ジャカルタ便り～衛生

　三日目の午後、会議中に、出張者の一人が中座し、トイレに行きました。そして、その３０分後にもう一回。

　会議終了後に聞くと、腹痛がすると。

「何か、へんなもの食べた？」

「いや、みんなと同じものしか食べていないけれど…」

　日本から持参した下痢止めを飲んでその場をしのぎ、その日の夜に用意されていた現地社員との会食にも参加しましたが、かなり辛そうでした。

　翌日、午前中の外部業者との打ち合わせ前、

「ちょっと具合が悪いので、休憩室で休んでいます」

と、ついにダウン。相当激しい腹痛のようです。

「病院行く？」

「いや、横になって、様子を見ます」

　外国、それも途上国で病院に行くのは勇気がいります。ジャカルタには日本人も多く住んでいますから、日本人が通っている病院もあるでしょうけれど、言葉の問題とか、何かと不便が多い。

　午後、駐在員の一人が半休をとって自宅に帰るといいます。

「妻の具合が悪くて。腸チフスと診断されたらしいんです」

「腸チフス！」

「こっちではよくあるやつですよ」

「私もこの前、アメーバ赤痢でひどい目にあいました」

と、もう一人の駐在員。

「赤痢！」

　具合の悪い出張者の顔が、さらに青くなります。

「シャワーが原因じゃないかな。ぼく、シャワーの最後に、シャワーのお湯で口をゆすぐんですけど、それを少し飲みこんでしまったんじゃないかと」

「たしかに水は怪しいよね」

　結局、予定のフライトで日本に帰り、家族に関西空港まで迎えに来てもらってなんとか帰宅しました。

　インドネシア、油断はできません。