蛸壷を花器に転用した品が出てきました。
口径 13.3㎝、胴径(最大) 18.0㎝、底径 16.2㎝。江戸後期ー明治。
フジツボがびっしりと付いた蛸壷です。
土味からすると、常滑焼ですね。
壷の内外が輪状になっています。紐造りのように見えますが、とてもそんなに時代が遡る品とは思えません。手取りは、紐造り壷ほどずっしりとしていません。また、首の辺りはすっと轆轤で轢かれたようになっています。胴にある輪が積み重なったような部分は、装飾を兼ねた轆轤目でしょう。江戸後期には、備前にも、胴に強い轆轤目のある壷がよく見られます。
内側の底は、黒いタール状の物で水漏れを止めています。明らかに、花入れとして使っていたことがわかります。
この壷の最大の見どころは、ビッシリと付いたフジツボです。蛸壷花器は時々みかけますが、これだけフジツボ満開の品は珍しい。
手で持つと、痛い。
底面は、
まるで月面。
胴の部分は、
さしずめ太平洋。
これだけのフジツボさんに免じて、花活けの方はパスさせていただきます(^.^)
それに、花器に転用出来るような良い形をしていますよね(^-^*)
この蛸壺は、最後まで蛸壺だったものを花器に転用したものではなく、一度、海の底に沈んだものを、後日、拾い上げたものなのでしょうね。いわば、海揚がりですね。それだけに、作られてからの年数は経過しているのでしょうね。
紐造りのように見えますが、轆轤でひきあげているのですか。
そうですね、普通に蛸壷として使っていれば、こんなにフジツボが付くはずもないですよね。そういう点では、海上がりと考えたらいいでしょうか。海上がりは一つも持っていないので、よかったです(^.^)
物を見ると、すぐ良い方に解釈する癖がついてしまっています(反省^^; 紐づくりの壷の輪は、もっと太いですね。それに、ここまできれいな模様にはならないし。江戸後期の陶磁器にみられる、先祖帰りを狙ったものの一つでしょうか。
外は丸く、ぐるっと見て楽しめます。内側は暗くて何かありそうな気配。
壷には宇宙がつまっていると言いますが、この壷なんかはそんな気分にさせてくれます。
ほんと、フジツボさんのおかげです(^.^)
それにしても凄いフジツボの数ですね~
やはり銘は光源氏の初恋の人である藤壺の宮から「藤壺」でしょうか。
これぞ完品(^.^)
これだけの数あっても、全く無疵のフジツボさんたちです。
藤壺と同様、べっぴんさんですね(^.^)
★藤壺のみつしりつきし蛸壺の藤壺あいす源氏のごとく