長かった出張も最後の夜を迎えました。
数人いる駐在員の中で,一度も一緒に食事をする機会のなかった人に,ブラジルのバーへ連れて行ってもらいました。タクシーに乗って行った街は,サンパウロのどのあたりか不明ですが,しゃれたレストランが並んでいます。どこも,ブラジルの地酒,カシャーサの品揃えがいいとのこと。
「何が食べたいですか。海鮮の店もありますよ」
「お酒の種類が豊富なところがいいですね」
「じゃあ,肉にしましょうか」
席は室内と屋外があります。冬のサンパウロは夜,冷え込む。ただ,それに備えて厚着をしていたので大丈夫です。3人中,2人がヘビースモーカーだったため,屋外にしました。
「酒を飲めば体が暖まりますよ」
メニューにはずらりとカシャーサ(ブラジル特産サトウキビの焼酎)の銘柄が並ぶ。
案内をしてくれる駐在員はカシャーサの専門家。220種類あるという銘柄のうち,90種類を家の酒蔵に備えているという。地方の醸造元にも訪ねていき,仕込み方を習ったりしているという入れ込み方で,日本に一次帰国したときは「研究会」の講師をつとめることもあるそうです。
「カシャーサは樽の中で熟成させるのですが,樽の材質によって香りが変わるんです」
と,蘊蓄を語ってくれます。
「香りの強いのがいいですね」
「じゃ,これにしましょう。飲み方はどうしますか。お酒の香りを楽しむなら,レモンは入れないほうがいいですよ」
「そうします」
「オンザロック?」
「いえ,ストレートで」
「ほう,強いですね」
「韓国で慣れているんです。韓国では焼酎もウイスキーもストレートです」
まずは魚のフライをつまみに一杯目のカシャーサをいただく。樽の香りでしょうか,かなり強い独特の芳香が鼻をつきます。以前,大阪の飲み屋で飲んだカスクストレングスを彷彿させる味です。
「スーパーで買ったやつとは全然違いますね」
「何を買いましたか」
「ペットボトル入りの,500ミリで1・5レアル(100円ちょっと)のやつ」
「ああ,あれね。あれは大量生産品だから…」
同じカシャーサでも,立派なボトル入りの何十レアルもするものが並んでいたことを思い出します。どのぐらいの歴史と伝統のある酒なのかわかりませんが,職人技のこだわりの酒もあるそうな。
メインディッシュは牛のヒレ肉。棒状の肉塊が鉄板に載って出てくる。肉はすでに5ミリぐらいの厚さに切られています。周りは火に炙られていますが,中はレア。鉄板の下のアルコールランプに点火し,鉄板の上で好みの焼き加減にしていただく。ホディジオで食べたものよりも上等な肉のようです。
おいしいつまみに酒も進みます。
オーク,マホガニー,ジェキチバ…
いろいろな樽のものを試したいのですが,そんなにガンガン飲むと酔っぱらって味がわからなくなる。それで,3人それぞれ違う種類を注文し,一口ずつ回し飲みすることに。
「ブラジルは何年目ですか」
「13年になります」
(!!!)
韓国に11年いたのが最長かと思っていたのですが,世界の最果てに私以上の長期駐在員がいたことを知りました。
「そろそろ帰りたいですか」
「いや,あと5年ぐらいはいたいですね」
以前,韓国のテニス仲間に大手商社の駐在員がいたのですが,帰国命令が出て,拒否してその国に居ついてしまうパターンがいちばん多いのがブラジルとのこと。日本人にとって魅力に満ちた国のようです。
「これはグランジ・チンボという銘柄です。グランジは「大きい」という意味です」
「ハハ,大きいチンボですか。こりゃ愉快だ」
「ぼくもチンボ一本!」
「このチンボは臭いがきついなあ」
酔いが進むにつれ,自分でも何を言っているかわからなくなってくる。
この先の記憶はさだかでないですが,多いに盛り上がったことだけは確かです。いくら払ったか覚えていませんでしたが,翌日確認すると一人50レアル(約3500円)ちょっととのこと。上質の肉に,上質の酒をあれだけ飲んだのですから,リーズナブル。
ブラジル駐在も悪くないなと思いました。
数人いる駐在員の中で,一度も一緒に食事をする機会のなかった人に,ブラジルのバーへ連れて行ってもらいました。タクシーに乗って行った街は,サンパウロのどのあたりか不明ですが,しゃれたレストランが並んでいます。どこも,ブラジルの地酒,カシャーサの品揃えがいいとのこと。
「何が食べたいですか。海鮮の店もありますよ」
「お酒の種類が豊富なところがいいですね」
「じゃあ,肉にしましょうか」
席は室内と屋外があります。冬のサンパウロは夜,冷え込む。ただ,それに備えて厚着をしていたので大丈夫です。3人中,2人がヘビースモーカーだったため,屋外にしました。
「酒を飲めば体が暖まりますよ」
メニューにはずらりとカシャーサ(ブラジル特産サトウキビの焼酎)の銘柄が並ぶ。
案内をしてくれる駐在員はカシャーサの専門家。220種類あるという銘柄のうち,90種類を家の酒蔵に備えているという。地方の醸造元にも訪ねていき,仕込み方を習ったりしているという入れ込み方で,日本に一次帰国したときは「研究会」の講師をつとめることもあるそうです。
「カシャーサは樽の中で熟成させるのですが,樽の材質によって香りが変わるんです」
と,蘊蓄を語ってくれます。
「香りの強いのがいいですね」
「じゃ,これにしましょう。飲み方はどうしますか。お酒の香りを楽しむなら,レモンは入れないほうがいいですよ」
「そうします」
「オンザロック?」
「いえ,ストレートで」
「ほう,強いですね」
「韓国で慣れているんです。韓国では焼酎もウイスキーもストレートです」
まずは魚のフライをつまみに一杯目のカシャーサをいただく。樽の香りでしょうか,かなり強い独特の芳香が鼻をつきます。以前,大阪の飲み屋で飲んだカスクストレングスを彷彿させる味です。
「スーパーで買ったやつとは全然違いますね」
「何を買いましたか」
「ペットボトル入りの,500ミリで1・5レアル(100円ちょっと)のやつ」
「ああ,あれね。あれは大量生産品だから…」
同じカシャーサでも,立派なボトル入りの何十レアルもするものが並んでいたことを思い出します。どのぐらいの歴史と伝統のある酒なのかわかりませんが,職人技のこだわりの酒もあるそうな。
メインディッシュは牛のヒレ肉。棒状の肉塊が鉄板に載って出てくる。肉はすでに5ミリぐらいの厚さに切られています。周りは火に炙られていますが,中はレア。鉄板の下のアルコールランプに点火し,鉄板の上で好みの焼き加減にしていただく。ホディジオで食べたものよりも上等な肉のようです。
おいしいつまみに酒も進みます。
オーク,マホガニー,ジェキチバ…
いろいろな樽のものを試したいのですが,そんなにガンガン飲むと酔っぱらって味がわからなくなる。それで,3人それぞれ違う種類を注文し,一口ずつ回し飲みすることに。
「ブラジルは何年目ですか」
「13年になります」
(!!!)
韓国に11年いたのが最長かと思っていたのですが,世界の最果てに私以上の長期駐在員がいたことを知りました。
「そろそろ帰りたいですか」
「いや,あと5年ぐらいはいたいですね」
以前,韓国のテニス仲間に大手商社の駐在員がいたのですが,帰国命令が出て,拒否してその国に居ついてしまうパターンがいちばん多いのがブラジルとのこと。日本人にとって魅力に満ちた国のようです。
「これはグランジ・チンボという銘柄です。グランジは「大きい」という意味です」
「ハハ,大きいチンボですか。こりゃ愉快だ」
「ぼくもチンボ一本!」
「このチンボは臭いがきついなあ」
酔いが進むにつれ,自分でも何を言っているかわからなくなってくる。
この先の記憶はさだかでないですが,多いに盛り上がったことだけは確かです。いくら払ったか覚えていませんでしたが,翌日確認すると一人50レアル(約3500円)ちょっととのこと。上質の肉に,上質の酒をあれだけ飲んだのですから,リーズナブル。
ブラジル駐在も悪くないなと思いました。
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