遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

面白古文書『吾妻美屋希』3.「かねもちになる伝授」

2023年07月12日 | おもしろ古文書

面白古文書『吾妻美屋希』の3回目、「かねもちになる伝授」です。

これまでの面白瓦版と異なり、金持ちになるための方法を伝授するというものです。

項目は大変少なく、金銭、着物、諸道具、家宅、用心、女房、命、堪忍、遊芸、不実、食物、酒、桶類、印判、下人、下女・丁稚、色欲、商売についてです。相変わらず、が多いです。ただ、ばかりで、全くお手上げの項目は無し。何となく、著者の言わんとすることがぼんやりと浮かんできます。

4つに分けて、右上から順に。

かねもちになる伝授

金銭 銭かねハ神ほとけのやう二をもひあだくつかへハばちあたりとこころへすこしもつかふ事なかれ
(銭金は、神仏のようにも思い、徒く使えば罰当たりと心得、少しも使うことなかれ。) 

着物 きものハせんだく物よしとおもふべしよきものをきれハ◎つかふはじめなり長そでハ別なり
(着物は洗濯物を良しと思うべし。良き物を着れば銭使う始めなり。長袖は別なり。)
【◎(内側の小〇は□)】銭

諸道具 身ぶんさうおふのものがよしみせのどうぐハかぎるべしその外ハ○○○○○しんぼうすべし
(身分相応の物が良し。店の道具は限るべし。その外は○○○○○辛抱すべし。)

家宅 あまりひろきハあしせまきを惟なり又家ハよき家ヽ作るべしあしけれバわざわひをまねく○○から○あし
(あまり広きは悪し。狭きを惟なり。又、家は良き家々作るべし。悪しければ災いを招く。○○から○悪し)

用心 大の第一しまりハじやうぶにするがよしあんヤラハ○てまるそう〇〇て損なり
(大の○第一締まりは丈夫にするが良し。あんヤラハ○て〇也。そう〇〇て損なり)

 

女房 かヽにハまかれるよしずいぶん大事ニかくべしあしき事あらバいヽきかすべしいふ事きかねばさるべし
(かかには巻かれるが良し。ずいぶん大事にかくべし。悪しき事あらば言い聞かすべし。いう事聞かねば去るべし。)

命 千年も万年も生をふしとをもふべし死するといふ事思ふべからず金銀たまらぬなり
(千年も万年も生を不死と思うべし。死するという事思うべからず。金銀たまらぬなり)

堪忍 できぬかんにんハせぬがよしかんにんしすぎるとなんぎおこるなりい○○事ハしあんしてよくいふべし
(出来ぬ堪忍はせぬがよし。堪忍しすぎると難義起こるなり。い○○事は思案して、よく言うべし)

遊芸 おぼつる事無もし覚るならばへたがよしニ一手になるべからずゆふげいあがれバしんしやうさがるなり
(覚つる事無〇。もし覚るならば下手が良しに一手になるべからず。遊芸上がれば身上下がるなり)

不実 ものヽ○○のしやうぶすべてに事そんのはしなりとかく正直がとくなり又いやな事ハ早く即いふ惟なり
(ものの○○の勝負すべてに事損のはしなり。とかく正直が徳なり。また、嫌な事は早く即、言うが徳なり。)

 

喰物 けんやく第一なれどもくいものハ下人も主人も同じやうにすべし上よく下あしけれバ家内○○○んせずそん也
(倹約第一なれども、食いものは下人も主人も同じようにすべし。上良く下悪しければ家内○○〇んせず損なり)

酒 のむ事無用なりもしのむならバ酒にのまれぬやうにのむべししかしひるのうちハのむべからず
(飲む事無用なり。もし飲むならば酒に飲まれぬように飲むべし。しかし、昼の内飲むべからず)

桶類 おけのるいあるひハふろなどハねだんの高ひのを用ふべし安いのハくさりはやくおおそんなり
(桶の類或は風呂などは、値段の高いのを用うべし。安いのは腐り早く、大損なり。)

印判 古ル印ばん又ハ生に合ぬはんもつべからず大二そんぶ立なり名のりをたゞしてもつべし
(古印判又は生に合わぬ判持つべからず。大いに損部立つなり。名乗りを正して持つべし。)

心得 人ハ一切何事もたより二おもふべからず我身より外かたなしと思ふへしとかく銭かねを〇〇〇〇べし
(人は一切何事も頼りに思うべからず。我身より外〇かたなしと思うべし。とかく銭金を〇〇〇〇べし。)

 

下人 めしつかいの者ハわか手足と思ふへし我と下人と同じやう二身を働べし下人のつかいわが身○べからずそんのはじめ也
(召使いの者は、我が手足と思うべし。我と下人と同じように身を働くべし。下人の〇使い我身〇べからず。損の始めなり。)

下女、丁稚 下女ハふきりやうのをつかふべしあるしもかヽもししんどいすくなしでっちハふぜき二○を付べし
(下女は、不器量のをつかうべし。主もかかもしんどい少なし。丁稚はふぜき二○を付べし。)

色欲 いろ事第一つヽしむべしばい女ハひへのうれひあり下女をつまべば金のむしん何事もミなそん也
(色事、第一慎むべし。売女はひへの憂いあり。下女をつまべば金の無心、何事もみな損なり。)

商売 坂にくるまをおす之こころへゆだんなく○〇〇〇べし。其内朝ハ早くおきるべし例えば一日ニ五ト(分の崩し字)ちがへハ一月十五匁の違一年ニ百八十目の〇・・・・・・・・・・・・・○
(坂に車を押すの心得、油断なく○〇〇まるべし。其内朝ハ早くおきるべし。例えば一日に五分〇違えば一月十五匁の違、一年に百八十目の〇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・○)
【ト】分の崩し字
【目】匁

 

 


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9 コメント

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美恵子さんへ (遅生)
2023-07-13 10:35:17
確かに、今でもナルホドと納得できるものばかりです。こういうのに出会うと、思わず自分を振り返ってしまいますね(^^;
当時の人たちも、今の我々と同じような気持ちで読んでいたのでしょう。何となく親近感を感じてしまいます(^.^)
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酒田の人さんへ (遅生)
2023-07-13 09:00:17
そうは言っても、酒田の人さんは、コインでお金と繋がっているからいいです(^.^)
私の場合、入ってくるあてもないのに、やたらと散在ばかり。『貧乏になる伝授』なら、十分に書けそうな気がします(^^;
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1948219suisenさんへ (遅生)
2023-07-13 08:55:22
今でも立派に通用する教えが書かれていて、感心します。
時代は大きく変わりましたが、人はほとんど変わらない(当たり前といえば当たり前)、ということでしょうか。
目先の変化、世の中の変化に惑わされるな、という教訓でもありますね(^.^)
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1948219suisenさんへ (遅生)
2023-07-13 08:55:20
今でも立派に通用する教えが書かれていて、感心します。
時代は大きく変わりましたが、人はほとんど変わらない(当たり前といえば当たり前)、ということでしょうか。
目先の変化、世の中の変化に惑わされるな、という教訓でもありますね(^.^)
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Unknown (1948219suisen)
2023-07-13 05:03:26
今でも十分有用なことが書かれてございますね。

故玩館は故宝館だと思います。
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遅生さんへ (酒田の人)
2023-07-13 00:02:21
>銭金は、神仏のようにも思い、・・・
なるほど~、ワタシは金持ちにはなれそうもありませんね~
この作品、かの有名な「養生訓」のお金版と言えなくもないような気がします。
ワタシの場合だと「金と頭は生きているうちしか使えない」の方がしっくりきますが(困ったもんで)。
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Unknown (美恵子)
2023-07-12 21:16:47
なかなか面白いです。
いつの世にもつうじるものがあり、感心して読ませていただきました、もちろん遅生さんが親切に解説していただいたところをです(笑)
読めませんね、今や明治、大正のでも読めません。
いつもありがとうございます、おかげで昔を知ることができます。
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Dr.Kさんへ (遅生)
2023-07-12 20:26:01
ほんと、今でもズンとくる人生訓です。
Drと違って、酒の項目は該当無しですが、道具類を骨董類に置き換えれば、ビックリするほど納得しますね(^^;
「女房」の、「いう事聞かねば去るべし。」の主語は、やはり自分でしょうか(^^;
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遅生さんへ (Dr.K)
2023-07-12 19:21:46
ははは、これには、「金持ちになるための方法の伝授」にとどまらず、人生訓のようなものも含まれていますね(^_^)


>「酒 飲む事無用なり。もし飲むならば酒に飲まれぬように飲むべし。しかし、昼の内飲むべからず」

とありますが、私にとっては、全て当てはまるようです(~_~;)
そのため、金持ちになれなかったですし、病気にもなったような気がします(~_~;)
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