例の4,630万円の誤送金のニュースが頻繁に流れている・・・
金融機関に勤めていると、やはり金融犯罪の事例は「注意喚起」の意味もあり、多数のケースを知らされる立場にある。それこそ「振込詐欺」は事例が多く、窓口ではお客様を守る意味でも、高齢者の多額の現金引き出しや振込を警戒している。
外為では、「海外なりすまし詐欺」も頻発しており、メールでのやりとりの途中で他者がメールを乗っ取り、海外の違う口座に振り込ませるといったもの。何件も被害を目にしているし、海外の送金先銀行への迅速なアクションで数千万円の資金を取り戻したこともある。
あと地下銀行とか。数十億円の犯罪にかかわった組織を警察と協力して摘発したこともあったっけ。「外為のしくみがわからない・・・」という警察の方にスイフトの明細から取引内容をレクチャー。後日、新聞に犯罪組織の摘発が大きく掲載され、警察の方がお礼に来店された。
このように、銀行は犯罪に対し真摯に対応しているのだが、今回のケースは入金後に「お金を返却せずに使った」ことは犯罪と思われるが、振込自体にはなんら犯罪性はなく、間違った送金をした山口県阿武町がそもそものトラブルの原因といえる。「振込先を間違えました」とか「振込金額を間違えました」って話は毎日のように発生し、返却に応じることもあれば、返却拒否も当然ありうる。
「銀行は間違った送金を見つけられなかったのか!」って言う人もいるが、最近の国内振込は基本インターネットでの取引でチェックは入らない。それと同列で、窓口に持ってこられても恒常的に取引をしている取引先ならそのまま手続を行うだろう。お役所からの依頼なら「納め過ぎた税金の還付」と言う取引もありえるし・・・海外への送金ならマネーローンダリング防止のため、根掘り葉掘りヒアリングできるし、それが銀行に求められる責務だが、国内での振込を、そのレベルでは精査できない、、、
それにしても・・・この若者、ネットカジノで全額使ったと言っているが、その返金だけでも大変なのに、テレビのコメンテーターの話では、4630万円を所得として考えるなら2000万円超の税金が課せられるとのこと!いや~この視点はなかったな。請求されている弁護士費用等調査費の約500万円も入れると7000万円超!!使った若者が悪いのは当然なのだが、その若者に悪魔のささやきのごとく、あぶく銭を送った山口県阿武町はどう責任をとるつもりだろう。あたら若者の人生を滅茶苦茶にしてしまったのだから。「膨大なお金を目の前にしても人生を踏み外す訳はなかろう!」って言う人がいるなら、世界中の宝くじに当選した人々の中に、少なからず人生を破滅させた人がいる事実を見つめなおして欲しい。いや、そこまで行かなくても、退職金で投資をしてすっからかんになる人がいることを見れば自明の理である。
若者はあぶく銭のごとくカジノでお金をすってしまったが、そのお金の原資は大切な税金。山口県阿武町のミスが招いた悲劇だが、どのように若者に責任を負わせようとも、現状を勘案すると、使ってしまったお金は戻ってこない。そのミスの尻拭いをどのようにするのかを全国民が注視している。今は最悪の評価の阿武町だが、起死回生の一手を打てれば、観光客も増えたり、特産品が売れたり、町へのふるさと納税アップも不可能じゃない。4630万円で良し悪しはともかく知名度はアップしているのだから、災い転じて福となせるかどうかが、為政者の能力にかかっている。