面白本『吾妻美屋稀』も6回目となりました。
今回は、きわどい話が満載の面白瓦版です。
ちょうど、勤め帰りのサラリーマン諸氏が家へもって帰るにはチョットと、通勤電車の棚に置いてくる、あの夕刊紙の江戸版ですね(^^;
でも、実際は、どの話も、下の方へ落ちそうで落ちないものばかりです。
いつものように、4分割して、右上から順に。
新謎わらひふくろ
・あおのけふるつてしかミつきこしにちからを入てもち上る物ナアニ 四ツ手あみ
(仰のけ振るってしがみ付き、腰に力を入れて持ち上げるものナアニ 四ツ手網)
・ひとつしるとよろこんでま一つしなされ/\とせがむものナアニ おとし噺
(一つ知ると喜んで、ま一つしなされしなされとせがむものナアニ 落し噺)
・ひめごせがまたをひろげ大きな物ヲまゑへあてひちや/\する物ナアニ せんだく
(姫御前が股を広げ、大きな物を前へ当て、ひちゃひちゃするものナアニ 洗濯)
・そろ/\といれてぬいたあとをよふふいておくものナアニ きせるのそうじ
(そろそろと入れて抜いた後をよう吹いておくものナアニ 煙管の掃除)
・ぬつと入てつきさへすれバしろいものがぬら/\とでるものナアニ
(ぬッと入れて突きさえすれば、白いものがぬらぬらと出るものナアニ 心太(ところてん))
【心太(ところてん)】煮だした天草が冷めて煮凝る(固まる)時の様子から、凝る(心が語源)ことによって太くなるもの=心太。当初は、「こころふと」と呼ばれていた。「こころふと」=>「こころたい」=>「こころてい」=>「こころてん」=>「ところてん」
・くらがりでそつと一ツとつたといふてよろこぶものナアニ ほたる
(暗がりでそっと一つ取った言うて喜ぶものナアニ 蛍)
・でるたびにエヽゑい/\といへとあとがくさいといふものナアニ 花火せんかう
(出るたびにエエエイ/\と言えど、後が臭いと言うものナアニ 花火線香)
・まあ一ばんさせといふもういやじやといふてもぜひにさせといふものナアニ 将棋
(まあ一番指せと言う、もう嫌じゃと言うてもぜひに指せというものナアニ 将棋)
・入レてつかふてしもふてあとをふいてかミをはさんでおくものナアニ 重箱
(入れて使うて仕舞うて後を拭いて紙を挟んでおくものナアニ 重箱)
・入れ○○て見でもはいらんからあなをついてはいらすものナアニ たびの袋
(入れ〇〇て見でも入らんから穴を突いて入らすものナアニ 足袋の袋)
・むすめのだいじのものを○○にふわつたなとはヽごがしからしやる物ナアニ ぽぺん(娘の大事の物を○○にふ割ったなど母御が叱らっしゃる物ナアニ ポペン)
【ポペン】ポピン、ポッピン。ガラス製の玩具。吹くと薄底がペコンペコンと鳴る。
・わかいごけこがしたい/\といふておやごもさしてやりたいといふ物ナアニ 〇物国じゆん礼
(若い後家がしたいしたいと言うて親御もさしてやりたいと思う物ナアニ 〇国巡礼)
・ちよつとあけてさへくさいのによつておヽつてするときハなをくさからふといふ物ナアニ しばいの番付(ちょっと開けてさえ臭いのに、よって覆ってするときはなお臭かろうという物ナアニ 芝居の番付)
・ぬいたりはめたりしてとヽがよいか/\といへバかヽもよい/\といふ物ナアニ 竈のうハぬり
(抜いたりはめたりして、トトが良いか/\といえば、カカも良い/\と言う物ナアニ 竈の上塗り)
【上塗り】竈の漆喰仕上げは、使っているうちに傷んでくるので、上塗りし直して修理する。上の文は、この時の様子。竈で使う鍋などを抜いたりはめたりして調整する?
・きのせくときついかどぐちてやつてしまふものナアニ 年玉
(気の急く時、つい門口でやってしまう物ナアニ 年玉)
・わしもわかいときハさしたかつたむすめもさしたかろとおもひやる物ナアニ くしかうがい
(ワシも若い時に挿したかった、娘も挿したかろうと思いやる物ナアニ 櫛笄)
・おれもわかいときハよいのがしたかつたむすこもさぞしたかろと思ひやる物ナアニ 下帯
(俺も若い頃は良いのがしたかった、息子もさぞしたかろと思いやる物ナアニ 下帯)
・大きふなるとけがはへてまたかハのむけるものナアニ なんばきひ
(大きうなると毛がはえて、また皮のむけるものナアニ 南蛮黍)
【南蛮黍】とうもろこし
・ふんどしまではづしてとりかヽるものナアニ のみ(褌まで外して取りかかるものナアニ 蚤)
・むすめごにひろけさしてするものナアニ 哥かるた
(ムスメゴに広げさしてするものナアニ 歌かるた)
・ちよつと手さしするとつけつまわしつさしたかる物ナアニ 蜂
(ちょっと手指しすると、付けつ回しつ刺したがるものナアニ 蜂)
・ゆひさきでそろ/\といちりかまハせバついわれる物ナアニ そろばん
(指先でそろそろと弄りまわせば、つい割れる物ナアニ そろばん)
・しめたりゆるめたりする内アヽよふなるといふものナアニ 小つゞみ
(締めたり緩めたりする内に、ああ良うなるという物ナアニ 小鼓)
・むすめがいちどしてから又したい/\とおもふている物ナアニ いせ参り
(娘が一度してから、又したいしたいと思うているものナアニ 伊勢参り)
・はじめハいたいやうなれとだん/\こころよくなる物ナアニ しやくのはり
(初めは痛いようなれど、だんだん心良くなるものナアニ 癪の針)
・うつむけにしてしりから入てしつくりとしてよいといふものナアニ おけの𥶡
(うつむけにして尻から入れてしっくりとして良いという物ナアニ 桶の𥶡)
・子のうまれ〇たび/\にだん/\とひろ〇るものナアニ 一家親るい
(子の生れ〇たびたびにだんだんと広〇るものナアニ 一家親類)
・いれるときすこししたり入レたりするうちにアヽながれるといふ物ナアニ 質屋
(入れる時少ししたり入れたりするうちに、アア流れると言うものナアニ 質や)
・とふぞちつさがねたあいだにしたいものじやとめをとがいふている物ナアニ ちのミごのさかやき
(どうぞ稚児が寝た間にしたいものじゃと夫婦が言うておるものナアニ 乳飲子の月代(後述))
【ちっさ】稚児、小児。
・そろ/\〇大きふなるとけがはへていろど(づ?)く物ナアニ 桃
(そろそろ〇大きうなると毛がはえて色づく物ナアニ 桃)
・まいらばんぜうとあをのけにして又いれかけるものナアニ 双六のさい
(まいら盤上と仰のけにして、又入れかける物ナアニ 双六の賽)
・ゆびさきでいちりまハせバじく/\としるのてるものナアニ ほうづき
(指先でいじりまわせば、ジクジクと汁の出る物ナアニ ほうづき)
・かミをもんでまつてゐるとサアしませふといふ物ナアニ
(髪をもんで待っているとサアしましょうと言うものナアニ 月代)
【月代(さかやき)】男の頭髪を頭の中央にかけて半月形に剃り落とした、その部分のこと
・とヽさんがも○○んさきに二かいで今しておくれとむすめごがいふ物ナアニ 女のかミゆい
(トトさんがも○○んさきに二階で今しておくれと娘ごが言うものナアニ 女の髪結い)
・どれはじめうかと女房がだしかけてひろげるものナアニ ぬいもの
(どれ始めようかと女房が出しかけて広げる物ナアニ 縫い物)
・しハがよつても入レさへするとしやつきりとたつものナアニ かみ代○
(皺がよっても入れさえすれば、しゃっきりと立つ物ナアニ かみ代○)
・にぎつて見てどふでもふといがよいとこけごがいふものナアニ 〇・・〇
(握ってみてどうでも太いが良いと後家御が言うものナアニ 〇・・〇)
・まいばん火をけして人がねるとそろ/\ととりかかる物ナアニ ねずミ
(毎晩灯を消して人が寝るとそろそろと取りかかる物ナアニ 鼠)
・はだかふるつてだきついて一ばんとつたといふ物ナアニ 角力
(裸奮って抱きついて、一番とったと言うものナアニ 角力)
これらお話は大人だから際どいと思うのであって子供たちには何のことかわからないと思います。わかる子供がいたら、よほどのおませさん?☺️
江戸時代の人たちも、こんなたあいもない話で盛り上がっていたのでしょう。
時代は変わっても人変わらず、です(^.^)
当時の庶民の生活の一端を垣間見ることが出来ますね(^_^)
肩透かしをくらって苦笑している顔が浮かんでくるようです。
笑いのある世の中は健全ですね、たとえアッチの方の話題でも(^.^)