お裁縫をしていたら糸がもつれてほどけなくなりました。
さあ、どうしますか?
べつに心理テストというわけではないけど、
選択肢は2つ。
時間をかけて、とことんがんばってほどくか、
はさみでチョキンと切ってやり直すか。
わたし、ほどきます。
よっぽど急ぐか、どうしてもどうしてもほどけないか、
ほどくと傷んで駄目になるような糸でないかぎりは。
ほどくことは、祖母に教わりました。
(『きいちごを摘みに』で書いた「プロッコリ」のおばあちゃんです)
祖母は、わたしが中学生の頃に同居していたことがあり、
暇つぶしによく縫い物や編み物をしていました。
そんなとき、そばにいて、習ったのだと思います。
もつれた糸は切ってはいけない。
ひとつほどくたびに、罪がひとつ消えるから。
明治28年生まれの祖母は、少女のころに
親からそう教わって、ずっとそうしてきたのです。
布も糸も貴重品だったから、無駄にしないようにという
暮らしの知恵だったのか、何か宗教的なものだったのか、
とくに信心深い人ではありませんでしたが、
本人はとうに他界しているので、謎のままです。
この話をすると、たいていの人が
「ひえー!」とか「うそー!」とか言います。
「ああ、それ知ってる」っていう人には会ったことがないな。
いや、わたしだって、大人になってから言われたら
たぶん笑って聞き流しただろうけど、
素直な中学生でしたから。
それ以来、「ええい、切っちゃえ」とはさみを持つたびに
必ずおばあちゃんの言葉が浮かび、切るに切れず、
ちまちまと手間ひまかけてほどくことに…。
縫い糸も、毛糸も、釣り糸も、凧糸も。
リボンも、荷造り紐も、ロープも、鎖も。
これまで、いくつほどいたでしょう。
やたら時間がかかったり、肩こったりするけれど、
きれいにほどけたときは、それはそれは気持ちよく、
まるで「罪がひとつ消えたように」すっきりして、
やっぱり切らなくてよかった!って、思います。