フランス旅行から帰ったあとの土曜日、知り合いと高田馬場のミャンマー料理店に行きました。どこに行くかは決めていませんでしたが、知り合いが
「ルビーという店に行ってみたい」
と言うので、そこに行くことに。
最近、ある「国際理解教育」の集まりで、ルビーのご主人の日本での活動が映画化されたという話を聞いたそうです。
「私も一度、お昼ごはんを食べたことがありますよ。たしか、奥さんが日本人にミャンマー語を教えていると話していました」(→リンク)
行ってみると、私たち以外にお客さんはいません。それで、奥さんがいろいろ話をしてくれました。
「この前、国際理解教育教会のメンバーがここに来たと思うんですけれど、定員が一杯で私は来られませんでした。DVDを買いたくて」
「それはありがとうございます。主人も、もうすぐ帰ってくると思います」
奥さんの話では、日本人に対するミャンマー語の講座は今はやっておらず、逆に、ミャンマー人の子供たちに、ミャンマー語やミャンマーの文化について教えているということです。
「日本に来ているミャンマーの子供たちは、日本の学校に通っているので、日本語はうまくなるけれども、ミャンマー語ができないでしょう。それがかわいそうで」
奥さんは、ミャンマーにいるときに、ミャンマーの教育放送の番組制作に携わっていたそうで、教育に対する関心と熱意をもっているそうです。
「ミャンマーが民主化されたので、そろそろ私たちもミャンマーに帰ろうと思うんです。ミャンマーで、何か教育の仕事がしたくて」
ご主人は、例の1988年の民主化弾圧事件のあと、政治亡命し、現在は日本の難民ビザを取得。その後、奥さんを呼び寄せたのが約10年前とのこと。
しばらくすると、ご主人がミャンマー人のお客さんといっしょに戻ってきて、私たちも紹介してもらいました。とても紳士的で温和な感じながら、その底に不屈の精神を宿している、というような方でした。
「私も、そのDVD、買います」
家に帰って、さっそくDVDを見ました。映像は、1998年に日本のレストランの厨房で働くご主人の姿から始まります。ミャンマーでは軍事政権による圧政が続き、民主化運動の象徴的存在であったアウンサンスーチー女史が自宅軟禁されていた。ご主人は、日本のミャンマー大使館の前で、軍事政権による不法選挙に反対するデモの中心に立つなど、積極的な政治活動をしていました。
祖国には、亡命直前に結婚した奥さんを残してきている。奥さんも日本に来たいのだが、ご主人の難民ビザがなかなかおりないので、来ることができない。しかし、もう我慢の限界を迎えた奥さんはミャンマーを出国。タイのバンコクにアパートを借りて、ご主人からの連絡を待つ。ご主人もバンコクに行き、14年ぶりの再会を果たす。その一部始終を映像がとらえていました。
この映画は2012年に封切られ、2013年度キネマ旬報ベスト・テンの「文化映画部門第3位」となり、文化庁の文化記録映画優秀賞も受賞したそうです。最近の映画というよりも、最近DVD化されたということのようです。
監督は土井敏邦。
(あれ、この監督?)
見たことがある名前なので調べてみると、『“記憶”と生きる』(2015年4月、大月書店)という本の著者でした。元慰安婦の姜徳景の生涯を追った本で、同名の映画もあります。
ウィキペディアによれば、古くは在韓被爆者、韓国の民主化運動家、タイのエイズ孤児、ベトナムのストリートチルドレン、君が代斉唱の監視・強制を拒否する教師、飯舘村の人々、ガザ地区のパレスチナ難民など、世界の「弱者」たちを継続して映像に収めてきた映像ジャーナリストだそうです。
『“記憶”と生きる』も(映像は見ずに本を読んだだけですが)、日本政府を告発するという調子よりも、ナヌムの家におけるありのまま元慰安婦(いさかいなども含め)を描いた作品。
思わぬところで、ミャンマーと慰安婦がつながったのでした。
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