遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

面白古文書『吾妻美屋稀』10.「いろはうたつヾきもんく酒ろん餅ろん後編」

2023年08月02日 | 面白古文書

面白古文書『吾妻美屋稀』「いろはうたつヾきもんく酒ろん餅ろん」です。下戸から上戸へ、上戸から下戸へ、それぞれ、いろは64文字のいろは歌で意見をするというものです。今回は 、先の下戸から上戸への意見に対して、上戸から下戸への反論です。

右半分と左半分に分けて。

 いろはうたつヾきもんく酒ろん餅ろん後編

〇上戸のかたより下戸のかたへ返言(上戸の方より下戸の方へ返言)

い いけんといひていろはうた(意見と言いていろはうた)

ろ ろくなこころとよミたれバ(ロクな心と詠みたれば)

は はらすぢいたきことどもを(腹筋痛き事どもを)

に につたらしげにかきちらし(憎たらしげに書き散らし)

ほ ほねをりなされしかミついゑ(骨折りなされし紙費え)

へ へたな長文よしなしと(下手な長文よしなしと)

と とく/\へんじもふすなり(得々返事も付すなり)

ち ちゑある人ハさけをすく(知恵ある人は酒を好く)

り りうはくりんをはドめとし(龍は九輪を歯止めとし)

ぬ ぬしある人もきヽたまへ(主ある人も聞きたまえ)

る るい代其なのたかきこと(累代その名の高きこと)

を おもへバ上戸のほまれなり(思えば上戸の誉れなり)

わ わが日の本のならわしも(我が日の本の習わしも)

か かミハみきにてまつるぞや(神は神酒にて祀るぞよ)

よ よろこびいはひことぶきも(喜び祝い寿も)

た たれもさかづきとじざらん(誰も盃閉じざらん)

れ れいぎハ酒のしだいなり(礼儀は酒の次第なり)

そ それのミならずよしつねの(それのみならず良し常の)

つ 月見はなミやゆふすヾミ(月見花見や夕涼み)

ね ねんきふつじやしうきこと(年季仏事祝儀事)

 

な なくてならぬハさけぞかし(なくてはならぬは酒ぞかし)

ら らんぷおんぎよくじやうるりも(乱舞音曲浄瑠璃も)

む むねんむそうのげんきにて(無念無想の元気にて)

う うさもつらさもわすれはて(憂さも辛さも忘れはて)

ゐ ゐのちをのぶるこのくすり(命をのぶるこの薬)

の のまぬハなんのゐんぐハぞや(飲まぬは何の因果ぞや)

於 おんなハこヽろせまければ(女は心狭ければ)

く くろうきづかひつもりつヽ(苦労気遣い積もりつつ)

や やまひとなるもこのさけハ(病となるもこの酒は)

ま また事もなきくすりぞや(また事も無き薬ぞや)

け けんくわの中をなをすこと(喧嘩の仲を直すこと)

ふ ふゆのさむさをしのぐにも(冬の寒さを凌ぐにも)

こ これミな酒のきどくなり(これみな酒の奇特なり)

江 えひてのたまのきやうがいを(酔ひてのたまの境涯を)

て てんじかへたるたのしミを(転じ変えたる楽しみを)

あ あハれやしらぬ下戸しゆハ(哀れや知らぬ下戸衆は)

さ さけのざしきのかたすミに(酒の座敷の片隅に)

き きうくつさかに身をちゞめ(窮屈さ堪忍身を縮め)
【かに】堪忍。耐えること。

ゆ ゆるせ/\とてをすりて(許せ許せと手をすりて)
 
め めいわくしごくなためいきハ(迷惑至極な溜息は)

み 見る目もうたてしやうしさよ(見る目もうたて笑止さよ)

志 しかもさかなハひとなミに(しかも肴は人並みに)

ゑ ゑりきらひなくきこしめす(選り嫌いなく聞し召す)
【聞し召す】召しあがる

ひ 人まじわりをするときハ(人交わりをする時は)

も もちでしうきかなるものか(餅で祝儀がなるものか)

せ せめてをり/\ふたつミつ(せめて折々二つ三つ)

す すハれぬこともあるまいに(座れぬ事もあるまいに)

京 京から〇〇〇なさるべし

 

 

面白古文書『吾妻美屋稀』も、何とか半分までこぎつけました。かなりの疲労度。ブログ読者もお疲れでしょう。ここらで一服。残りはしばらくしてから。

以降、陶磁器や仮面をまじえながら、「文人書画」などのブログを、例によってとりとめもなく書いていきます(^^;  またか、と言われそうなので、新たなテーマにも挑戦したいと思っています(^.^)

 

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面白古文書『吾妻美屋稀』9.「いろはうたつヾきもんく酒ろん餅ろん前編」

2023年07月29日 | 面白古文書

今回と次回は、「いろはうた続き文句酒論餅論」の前編、後編です。下戸から上戸へ、上戸から下戸へ、それぞれ、いろは64文字のいろは歌で意見をするというものです。今回は、「前編 下戸から上戸への意見」です。

いつの時代も、酒にまつわる話は尽きませんね。

 

 いろはうたつヾきもんく酒ろん餅ろん前編
(いろはうた続き文句酒論餅論前編)

○下戸より上戸のかたへゐけんくさ(下戸より上戸の方へ意見草)

い いかに上戸衆ききたまえ(いかに上戸衆聞きたまえ)

ろ ろんハむやくのことなれバ(論は無役の事なれば)

は はやへもがつてんいたされよ(はやへも合点致されよ)

に にが/\しくハさけのくせ(苦々しくは酒の癖)

ほ ほんらやうまでもとりちらし(本領までも取り散らし)

へ へいぜいよろしきひとがらも(平生よろしき人柄も)

と とほうもなきハなまゑひぞ(途方も無きは生酔いぞ)

ち ちへふんべつもかきくもり(知恵分別もかき曇り)

り りはつな人もどんになり(利発な人も鈍になり)

ぬ ぬきミくるひのあぶなさよ(抜き身狂いの危なさよ)

る るいをもとめてよをわかし(類を求めて夜を明し)

を をさへつしいつ日をくらし(抑えつ強いつ日を暮らし)

わ われをあしきとおもへども(我を悪しきと思えども)

か かんにんならずよひつぶれ(堪忍ならず酔いつぶれ)

よ よいとししてもつくさるヽ(よい年しても尽くさるる)

た たわいせうねもあらばこそ(たわい性根もあらばこそ)
【たわい】正体なく酒に酔うこと。

れ れいぎさほうもとりおいて(礼儀作法も取り置いて)

そ そでないことをこねまハし(然で無い事をこね回し)
【然で無い】そでもない。然るべきでない。悪い。不都合な。

つ つねのこヽろハ入レかわり(常の心は入れ替わり)

ね ねしつこじつのむりやりに(捻付故実の無理やりに)
【捻付】<= 捻付ける
【故実】<= 故事付ける

な ないつわらひつくだをまき(泣いつ笑いつクダをまき)

ら らんしゆのはてハけんくわする(乱酒のはては喧嘩する)

む むようのつひへおほきゆへ(無用の費え多きゆえ)

う うとくな人もひんになる(有徳な人も貧になる)

ゐ ゐるいきるいもなくなれば(衣類着類も無くなれば)

の のみたをれとハもふすなり(飲み倒れとは申すなり)

於 おんなハことにミくるしや(女は殊に見苦しや)

く くちはしたなくしやべりつヽ(口はしたなく喋りつつ)

や やさしきこへもたかくなり(優しき声も高くなり)

ま まていな人もどんになる(まていな人も鈍になる)
【まてい】丁寧な、礼儀正しい

け けしからざりし大わらひ(けしからざりし大笑い)

ふ ふぎなる事のいでくるも(不義なる事の出来るも)

こ これミなさけのしわざなり(これみな酒の仕業なり)

江 えひてよろめきかへるさハ(酔いてよろめき帰るさえ)

て てあしを人にひつぱられ(手足を人に引っ張られ)

あ あさましかりしていたらく(浅ましかりし体たらく)

さ ざしきの内乃ありさまハ(座敷の内の有様は)

き きたなしむさやとひと"/\に(汚しむさ宿人々に)
【むさい】不潔な

ゆ    ゆびさしそしりにくまれて(指さし誹り憎まれて) 
め めひきはな引きらわれる(目引き鼻引き笑われる)
【目引き鼻引き】声を出さずに、目や鼻でで合図して、相手に自分の意志を知らせるさま。

み みハやまひつき内そんじ(身は病付き内損じ)

志 志するときにハこうくわいす(死するときには後悔す)

ゑ ゑきハすこしもなかるべき(益は少しも無かるベキ)

ひ びんぼうするもこれゆへぞ(貧乏するもこれゆえぞ)

も もはやこれからきんしゆして(最早これから禁酒して)

せ せいもんたてヽさかづきを(誓文たてて盃を)

す すきと手にハとるまいと(すきと手には取るまいと)
【すきと】全く(・・・ない)

京 京からつヽしミたもふべし(今日から慎み給うべし)

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面白古文書『吾妻美屋稀』8.「浮世たくさんな人すくない人の見立角力」

2023年07月27日 | 面白古文書

今回は、面白古文書『吾妻美屋稀』の8回目、「浮世たくさんな人すくない人の見立角力」です。世の中で、たくさんな人とすくない人をそれぞれ23人ずつあげて競う、見立相撲です。

いつものように、全体を4分割して、右上から。

浮世たくさんな人すくない人の見立て角力

たくさんな方 

大関 金もちのしハんぼう(金持ちのしはん坊)
【しはん坊】ケチな者

関脇 むすめのしばゐずき(娘の芝居好き)

小結 よめいじりのばゝさん(嫁いじりの婆さん)

前頭 後家のせわやき(後家の世話焼き)

同  上ざいくしののら(上細工師ののら)
【のら】なまけ人

同  としよりのじんばり(年寄りの腎張)
【腎張】精力絶倫なこと

同  げい子のつめなが(芸子の爪長)
【爪長】非常にけちな人

同  びんぼう人のとし子(貧乏人の年子)

同  すれがらしのおなごし(擦れからしの女子)

同  かヽにまかれるていしゆ(かかに巻かれる亭主)

 

同  おなごのあんま(女子の按摩)

同  気のきいた風のあほう(気の利いた風の阿呆)

同  なりあがり者のぎり知らず(成り上がり者の義理知らず)

同  かゝけつのぜいもの(空穴の贅者)
【空穴】一文無し
【贅者】見栄っ張り

同  わかい人のしつやミ(若い人の疾病)

同  やまめのしらミ(やまめの虱)
【やまめ】一人暮らしの男

同  すゞミのあんま(涼みの按摩)

同  おなごのいもずき(女子の芋好き)

同  はなしずきのながじり(話好きの長尻)
【長尻】人の家に座り込んでなかなか帰らないこと。

同  へたのしやうぎずき(下手の将棋好き)

同  しやうだんするでつち(商談する丁稚)

同  ふろやでやたら二しやべる人(風呂屋でやたらにしゃべる人)

同  かヽをねさして朝おきする人(かかを寝させて朝起きする人)

行司 節季のつまらん人(節季の詰まらん人)
【節季】年二回の掛売支払い
【詰まらん】やり繰りがつかない

 

少ない方

大関 いろけはなれた出家(色気離れた出家)

関脇 太夫になるかむろ(太夫になる禿)
【禿(かむろ)】太夫などの遊女に仕えて、見習いをする少女

小結 しうとめにかう/\な嫁(姑に孝行な嫁)

前頭 白ねづミのばんとう(白鼠の番頭)
【白鼠】主家に忠実な番頭や雇人。

同  役しやのめいじん(役者の名人)

同  やうし婿のとくじつ(養子婿の篤実)

同  おやまのはらぼて(女形の腹ぼて)

同  しやうたくの子もち(妾宅の子持ち)

同  十年もつヾく薬やの客(十年も続く薬屋の客)

同  お家さまになるおやま(お家さまになる女形)
【お家さま】上方で、中流以上の商家の主婦を敬っていう語。

 

同  おとなしいおうば(おとなしい御乳母)

同  商売にせいだす息子(商売に精出す息子)

同  ぶぜにかしの泪もろいの(夫銭貸しの泪もろいの)
【夫銭】年貢以外に、使役やその代わりに納めさせた金銭

同  しろいもじの本むく(白い綟の本無垢)
【綟】麻糸で織った目の粗い布

同  やまひあがりのかミのけ(病上がりの髪の毛)

同  しつやミのむきず(疾病みの無傷)

同  仕にせの常店(老舗の常店)

同  おたふくのはなばしら(お多福の鼻柱)

同  素人浄るりの玉かぶ(素人浄瑠璃の玉歌舞)

同  二十五六のあらばち(二十五、六の新鉢)
【新鉢】処女

同  そうバはりのかねもち(相場張りの金持ち)

同  金もちでひげする人(金持ちで卑下する人)

同  江戸へ欠落して尻据る人(江戸へ欠落して尻据える人)
【欠落】駆け落ち

行司 せつきの払に仕かけせぬ人(節季の払いに仕掛けせぬ人) 
【仕掛け】だまし。ごまかし。

 

 

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面白古文書『吾妻美屋稀』7.「かねもち、びんぼう人せりあい問答」

2023年07月22日 | 面白古文書

今回は、金持ちと貧乏人が、お互いに相手をやり込める問答です。

問答なので、金持ち(上欄)、貧乏人(下欄)でやりとりになっているはずですが、はっきりしないのも多いです。番号をふっておきましたので、金7vs.貧7のように対応しているものを突き合わせてみてください。

いつものように四分割して、右上から順に。

かねもち
びんぼう人   せりあい問答

◎かねもちの太平楽
金1・きん"/\ハせかいのまわりものじやとへらず口いふびんぼうにんのくせ
(金銀は世界の回りものじゃと減らず口言う、貧乏人のくせに)

金2・かねしだいのよのなかてかけめかけハじゆうじざい此世からのごくらくじや
(金次第の世の中、手掛け妾は自由自在、此の世からの極楽じゃ)

金3・しよく人やはたらきどハ年中くハず二はたらいたところが高が一文目しや
(職人や働き奴は年中喰わずに働いたところで高が一文目じゃ)

金4・なんぼへんねしおこしてもちゑやさいかくでかねハできぬものじや
(なんぼへんねし起こしても、知恵や才覚で金はできぬもんじゃ)
【へんねし】ねたみ

金5・からだがたつしやでもかねがなけねばいきているかひがないわい
(体が達者でも、金がなけね(れ)ば生きている甲斐がない)

金6・まへ/\ハ人もいか?ふたがじせいがわるいゆえなんぎするといふかいしよなし
(前々は人もいかふたが、時世が悪いゆえ難義するという甲斐性なし)

金7・よあそびやあさねばかりしてゐるのがびんぼうにんのこうふつじや
(夜遊びや朝寝ばかいしているのが貧乏人のこうふつじゃ)

金8・しやくせんのことハりのくふうに日をくらしめうとけんくわハかりするのらつぼ
(借銭の断りの工夫に日を暮らし、夫婦喧嘩ばかりする野良壷)

金9・人にそんかけぬらくヽいふてゐるびんぼうにんぜにはらわぬを手がらにするのか
(人に損かけぬらくら言うている貧乏人銭払わぬを手柄にするのか)
【ぬらくら】のらりくらり

金10・子どもばつかりたくさんで一生じゆつないめをして居るびんぼうにんめ
(子供ばっかりたくさんで、一生術無いめをしている貧乏人め)
【術無い】なすすべがなく困り果てている

金11・ねんちうしちおいてぎちくしてゐるのハこのよからのがきどうじや
(年中質置いて偽蓄?しているのは、この世からの餓鬼道じゃ)

金12・かねかつて人をたをすものハかほハ人でもこヽろハちくしやうどうせん
(金借って人を倒す者は、顔は人でも心は畜生同然)

金13・もめんのせんだくものでいつしやうくらすもほめられたことでも有まい
(木綿の洗濯物で一生暮らすも誉められた事でも有るまい)

金14・なんぼながいきしてもくふやくわすでハやつとうんのよいのでもあるまい
(なんぼ長生きしても、食うや食わずでは、やっと運の良いのでもあるまい)

金15・びんほうにんハきらくなといふハまけおしミのへらずぐちじや
(貧乏人は気楽なと言うは、負け惜しみのへらず口じゃ)

金16・びんほうにんのひずんかきいたいのハみるのもなか/\ゐじましい
(貧乏人の疥癬患痛いの見るのもなかなかいじましい)

金17・一文や弐文のぜににつまつてうろ/\するのハこのよにすんでゐるかひかあるか
(一文や弐文の銭につまってうろうろするのは、この世に住んでいる甲斐があるか)

金18・わずかなぜにもふけによるひるはたらいてゐるのハさながらちゑがなさそふな
(わずかな銭儲けに、夜昼働いているのはさながら知恵がなさそうな)

金19・手のひらほどなうらがしやにすんでゐるのハ井のうちにゐるかいるどうぜん
(手の平ほどの裏貸し家に住んでいるのは、井の内にいる蛙同然)
【裏貸し家】裏通りや路地にある貸し家

金20・ひんすりゃとんすと弐百や三百の銭て五十両も百両もとりたがるさんやうなし
(貧すりゃ鈍すと弐百や三百の銭で、五十両も百両も取りたがる算用無し)

福の神 きん"/\がこころのままになるとてもみやうがをおもひあだにつかふな
(金銀が心のままになるとても、冥賀を思い徒に使うな)

 

◎びんぼう人のへらず口

貧1・がきどうぜんにしてかねのバしてもむすこのだいにハこじきするぞよ
(餓鬼同然にして金伸ばしても、息子の代には乞食するぞよ)

貧2・じひもなさけもしらずよくばつてかねためるハこのよからおにのきやうがいじや
(慈悲も情けも知らず欲張って金貯めたるはこの世から鬼の境涯じゃ)

貧3・たることをしつてきまヽにくらすがふくじんのおしゑじやわい
(足る事を知って気ままに暮らすが副神の教えじゃわい)

貧4・人ハいのちがものだねたつしやでさへゐれバかねハひとりできるわいやい
(人は命が物種、達者でさえいれば金はひとりできるわいやい)

貧5・なりあがりのくせにぼん/\いヽなまたなりさがるぞよ
(成り上がりのくせに、ぼんぼん言いな、また成り下がるぞよ)

貧6・いゑをたんともつて風のふくばんハあんじてながらのよよふねぬたわけ
(家をたんと持って、風の吹く晩は案じてながらの夜、よう寝ぬタワケ)

貧7・あさはやうおきてほうこう人をいぢりまわしてやつき/\いふがたのしミかい
(朝早う起きて奉公人を弄り回してやっきやっき言うが楽しみかい)

貧8・つかふたりへるハぜにかねとしれやいきよろ/\したらかミこ一まいニなるぞよ
(使うたり減るは銭金と知れや。きょろきょろしたら、紙衣一枚になるぞよ)
【紙衣(かみこ)】紙で作った衣服

貧9・せかひハいろとさけずぼらでくらすかといつしやうのとくをしらぬかいや
(世界は色と酒、ずぼらで暮らすかと一生の徳を知らぬかいや)

 

貧10・子もないのにむしやうにかねのばししんだあとたにんにしてやらるヽおおばか
(子も無いのに無性に金伸ばし、死んだあと他人にしてやらるる大馬鹿)

貧11・かねもつて人にそんかけられて青なつてゐるのがなんぼうもある
(金持って人に損かけられて青なっているのがなんぼうもある)

貧12・かねかしてびんぼうにんをゑじめるハこのよのおにじやぞ
(金貸して貧乏人をいじめるはこの世の鬼じゃぞ)

貧13・なんぼきぬずれでも一生かねにつかわれてゐるけすほうこう人じや
(なんぼ衣擦れでも一生金に使われている下司奉公人じゃ)

貧14・かねがあつてもきぐろふしてゑてとんしするハうんのわるい第一じや
(金があっても気苦労して、えて頓死するは運の悪い第一じゃ)

貧15・かねもちハくらひものがすぎるゆへわかじにしたりしつやミがおほひ
(金持ちは喰らい物が過ぎるゆえ、若死したり疾病みが多い)

貧16・とかくあほうやかたわものやまひものヽおほひかねもちのこせがれ
(とかく阿呆や片輪者病者の多い金持ちの小せがれ)

貧17・かうまんなおうへいづらハ人ににくまれてぼつらくのもとじやぞ
(高慢な横柄面は人に憎まれて没落の元じゃぞ)

貧18・はなみゆさんにのりがきてせつきばらひにあをいかほをするなよ
(花見遊山に乗りが来て、節季払いに青い顔をするなよ)
【乗りが来る】調子に乗る
【節季払い】盆や暮れなど年に2~3回、まとめて支払いをする方法。江戸時代、一般化した。

貧19・大きなうちにすんでもないしやうでからくりくめんハしゆらどううじや
(大きな家に住んでも、内緒でからくり工面は修羅道じゃ)
【からくり】やりくり

貧20・あるがうへにもほしがのてめるこんじやうとこヽろにおぼへがあろふかな

貧乏神 くハらくのたねぞとてちへ○・・・・○
(苦は楽の種ぞとて知恵○・・・・○

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面白古文書『吾妻美屋稀』6.「新謎わらひふくろ」

2023年07月20日 | 面白古文書

面白本『吾妻美屋稀』も6回目となりました。

今回は、きわどい話が満載の面白瓦版です。

ちょうど、勤め帰りのサラリーマン諸氏が家へもって帰るにはチョットと、通勤電車の棚に置いてくる、あの夕刊紙の江戸版ですね(^^;

でも、実際は、どの話も、下の方へ落ちそうで落ちないものばかりです。

いつものように、4分割して、右上から順に。


 新謎わらひふくろ

・あおのけふるつてしかミつきこしにちからを入てもち上る物ナアニ  四ツ手あみ
(仰のけ振るってしがみ付き、腰に力を入れて持ち上げるものナアニ  四ツ手網)

・ひとつしるとよろこんでま一つしなされ/\とせがむものナアニ  おとし噺
(一つ知ると喜んで、ま一つしなされしなされとせがむものナアニ 落し噺)

・ひめごせがまたをひろげ大きな物ヲまゑへあてひちや/\する物ナアニ  せんだく
(姫御前が股を広げ、大きな物を前へ当て、ひちゃひちゃするものナアニ 洗濯)

・そろ/\といれてぬいたあとをよふふいておくものナアニ きせるのそうじ
(そろそろと入れて抜いた後をよう吹いておくものナアニ 煙管の掃除)

・ぬつと入てつきさへすれバしろいものがぬら/\とでるものナアニ
(ぬッと入れて突きさえすれば、白いものがぬらぬらと出るものナアニ 心太(ところてん))
【心太(ところてん)】煮だした天草が冷めて煮凝る(固まる)時の様子から、凝る(心が語源)ことによって太くなるもの=心太。当初は、「こころふと」と呼ばれていた。「こころふと」=>「こころたい」=>「こころてい」=>「こころてん」=>「ところてん」

・くらがりでそつと一ツとつたといふてよろこぶものナアニ  ほたる
(暗がりでそっと一つ取った言うて喜ぶものナアニ 蛍)

・でるたびにエヽゑい/\といへとあとがくさいといふものナアニ 花火せんかう
(出るたびにエエエイ/\と言えど、後が臭いと言うものナアニ 花火線香)

・まあ一ばんさせといふもういやじやといふてもぜひにさせといふものナアニ 将棋
(まあ一番指せと言う、もう嫌じゃと言うてもぜひに指せというものナアニ 将棋)

・入レてつかふてしもふてあとをふいてかミをはさんでおくものナアニ  重箱
(入れて使うて仕舞うて後を拭いて紙を挟んでおくものナアニ 重箱)

 


・入れ○○て見でもはいらんからあなをついてはいらすものナアニ たびの袋
(入れ〇〇て見でも入らんから穴を突いて入らすものナアニ 足袋の袋)

・むすめのだいじのものを○○にふわつたなとはヽごがしからしやる物ナアニ  ぽぺん(娘の大事の物を○○にふ割ったなど母御が叱らっしゃる物ナアニ ポペン)
【ポペン】ポピン、ポッピン。ガラス製の玩具。吹くと薄底がペコンペコンと鳴る。

・わかいごけこがしたい/\といふておやごもさしてやりたいといふ物ナアニ  物国じゆん礼
(若い後家がしたいしたいと言うて親御もさしてやりたいと思う物ナアニ 国巡礼)

・ちよつとあけてさへくさいのによつておヽつてするときハなをくさからふといふ物ナアニ しばいの番付(ちょっと開けてさえ臭いのに、よって覆ってするときはなお臭かろうという物ナアニ 芝居の番付)

・ぬいたりはめたりしてとヽがよいか/\といへバかヽもよい/\といふ物ナアニ 竈のうハぬり
(抜いたりはめたりして、トトが良いか/\といえば、カカも良い/\と言う物ナアニ 竈の上塗り)
【上塗り】竈の漆喰仕上げは、使っているうちに傷んでくるので、上塗りし直して修理する。上の文は、この時の様子。竈で使う鍋などを抜いたりはめたりして調整する?

・きのせくときついかどぐちてやつてしまふものナアニ 年玉
(気の急く時、つい門口でやってしまう物ナアニ 年玉)

・わしもわかいときハさしたかつたむすめもさしたかろとおもひやる物ナアニ くしかうがい
(ワシも若い時に挿したかった、娘も挿したかろうと思いやる物ナアニ 櫛笄)

・おれもわかいときハよいのがしたかつたむすこもさぞしたかろと思ひやる物ナアニ  下帯
(俺も若い頃は良いのがしたかった、息子もさぞしたかろと思いやる物ナアニ 下帯)

・大きふなるとけがはへてまたかハのむけるものナアニ   なんばきひ
(大きうなると毛がはえて、また皮のむけるものナアニ 南蛮黍)
【南蛮黍】とうもろこし

・ふんどしまではづしてとりかヽるものナアニ のみ(褌まで外して取りかかるものナアニ 蚤)

・むすめごにひろけさしてするものナアニ 哥かるた
(ムスメゴに広げさしてするものナアニ 歌かるた)

 


・ちよつと手さしするとつけつまわしつさしたかる物ナアニ  蜂
(ちょっと手指しすると、付けつ回しつ刺したがるものナアニ 蜂)

・ゆひさきでそろ/\といちりかまハせバついわれる物ナアニ  そろばん
(指先でそろそろと弄りまわせば、つい割れる物ナアニ そろばん)

・しめたりゆるめたりする内アヽよふなるといふものナアニ  小つゞみ
(締めたり緩めたりする内に、ああ良うなるという物ナアニ 小鼓)

・むすめがいちどしてから又したい/\とおもふている物ナアニ  いせ参り
(娘が一度してから、又したいしたいと思うているものナアニ 伊勢参り)

・はじめハいたいやうなれとだん/\こころよくなる物ナアニ  しやくのはり
(初めは痛いようなれど、だんだん心良くなるものナアニ 癪の針)

・うつむけにしてしりから入てしつくりとしてよいといふものナアニ おけの𥶡
(うつむけにして尻から入れてしっくりとして良いという物ナアニ 桶の𥶡)

・子のうまれたび/\にだん/\とひろるものナアニ  一家親るい
(子の生れたびたびにだんだんと広るものナアニ 一家親類)

・いれるときすこししたり入レたりするうちにアヽながれるといふ物ナアニ 質屋
(入れる時少ししたり入れたりするうちに、アア流れると言うものナアニ 質や)

・とふぞちつさがねたあいだにしたいものじやとめをとがいふている物ナアニ  ちのミごのさかやき
(どうぞ稚児が寝た間にしたいものじゃと夫婦が言うておるものナアニ 乳飲子の月代(後述))
【ちっさ】稚児、小児。

 


・そろ/\大きふなるとけがはへていろど(づ?)く物ナアニ  桃
(そろそろ大きうなると毛がはえて色づく物ナアニ 桃)

・まいらばんぜうとあをのけにして又いれかけるものナアニ  双六のさい

(まいら盤上と仰のけにして、又入れかける物ナアニ 双六の賽)

・ゆびさきでいちりまハせバじく/\としるのてるものナアニ  ほうづき
(指先でいじりまわせば、ジクジクと汁の出る物ナアニ ほうづき)

・かミをもんでまつてゐるとサアしませふといふ物ナアニ
(髪をもんで待っているとサアしましょうと言うものナアニ 月代)  
【月代(さかやき)】男の頭髪を頭の中央にかけて半月形に剃り落とした、その部分のこと

・とヽさんがも○○んさきに二かいで今しておくれとむすめごがいふ物ナアニ  女のかミゆい
(トトさんがも○○んさきに二階で今しておくれと娘ごが言うものナアニ 女の髪結い)

・どれはじめうかと女房がだしかけてひろげるものナアニ  ぬいもの
(どれ始めようかと女房が出しかけて広げる物ナアニ 縫い物)
  
・しハがよつても入レさへするとしやつきりとたつものナアニ  かみ代
(皺がよっても入れさえすれば、しゃっきりと立つ物ナアニ かみ代

・にぎつて見てどふでもふといがよいとこけごがいふものナアニ 〇・・〇
(握ってみてどうでも太いが良いと後家御が言うものナアニ 〇・・〇

・まいばん火をけして人がねるとそろ/\ととりかかる物ナアニ  ねずミ
(毎晩灯を消して人が寝るとそろそろと取りかかる物ナアニ 鼠)

・はだかふるつてだきついて一ばんとつたといふ物ナアニ 角力
(裸奮って抱きついて、一番とったと言うものナアニ 角力)

 

 

コメント (4)
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