遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

金工5 銅蟲ふくら雀図菓子皿

2020年04月17日 | 金工

前回に続き、銅蟲細工の菓子皿です。

             19㎝ⅹ19㎝

前回のブログで紹介した手付菓子皿と類似の品です。

実は、先回のブログを書くにあたり、まだ銅蟲があったはずだし、まとめて紹介した方が良いと思って、あちこち探したのですが、見当たらず、見切り発車しました。

その後、ふと、銅蟲手付菓子皿の1mほど横に目をやると、他の品の陰にもう一つの銅蟲が隠れているではありませんか(^^;)

というわけで、今回のブログになった次第です。

 

皿いっぱいに、ふくら雀が銀象嵌されています。

ふくら雀の図柄は、福良雀ともよばれ人気があり、江戸後期から明治にかけての陶磁器の皿にもよく見られます。

 

でも、よく見ると、象嵌というよりは、ふくら雀の輪郭をざっと彫り、そこへ渡銀を施したお手軽細工であることがわかります(^^;)

周囲の飾り金具の方が、よほどしっかりとした仕事です(^^;)

 

そうはいっても、銅蟲のリズミカルな槌跡は、やはり見事ですね。

 

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金工4 銅蟲椿銀象嵌手付菓子皿

2020年04月15日 | 金工

銅蟲細工の菓子皿です。

     23.3㎝x 22.9㎝、 高さ(手込み) 3.1(12.7)㎝

銅蟲は、広島の特産工芸品です。その起源は、江戸中期にまで遡ります。

銅板を、槌で叩いて成形し、花瓶や皿に仕立て上げたもので、細かな装飾や象嵌もなされることが多いです。最大の特徴は、色つやです。稲藁で燻すことによって付けられた黒茶色の銅肌は、布で空拭きを繰り返してやると、深い味わいの玉虫色光沢へと変わっていきます。

中央に、椿が銀象嵌されています。

周囲や取っ手には、飾り金具がついています。

 

なぜか、裏側の方が、表側よりピカピカです。

 

銅板を槌で叩き出した跡がはっきり表れています。

 

銅蟲は、いくつかの作家(工房)が製造しています。江山名の品もその一つです。

この品はさほど古い物ではないでしょう。戦前くらいの品ですが、なかなかの古格が出ています。

銅蟲には、花瓶や菓子器など、実用的な品が多く、価格も手頃なので、手軽にレトロな雰囲気を楽しむには、格好の品だと思います(^.^)

 

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金工3 山水図皿

2020年04月13日 | 金工

今回も金工細工皿です。

雄大な山水図です。

                    径 20.8㎝

これまでの3枚のうちで一番大きく、手にズシリときます。

 

この皿の特徴は、大自然のなかでの人物です。

上半部、右側。

岩山の上に小さな庵。その中に2人の人物がいます。

 

下半部。

右側、滝の下の橋を渡る2人と、左側の庵の中に、3人の人物がいます。

 

右上の庵のなかの2人。

 

左下の庵の中の3人。

 

まず、ふたつの庵をくらべてみます。

上の庵の屋根。

 

下の庵の屋根。

 

下の庵の屋根は、鋳型の凸で表されていますが、

上の庵の屋根には、極細の線が彫られています。

ほとんどが鋳型の模様の中に、さりげなく、「こんな彫りもできるんだぜ」というような感じで、入れ込んであります。

 

さて、2つの庵の中の人物を、もう一度見てみましょう。

 

どうも、表情があるような気がするのですが?

まさか・・・!

 

念のため、拡大して見ると・・・・

上の庵の2人。

目、口らしきものが見えます。

左側の人物。

 

右側の人物。

 

下の庵の右端の人物。

これらの人物の顔は、0.8-1.2mmほどの大きさしかありません。米粒よりずっと小さい。

こんな所へ、極小の道具で針先ほどの穴を開ける!

熟練の技とはいえ、すごい腕です。

 

裏側はいたって簡素。

「信情」の銘があります。

おそらく、幕末の刀装工でしょう。

 

この皿に込められたのは、心意気というより、職人の意地ですね(^.^)

 

 

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金工2 隅田川図皿

2020年04月11日 | 金工

今回も、アンチモニー合金製の金工細工、隅田川図皿です。

いかにも明治の輸出品らしい品です。

        15.8㎝ⅹ12.1㎝ⅹ3.2㎝

蛤形で分厚い皿です。

灰皿にぴったりの大きさ、形ですが、やはりペン皿でしょう。

 

美しい女性が2人、何やら話しています。船着き場の川面には都鳥・・・・・なかなか絵になります。

浮世絵にありそうな場面です。

遠くに富士山が見えます。その上にも、貝の蝶番部が富士山形。ダブル富士ですね(^.^)

あそびゴコロです。

 

 

裏側も簡単な細工がなされています。

この皿も、表、裏、2枚の品を合わせてあると思うのですが、どうやって貼り合わされているの全くわかりません。

裏側にある、2本の脚(3本目は凸部で代用)もよく見ると、にくい工夫がなされています。

右側の脚は岩の一部、左側の脚は、松の枝になっているのです。

明治維新を必死で生き抜こうとした職人たちですが、こんなところにあそびゴコロをさりげなく入れてるんですね。

コロナの時代を生きなければならない私たちも、あそびゴコロを忘れず、心にゆとりをもちたいものです。

 

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金工1 農耕図皿

2020年04月09日 | 金工

金工細工の小皿です。

時代は、明治。

            径 12.5㎝

 

農村風景を表しています。

 

非常に細かい細工がなされています。

 

 

    裏面です。

三個の小さな足がついています。

用途は、置き(ペン?)皿でしょう。

表側ほど詳細ではないですが、田舎風景が表されています。

どうやら、表と裏、2枚の金皿を合わせて作られているようです。

 

徳川の時代が終わり、明治維新となって、刀、鎧、兜など武具の需要がなくなり、鋳物師、彫り師などは、職を失ってしまいました。

そこで彼らは、身に着けた技能を生かし、外国向けの金工細工をつくるようになりました。この産業の起こりは、廃刀令の翌年、明治10(1877)年といわれています。ほとんどの品は輸出されました。本品も、その一つでしょう。

近年、明治時代の工芸品、特にその超絶技法に関心が高まっています。しかし、この手の品は、それほど上等な物ではありません。いわば、B級品。図録にも載っていません。

材質は、アンチモニー合金だと思います。ということは、鋳型です。

      馬の尻毛部(拡大)

しかし、馬の細かな毛並み、手綱の交差具合、立体感など、打ち出しや彫金によって作られているように見えてしまうほど、高度な鋳型を用いています。

名もない職人たちが、もてる技能のすべてを注ぎ込んだかのような金工細工。明治という新しい時代の息吹が感じられます。

 

 

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