犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

2010-09-18 23:24:29 | 思い出
 お酒の話ではありません。

 ナマコン(南阿共)ワールドカップの記憶もだんだん薄れつつある今日このごろ,いまさらながら2002年,日韓共催ワールドカップについて書かれた本を読みました。

 沢木耕太郎『杯(カップ) 緑の海へ』

 沢木耕太郎といえば『テロルの決算』などのルポ,そして『一瞬の夏』をはじめとするすぐれたスポーツものを書いている。たいていの本は読んでいるのですが,この本は韓国滞在中だったため読み逃しました。

作品は2002年5月17日から,7月8日まで,日記形式で書かれた本編と,その一年後の回顧によって構成されている。
沢木は韓国に拠点を置きながら,できるかぎりたくさんのゲームを直接観戦するために日韓の間を殺人的スケジュールで往復しながら,観戦記を書き上げています。

 ちょうどそのときソウルにいて,日本や韓国の試合に一喜一憂していたので,当時の異常な盛り上がりを懐かしく思い出すことができました。

 ほぼ全世界を旅していた沢木も,この本を書き始める時点では「韓国初心者」のようで,拠点として手配していた「アパート」が,行ってみると立派な「マンション」で驚いたり,タクシーの安さに驚いたり,おいしい紅茶がないことに失望したりという,いかにも初心者的な観察は,ほほえましかった。

 決勝リーグで日本がトルコに敗れたとき,韓国人が大喜びする姿を見て,その後韓国を応援する気がなくなった日本人留学生の気持ちは,当時,ソウルで同じような経験をしたのでよくわかります。

 沢木も次のように書いています。

「応援をしてくれなくてもいい。内心で負けろと思っていてもいい。しかし,負けた瞬間に手を打って喜ばれるのは,少々つらいような気がする。
 その気持は韓国に対して親愛の気持をもっていればいるほど強いのではないだろうか。少なくとも,その留学生ばかりでなく,多くの日本の若者が韓国を応援していた。もちろん,日本人の中には,韓国負けろと願っていた人もいただろう。ドイツに負けて溜飲を下げた人もいたかもしれない。しかし,日本中が手を打って喜んだということはなかった。日本が負けて大喜びしたということの中には,韓国の日本に対する微妙な感情があることは承知の上で,負けたことを大喜びするメンタリティーには関心できないところがある…」

 一方,沢木は,在韓中に韓国の人々から驚くほどの親切を受ける。

 光州で韓国がスペインをPK戦の末に破った夜,ソウルに帰るための飛行機,列車がすでに満席で,バスターミナルに向かうためにタクシーもなかなか拾えない。そんなときに,バスターミナルまでのつもりで韓国の若者の乗用車に乗せてもらったが,ソウルに向かうときいて,なんとソウルまで乗せてくれたり。

 韓国人は,嫌悪の表現も極端だけれども,親切も徹底している。そんな韓国を懐かしく思います。

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