のとき家族とともにニューヨークに移民、そのまま米国籍をとったそうです。半年前から日本に来ていて片言の日本語もしゃべります。

「金正日が死にましたね」

「ああ、そうですね。びっくりしました」

(自分とはあんまり関係ない)というニュアンスがありあり。

 結局、限られた韓国人にしか意見を聞けませんでしたが、みなさん漠然と戦争への不安を感じているようです。特に身内に軍人がいる人は他人事ではない様子。

 分断後60年経過し、今や離散家族問題も直接的な当事者は少なくなり、統一を願う人も少数派。「この機に統一を」と思う韓国人は少ないのでしょう。

 みなさん、今の生活水準を維持したいから、38度線が切れて難民が怒濤のように押し寄せてきたりすると困る。むしろ金正恩体制が確立して何事もなく時間が経つのを望んでいるようです。


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