最近、日本語の中の漢字の欠陥を指摘する本を読みました。田中克彦『漢字が日本語をほろぼす』(角川SSC新書、2011年5月)です。
その中で、外国人が日本語を学習しようとするとき、漢字が大きな障壁になると書かれていましたが、漢字は日本人にとっても難しい。
今回、高速道路を走りながら、地名の読み方の難しさを実感しました。
読めなかったのは、韮崎(にらさき)、揖保川(いぼがわ)、蒜山(ひるぜん)。
読み間違えたのは、神坂、内津峠、上月、新城、栗東など。それぞれ「コウサカ」「ウチツトウゲ」「カミツキ」「シンジョウ」「クリトウ」と読むのかと思いましたが、正解は「ミサカ」「ウツツトウゲ」「コウヅキ」「シンシロ」「リットウ」。
三ヶ日は「サンガニチ」ではなく「ミツカビ」。
美作は、まさかの「ミマサカ」。
愛鷹が「アシタカ」なんて「なぜだ!」と叫びたくなります。
相模湖(さがみこ)、諏訪(すわ)、信楽(しがらき)なんかも、知っているから読めるものの、難読地名ですね。
高速道路でよく目にする標識に「登坂車線」というのがあります。上り坂でスピードがあまり出ないトラックなどが後続の車に道を譲るための車線です。
これを声に出して読む機会はあまりないのですが、今回、何気なく
「遅い車はトーハン車線」
と読んだところ、助手席にいた妻が、
「トーハン車線? トハン車線でしょ」
「えっ、トーハンじゃないの?」
「違うわよ。トハンよ。教習所でそう習ったわ」
免許を取ったのは30年以上前だから教習所でどう習ったか、私は覚えていないけれど、今までずっと心の中で「とうはん車線」と読んできた。一方、免許を持っていない娘は「ノボリザカ車線かと思った」と、第三の読み方を持ち出してくる。
結局、車内では結論が出ず、帰ってから調べてみると、これがよくわからない。
新明解(第四版)は「とうはん」を見出しに立て「とはん」を許容。
一方、三省堂国語辞典は「とはん」が正式で「とうはん」は許容。
ネットの大辞泉は「とうはん」を採用している。
ヤフー知恵袋みたいなところでも複数とりあげられていて、「とはん」「とうはん」で意見が割れている。「とばん」「とうばん」「のぼりざか」などという少数派もいる。
たぶんこの道路標識が初めて作られたとき、管轄した役所(運輸省?)が読み方を明示しなかったんでしょうね。それで辞書も教習所も自分なりの読み方を採用したんだと思われます。
登は「と」(登山など)とも「とう(登場など)」とも読むので、どっちで読むことも可能ですが、「とうはん」の場合、険しい山を登るという意味の「登攀」と同音異義語になるので、それを避けるためには「とはん」のほうがいいかもしれません。
意味がわかりやすいという面では「のぼりざかしゃせん」がいいかも。
しかし、どう読んでも、読み手のほうでは意味を正しく受け止めているというのが漢字語の面白いところです。
なお、韓国語では漢字の読みは原則として一つだけなので、「登坂」の読み方は「ドゥンパン」の一種類のみ。そもそも、漢字表記することはなくハングルで表記されるので読み方がぶれるはずがないですが。
最新の画像[もっと見る]
- 「虎に翼」に思う~原爆裁判 21時間前
- 「虎に翼」に思う~夫婦別姓 3日前
- 祝! 京都国際、甲子園初優勝 2週間前
- コーヒーの話③~バリコーヒー 3週間前
- コーヒーの話③~バリコーヒー 3週間前
- ヒト、この不思議なる動物~殺し合い 3週間前
- 原爆記念日の朗読劇 3週間前
- なぜ人を殺してはいけないのか 4週間前
- 「虎に翼」に思う~朝鮮人虐殺事件 1ヶ月前
- 「虎に翼」に思う~放火事件 1ヶ月前
挨拶とか鬱蒼なんて書く自信がありません。
日本人50年以上やっていて、普通に読んだり書いたりしている積りなんですが。
英語でもスペルと発音が対応していない単語が多いですが、漢字は外国人にとって将に暗号ですね。
本日初めて見た単語・漢字は下記のとおり。
悲憤慷慨(ひふんこうがい)
韜晦(とうかい)