遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

堆朱?楼閣山水文箱(仙台堆朱)

2022年02月18日 | 漆器・木製品

前回に引き続き、今回も堆朱の文箱です。

18.0㎝ x 24.4㎝、高 5.5㎝。戦前ー現代。

前回に紹介した堆朱と形、大きさなどがよく似た品です。

やはり、内側と底は黒漆塗りです。

全面に、細かな模様が浮き出ています。

蓋の裏を光に当てて角度を調整すると、

かすかに木目が浮かび上がり、木胎であることがわかります。

立体模様の厚さは1-3mm。上の写真の橋など、立体感がうまく出ています。地模様も細かいです。

しかし!

模様に何となくキレがない。分厚い堆朱層を削ったにしては、妙にまるいのです。

目を凝らすと、朱色の中に白い部分が所々にあることがわかります。

顕微拡大してみると・・・

朱色の皮が剥がれ、白、灰色のブツブツがいっぱい見えます。

まるで、小砂利混じりのコンクリートのようです。

同じように朱が剥がれて、内部がむき出しになった所があちこちにあります。朱模様の間の黒く見える部分には、繊維がたくさん見えます。

下方に、大きな欠けを見つけました(写真の白い部分)。少量を削り取って(もはや惜しくはありません(^^;)、水をつけて揉むと、ヌルヌルと溶けるではありませんか ・・・・こっ、これは~~~~!

近代の仙台堆朱は、明治末期、新潟、村上堆朱の職人、川崎栄之丞が仙台から来て開発しました。型押しで浮き模様のシートを作り、木胎の上に貼り付け、朱漆を塗った物です。東華堆朱ともよばれます。生地を精細に彫る手間が省け、量産が容易となりました。原料は、穀類の粉、石膏、木粉、繊維などで、これを糊で練り、型に入れて固めてあるのです。

朱漆で表面が覆われている限りは良いのですが、傷がついて内部がむき出しになると、水で糊が溶け出すのですね(^^;  また、凹部には朱漆が塗られておらず、黒っぽい色です。おそらく墨をってあるのでしょう。ですから、長年の間に、固められたものがほつれてきて、繊維が表面に出てくるのだと思われます。顕微観察で地の部分に見えていた繊維はこれだったのです。

仙台堆朱には、村上堆朱のように木胎を彫って朱漆を塗った品物もありますが、主流は今回のような型押し製品です。しかも、今回の楼閣山水文庫はその代表格。

うーーーーーん、これを堆朱と言って良いのでしょうか(^^;

 

ps. 同じまがい品なら、樹脂を型押しした中国の品物の方が、はるかに精巧で堆朱らしい出来です(^^;

 

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

堆朱花鳥文箱(村上堆朱)

2022年02月17日 | 漆器・木製品

これまで、中国の堆朱を紹介してきましたが、今回は日本の堆朱です。

18.0㎝ x 24.4㎝、高 5.5㎝。戦前ー現代。

全面に堆朱が施された文箱です。

彫りは、1-2㎜と浅いです。

内側と底は黒漆塗りです。内には、黒の板が入っています。

岩、牡丹、鳥が彫られています。

 

 

地にも細かな彫りがなされています。

黒漆塗りの部分には、木目が出ているので、木胎であることがわかります。

ところが、よく見ると、朱漆の部分にもかすかに木目らしき筋がみとめられます(電灯が写っている部分、縦に筋)。

これは、分厚い朱漆層を彫った本来の堆朱ではなく、彫りを施した木胎に朱漆を塗った物ですね(^^;

堆朱は、室町時代に中国から日本へ多くの品が渡ってきたと言われています。その後、日本では、一部の作家の品を除けば、木のボディに彫刻を施した物に朱漆を塗った倣堆朱が主に生産されました。村上堆朱や仙台堆朱です。鎌倉彫りもこの系統に入ると言えます。

今回の品はその一つ、おそらく村上堆朱(新潟県)ではないかと思われます。

それにしても良くできています。

予備知識がなければ、本物の堆朱で通ってしまいますね(^.^)

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

堆朱牡丹鳳凰紋飾棚

2022年02月15日 | 漆器・木製品

大きな堆朱飾り棚です。

 

 

幅 93.7cm、奥行 34.9㎝、高 98.3㎝。現代。

中国製の堆朱棚です。しっかりとした造りで、重いです。

全面に牡丹が彫られています。

天板の中央には、鳳凰があしらわれています。

天板左:

天板右:

天板中央:

彫りの深さは、2-3mmほどです。

少し横から見ると、牡丹と鳳凰が浮き上がって見えます。

 

 

 

左右両側面にも、牡丹が彫られています。

 

 

 

前面には、抽斗が4個。

そこにも、牡丹が彫られています。

 

この堆朱棚は、大きな牡丹が11個、鳳凰が1羽配された、たいへん目出度い品ということになります。

現代の工芸品ですが、真面目な造りの実用品です。堆朱の色も落ち着いた朱色で、どぎつさを感じません。

いつもの骨董屋で、店主がうれしそうに搬入してきたのに遭遇し、そのまま故玩館へ連れて帰りました。こういう品の相場は、不明です。金額が妥当であったかどうか、ずっと気になっていました。

ところが、数年前、ネットオークションに同手の品が出品されました。予想に反してどんどんはね上がり、最終的に私の購入価格の4倍もの値になりました。店舗の価格よりも、ネットオークションの方が高くなるのは、本当に稀です。この品は、それなりの品だったのですね(^.^)

この棚には、普段、品物がワンサとのっています。ちょっとやそっとでは掃除ができません。今回、写真を撮るために、全部の品を移動しました。おかげで、彫りの間の細かい部分もきれいにすることができました。ブログの効用です。

 

堆朱飾り棚は、元の通り、陶胎七宝などを満載したゴチャゴチャ状態に戻りました。これ以上詰め込むのは、無理ですね(^^;

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

堆朱樹下人物紋大花瓶

2022年02月13日 | 漆器・木製品

中国の古い堆朱大花瓶です。

 

 

口径 16.8cm、胴最大径 21.3㎝、底径 14.3㎝、高 55.7㎝。清時代?

 

非常に細かい彫りが施されています。

上下に分けて見ると、

もう少し拡大してみます。

 

 

この品には四面に窓がとられ、それぞれ樹下人物が表されています。

上の写真以外の三面の人物です。何かの物語を表しているのでしょうか。

 

樹木の彫りは、深くダイナミックです。

樹木や人物が彫られた厚みは、7mmほどもあります。低い面にも、地紋がビッシリと彫られています。

堆朱の本場は中国ですが、私はこれまで何度も痛い目にあってきました。堆朱の見分け方は本当に難しく、今も自信はありませんが、これまでの教訓を頭に入れて、今回の品を見ていきます。

堆朱は、彫漆の一種で、木の胎に漆を塗り重ねて、分厚い漆層を刃物で彫り、模様を浮き出したものです。赤漆を塗り重ねた物を堆朱、黒漆の物を堆黒と呼んでいます。いきなり分厚く塗ると強度に問題が出ます。物の本には、漆を50回、100回と塗り重ねるとあります。しかし、固まった純漆は非常に硬いので、細かい彫りは無理です。ですから、通常の堆朱では、穀物粉、木粉、珪藻土などの固形物や油を混ぜた漆を10回程度塗り重ねてあるようです。詳細はわかりません。

巷でよく目にするのは、真鍮や銅の器胎の上に塗った漆を彫った品です。漆の親和性は木にあるわけですから、木胎でない品は現代物と考えて良いでしょう。また、色調も重要です。朱漆の色合いがどぎついもの、明るすぎるものは現代の工芸品です。年月を経た品は、朱色に深みがあります。

もう一つ厄介な品があります。木胎でも金属胎でもなく、内部まで全部堆朱(のように見える)の品です。おそらく、樹脂や木粉などを樹脂で固めた物で出来ていて、精巧な型を用いて作られたと思われます。いわゆる名品のコピーに多くあります。長い時代を経て生じるき裂や断紋さえ、見事に再現しています。壊れた品物を一度見たことがあります。割れ口を見ると、内部は黒の樹脂、もちろん、塗り重ねた形跡はありませんでした。例の水に浮くか沈むかで見分けられますが、店頭の品を水没させるわけにもいきません(^^; まあ、名品が我々の手の範囲にあるはずがない、という厳然たる事実を胆に銘じておくほかはありません(^.^)

さて、今回の堆朱です。

口元を補修しています。大きな花瓶ですから、倒れた時に縁が欠けたのでしょう。少なくとも、金属胎ではありません。

口元内側は黒漆で塗られていますが、その下方には木肌がのぞいています。ざっくりと粗い削りです。

この大花瓶は、木を刳り貫いて作られていることがわかります。

漆を削った断面を見てみます。

平行に何本も筋が走っています。漆を塗った層です。8本ほどあります。漆は、10回ほど塗り重ねられているようです。

地には細かい模様がビッシリと彫られています。

こんな彫りがよくできるものだと感心します。実は、先ほどの見分けるのが困難な樹脂製型物堆朱の場合、このような地紋の中に、小さな丸い玉がポツポツと見えることが多いのです。こんな玉は、鑿で漆を掘り進む場合には、絶対に生じることはありません。おそらく樹脂が冷える時にできるのでしょう。

ということで、今回の品はとびきりの名品ではありませんが、ボツにする駄品でもない。まあ、分相応の堆朱として、部屋の片隅に置いてあります。

 

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

地味な折敷(6枚)

2022年02月11日 | 漆器・木製品

先のブログで、市松模様脚付板盛器を紹介しましたが、同じように、小料理屋で使うような漆器が出てきました。

 

6枚あります。

 

 

30.6 cmx30.6 ㎝。高 1.5㎝。戦前?

 

地味ですが、使い勝手はよさそうです。

2種類の木が使われています。

下側の木には模様が描かれています。

6枚ともに、描かれた模様が少しずつ違います。

何でもないようですが、さりげなく違った模様を描くのは案外難しいです。

よく見ると、縁には斑竹が使われています。

今回の品物は、これといった特徴のない地味な物です。ブログネタのために在庫処分、という感じでしたが、案外お洒落な品なのかもしれません(^.^)

ps.その後、さらに4枚出てきました。結局、10枚揃いの品でした。これはもう、懐石料理屋でも始めることになるかも(^.^)

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする