犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

韓国便り~初日

2014-09-04 23:43:03 | 韓国便り(帰任以後)

 今回の出張で宿泊するホテルは、必ずしも事務所からいちばん近いホテルではない。なぜ、遠いホテルに泊まるかというと、喫煙ルームがあるからです。新しくできるホテルには全館禁煙が多く、私のような喫煙者にとって困りものです。

「お客様は喫煙ルームのご予約ですね」

「はい、そうです」

「あいにく喫煙ルームは一杯で、こちらのお部屋は禁煙なのですけれども、たばこを吸うときは窓を開けて吸ってください」

「はあ…」

「はい、これ、灰皿」

「…」

 ところが、部屋に行ってみると、窓ははめ殺しで開閉ができないタイプ。問い合わせるのも面倒くさいので、そのまま普通に喫煙しました。

 このホテルで喫煙ルームと禁煙ルームの違いは、たんに灰皿の有無だけのようです。

 チェックインを済ませた後、同僚は買い物があるというので別行動。私は現地駐在員と待ち合わせて夕食を共にすることに。

「すいません。ちょっと書店につきあってもらっていいですか」

「ええ、もちろん」

 地下鉄鍾閣駅と地下通路でつながっている「パンディエンルニス」という大型書店に行きました。

 「パンディ」は韓国語で蛍、「エン」ば英語のアンド、「ルニス」はラテン語(?)で月。「蛍雪」という故事成語にちなんだもののようです。

 書店に入ってすぐのところに検索システムの端末があったので、画面の説明にしたがって入力。たちどころに『帝国の慰安婦』が見つかりました。書棚の番号を印刷し、次に「妓生」というキーワードで検索。

 ズラリと出てきましたが、本の内容解説をみると、どうもおかしい。実は、ヒットした本の大部分は「妓生(キセン)」と同音異義語の「寄生」でひっかかった、寄生虫に関する本だったのでした。わずかに妓生関連の本もありましたが、すべて品切れだったので、こちらのほうはあきらめることにしました。

 『帝国の慰安婦』のほうは、指示された書棚に5冊並んでいました。たいていの本が棚に一冊ずつしか入っていないのに、5冊もあるということは、元慰安婦ハルモニの名誉棄損の裁判で注目されたためでしょう。

「お待たせしました」

「早かったですね」

「ええ、検索システムが優れものですから」

 用事を済ませた後、夕食は事務所近くの「コムチャンオ(ぬたうなぎ)」の店へ。駐在員は、ソウルに来て10か月経ちますが、まだ食べたことがないとのこと。

 ところが、会社近くの店は人気店でいつも長蛇の列。この日も、雨天にもかかわらず30分待ちだったので、私がいつも行く新村の店に向かいました。

 二次会は、一人でも行けるバーを紹介してほしいという駐在員氏のリクエストで、その手の店の多かった漢南洞へ。

 漢南五叉路からUNビレッジに行く道の左側に、3~4軒、手頃なバーが並んでいたはずなのです。ところが、私が知っていた店はすべてつぶれていました。まあ、5年以上経ってるんだから、仕方がないですね。

 結局、昔はなかったカフェらしきところに入りました。カフェとは、やや年齢の高めの女性が数人いて、オープン形式の席で客の隣に坐る形式の飲み屋。カラオケはありません。カウンターバーよりは高く、個室のルームサロンよりずっと安い。

 二人いた女性のうち、一人は大学で日本語をやったとかで片言の日本語をしゃべります。今、大阪に行っているママは、もっと日本語がうまいんだとか。

 テーブルチャージが二人で5万、シーバスのミニボトルが15万、しめて20万(二人分)というのは、この手の店としてはやむをえない価格。

「ボトル、キープしときますから、明日も来てくださいね」

「ネー、トオルッケヨ(はい、また来ます)」

 たぶん、行くことはないでしょう。


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