遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

シーボルトも蒐めた箱根寄木象嵌細工漆塗大盆

2022年02月09日 | 漆器・木製品

古い箱根寄木細工の大盆です。

60.3㎝ x 38.3㎝、高 5.1㎝。江戸後期。

これまで紹介した寄木細工は現代の作ですが、今回の品は、200年程前、江戸時代後期の品物です。

見込みに、各種の寄木細工が施されています。

側面には、内外とも、桜の花びらが螺鈿で表されています。

底と側面は黒漆塗りです。

大別して、2種類の寄木細工が施されています。

色、木目、材質が異なる木を、大きな四角や三角に切り取って、盆の表全体に貼り込んでいます。そこへ、細かな寄木細工のパーツがいくつか散らばって配されています。

右上の大きな五角形、最長辺の長さは10.4cmです。縁取りの黒線も、黒い木でできています。

三角形のブーメランのような寄木パーツの大きさは、4.5cmほどです。

よく見ると、この寄木は、木を削って嵌めこんであります。象嵌なのです。

大の寄木も、小の寄木も、さらにそれらを組み合わせた盆全体も、江戸時代とは思えない斬新なデザインですね。

シーボルトの収集品の中に、よく似た品がありました。

彼は、文政6年(1823)、最初の来日時、江戸へ参府し、その途中たちよった箱根で寄木細工に魅せられ、蒐集を始めたそうです。

実は、今回の品を入手した時、全体がボロボロで、とても見られるものではありませんでした。塗りがはげ落ちているだけでなく、あちこち大きく凹んでいたのです。お値段もそれなりだし、ボツ品にするかどうか、迷いました。

が、思い切って修復することにしました。幸いにも、寄木細工の部分には大きなダメージがありませんでした。修復というと聞こえはいいですが、地道な作業の繰り返し。凹んだところを中心に透明漆(底や側面は黒漆)を塗り、乾いたらペーパーで磨いて平らにする、また、塗って乾かし、磨く・・・・この作業を10回以上繰り返して、全体を平らにしていくのです。凹部を一度で埋めることはできません。その外、色合わせ(実際は色誤魔化し)など、やることはいっぱいありました。盆縁の内外には螺鈿で桜の花びらがあしらわれていますが、縁の上面の細い部分にも、同じ螺鈿細工がしてありました。しかし、ほとんどの花びらは剥がれていたので、思い切って残りの螺鈿も取り去り、縁の上面全体を金漆で塗りました。

こうして、何とか人様に見ていただける姿になりました(^.^)

かかった時間は、4か月(^^;

シーボルトの図録で、類似の品を見つけたのは、その後です。ボツ品にしなくてよかった(^.^)

でも、この品には難点があります。表面が滑らかすぎるのです。大きくしっかりしているので、たくさんの皿や茶碗がのせられます・・・・が、運んでいる途中で、盆を少し傾けると、器たちがジェットコースターのように滑るのです。水平を保ちつつ、しずしずと運ばねばなりません。

寄木細工盆でジェットコースターとは、シーボルト様でも気がつくまい(^^;

 

 

 

コメント (6)
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