先に木に陶器を埋め込んで滝百合を表した笠翁細工の盆を紹介しました。
似たような品がもう一つありました。
縦 59.2㎝、横 38.5㎝、厚(木) 1.5㎝、厚(脚込) 3.4㎝。明治。
芝山細工とよばれる品です。
貝や骨の象嵌で花鳥図がレリーフ状に表されています。
江戸後期になると、繊細かつ大胆な象嵌細工の工芸品が流行し始めました。そして、幕末から明治にかけて、海外で、このような工芸品の人気が沸騰し、数多くの製品が輸出されました。
その中でも、芝山細工は特に海外で評判となりました。今回の品は、そのうちの一つです。
桜の幹と花、そして鳥(たぶん、尾長)が繊細に象嵌されています。
特に、鳥の表現が見事です。
鳥の羽の虹色に光る部分は、夜光貝(or 鮑)が使われています。様々に彫られた貝を寄せ集めて立体感を出す技法は、寄せ貝と呼ばれています。顔、脚、尾羽はおそらく獣骨でできていて、非常に細かく彫られています。
桜の幹、枝、葉は獣骨、
花びらには白蝶貝を使っています。
よく見ると、小さな蜂も飛んでいます。素材は、透明感のある貝(白蝶貝?)です。
ところどころ、花びらが抜け落ちています(鳥の右の枝も脱落(^^;)。
そのおかげで、象嵌時の彫りの深さ(1.5-2㎜)がわかります(ケガの功名(^^;)
桜にオナガドリのモチーフや貝寄せ技法などからすると、この品は、芝山細工のうちでも、明治時代、横浜で生産され、輸出された横浜芝山細工と思われます。
この額を横から見ると、
芝山細工を満載した船が横浜港から出航し、広い太平洋を渡っていくかのようです(花びらが抜けた所は沈没船?(^^;)
陶胎七宝の棗を置いてみました。
マットな深い青色(勝手に明治ブルーと命名(^^;)に時代の息吹を感じます。
生産効率をあげるために、分業制をとっていたようです。そのせいでしょうか、剝脱が目立ちます。それに、象嵌するための溝彫りもあまり緻密ではありません。中国にもこういう象嵌はあると思うのですが、おそらくもう少しきっちりと作られていると思います。中国漆器と長崎漆器の関係に似ていますね。
材料が貝、骨という天然素材であるということが、これらの作品の魅力になっているのでしょうね。ずっと見ていても見飽きないのは、たぶん、そのせいなのでしょうね。
長崎螺鈿も凄いですが、芝山細工も凄いですね。
磁器全般をchinaと言うのに対して、漆器全般をjapanと言いますものね。
そのなかにあっても、漆工芸品は明治がピークですよね。
このように精巧なものは、もう作れないのでしょうね。
まさに「お宝」ですよね(^-^*)
黒い穴ぼこは、私も最初、なんだろなあとおもっていました(^^;
鳥の右側の黒いところは、彫ったようなでこぼこに見えたので、これは何だろうと思いめぐらしました。
これが抜け落ちたのだと分かり、これで私にも、昨日の盆も含めて、埋め込みの工程が理解できました。
収蔵品公開で色んな珍しいものが出て来ますね。これらが国内産。
技術の確かさに日本人として誇りに思います。