遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

面白古文書『吾妻美屋稀』5.「うそまこと見立角力」

2023年07月18日 | おもしろ古文書

今回は、オーソドックスな面白見立て番付けです。

が、例のごとく、結構な難物で、多数でした。

四分して、右上から順に。

うそまこと見立觔

うその方

大関 百物がたりのばけもの
  (百物語の化物)
【百物語】多勢の人が集まって、 ろうそくを百本立てて置き、それぞれが化物 の話をして、一本ずつ蝋燭を消して行く。100話怪談を語り終えると、本物の化物が現れるとされていた。

関脇 めしのこげすきといふ居候
  (飯の焦げ好きという居候)

小結 切り芝居の今入れかわつた
  (切り芝居の今入れ替わった)
【切り芝居】江戸後期、一切(一太刀をあびせる)だけの芝居を立見で安価に見られる興行。通常、3本立の三切芝居で、一切が終わると、立見席は入れ替えになった。

前頭 びんぼう質二おくといふ人
  (貧乏質に置くと言う人)

同  魚つりのいいしやく
  (魚釣りの言い尺)

同  朝ひなのぢごくやぶり
  (朝比奈の地獄破り)
【朝比奈地獄破り】朝比奈三郎義秀は、剛力無双の自分に、地獄の鬼でもいいから、挑戦してこいと挑発した。すると夢の中に鬼が現れて、義秀を馬鹿にして笑ったので、鬼を追いかけまわし、地獄の門を破り、やがて地獄を征服した。歌舞伎や狂言の演目として人気があった。

同  土用かんの入にきく薬
  (土用、寒の入に効く薬)

同  つんぼの札かけてるこじき
  (ツンボの札掛けてる乞食)

同  けいせいの入レぼくろ
  (傾城の入れぼくろ)
【傾城】遊女

同  事ふれのはやるやまひ
  (事触れの流行る病)
【事触れ】物事を世間に言いふらす人

 

同  やすうりのべつかう物
  (安売りの鼈甲物)

同  げいしやのしやくもち
  (芸者の癪持ち)

同  はらにあなのある国
  (腹に穴のある国)
【腹に穴のある人の国】江戸期、朝比奈伝説の一つ、「朝比奈島巡り」の中で、朝比奈三郎が、巨人国、小人国、手長・足長の国、腹に穴が開いた人の国などをめぐる御話し。

同  ゑきしやの方角
  (易者の方角)

同  かほミせの口上
  (顔見世の口上)

同  仲人のでたらめ口
  (仲人のデタラメ口)

同  伊勢参りにこじき
  (伊勢参りに乞食)
【伊勢乞食】伊勢参りの人々に物乞いをする本物の乞食の他に、参拝客相手に荒稼ぎをする商人を嘲って伊勢乞食とよんだ。

同  相場仕のたいへいらく
  (相場師の太平楽)
【太平楽】好き勝手なことやでたらめな言い分。

同  百しやうの不作
  (百姓の不作)

同  新おきやへ入こむ奉公人
        (新置屋へ入込む奉公人)
        
同  けごん経大ぼうのとり

行司 正月ことば

頭取 たぬきねいり(狸寝入り)
   辻だんぎ(辻談義)
          ほうべん(方便)
        

まことの方
大関 大わいときのねんぶつ
   (大わい時の念仏

関脇 小べんたれたあとへ寝るうバ
  (小便垂れた後へ寝る乳母)

小結 山上参りのどろ川で白状
  (山上参りの泥川で白状)
【山上参り】山伏姿でホラ貝を吹きながら、蔵王権現に上り、参詣すること。

前頭 年よりめうとむつまじいの
  (年寄り夫婦睦まじいの)
 
同 ていしゆのるす二ねぬ女房
 (亭主の留守に寝ぬ女房)

同 せぎやうのさかやき
  (施行の月代)
【施行(せぎょう)】僧侶や貧しい人に物を施し与えること。特に、伊勢参りや四国巡礼の無料で接待がなされた。食べ物、飲物や草鞋だけでなく、月代などのサービスまで施された。
【月代(さかやき)】男性が前額から頭の中央にかけて髪を丸くそり落とすこと。

同 何時でもとんでくるおゐしや
 (何時でも飛んでくるお医者)

同 夜道にちやうちんかりた嬉しさ
 (夜道に提灯借りた嬉しさ)

同 春はなさき秋ミのるの
 (春花咲き秋実るの)

同 地廻りのまぶにゐけん
 (地廻りのまぶに意見)
【まぶ】江戸後期の隠語。てきや。

 

同 十月の水しぐれ
 (十月の水時雨)

同 俄雨にしらぬ人二傘かすの
 (俄雨(にわかあめ)に知らぬ人に傘貸すの)
 
同 孝行者のもろふたほうび
 (孝行者のもろうた褒美)

同 おしやかさまのふへるの
 (お釈迦様の増えるの)

同 かわい子をせめるやいと
 (かわいい子を責める灸)

同 てんぴんのはり口
  (天秤の針口)
【針口】天秤てんびんの中央、支柱の上部にあって、平均を示す針のある部分。

同 てしま先生はなし
 (手島先生話し)
【てしま先生】手島堵庵。江戸時代中期の心学者。平易な言葉で、教化の普及につくした。

同 道中の一里づか
 (道中の一里塚)

同 車に乗て居るいざり
 (車に乗っている躄)

同 はかりのむだめ
 (秤の無駄目)
【無駄目】竿秤で、実際には使うこともないのにつけてある秤の最初の目盛り。

同 宮寺へ奉納のしな
 (宮寺へ奉納の品)

行司 じしやく 北むく
  (磁石 北向く)

頭取 立石のせし〇
          こよミの日し○
          こよミの月し○
          三月三日汐干

【三月三日潮干狩】江戸時代、例年3月3日は大汐干潟になるので、人々は汐干狩りに出かけた 


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4 コメント

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遅生さんへ (Dr.K)
2023-07-18 15:37:28
今回も難しかったです(~_~;)
でも、読み下し文と解説がありましたから、だいぶ解りました(^_^)
「かわいい子を責めるやいと」のところの「やいと」が「灸」であることは、全く知りませんでした(~_~;)
「やいと=灸」は解説ものですね(^_^)
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Dr.Kさんへ (遅生)
2023-07-18 16:25:54
こういう雑多な文に頭を悩ませていると、知らないことがいろいろ出てきて勉強になります。
今時やいとをすえたら、それこそ幼児虐待でお縄になります(^^;
でも実態は、やいとをすえられそうなのは、シルバー世代なのですから、世の中、大きく変わりましたね(^^;
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Unknown (1948219suisen)
2023-07-19 00:56:25
テレビのなかった時代の人情の機微をついた番付で面白く読ませていただきました。当時の人達はこういう書物で大人になっていったのでしょうね。
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1948219suisenさんへ (遅生)
2023-07-19 09:12:42
正統派の瓦版は、現在の新聞(号外)にあたりますが、面白瓦版は、さしずめ、通勤電車の網棚に捨て置かれる娯楽夕刊紙といったところでしょうか。
一時の愉しみで消費される紙媒体、浮世絵も似たようなものであったようです。残っているのがわずかなのも肯けますね。
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