コメント(私見):
すでに多くの県において、『分娩機能を維持する重点化病院を指定して、その指定された病院に、産婦人科医、小児科医などを重点的に配置する』との将来の方向性が示されています。
宮城県においても、産婦人科医を拠点病院へ重点的に配置する『分娩機能の集約化』の方針が決定されたとの報道記事です。
参考:産科医の重点配置
産科・小児科の重点配置を提言 (長野県産科・小児科医療対策検討会)
****** 河北新報、2007年10月8日
産科医不足対策 宮城県、集約化方針を決定
産科医不足対策として国が方針を打ち出した拠点病院への医師の集約化について、宮城県は7日までに、「集約化が必要」との方針を決めた。栗原、登米市など県北地域の産科医不足が深刻化しているためで、妊婦健診と分娩(ぶんべん)を開業医と拠点病院で機能分担する「セミオープンシステム」の導入や助産師外来の設置といった体制整備に着手する。
「集約化」は分散している医師を1カ所に集めたり、新たな医師の配置を集中させたりすることで拠点病院を強化し、医師の負担軽減や診療の高度化を図る。
県は集約化で産科医不足に対応する。とりわけ県北地域では、栗原市の産科・産婦人科の常勤医はわずか1人。登米市と気仙沼市はともに3人にとどまっている。仙台市の87人に比べ、地域偏在が進んでいる。
県北の産科医療については、複数の産科医がいる大崎市民病院に医師を集約し、妊婦健診と分娩を行う「連携強化病院」に指定する計画。栗原中央病院(栗原市)と佐沼病院(登米市)は健診だけを担当する。
大崎市民病院から週1回、栗原中央、佐沼の両病院に医師を派遣するほか、両病院に助産師外来を設ける方針。外来設置に向け、本年度は助産師対象の研修を実施する。
集約化については、厚生労働省が都道府県に対し、来年3月末までに実施の適否を決めるよう、都道府県に求めていた。
県は集約化に伴い、医師の空白地域が拡大することを懸念。ことし3月、「さらに詳細な調査が必要」として判断を先送りしていた。
県医療整備課は「産科医の地域偏在が深刻で、医師一人当たりの負担も増えている。医師が複数いなければ、24時間体制も敷けず、リスクの大きい分娩に対し、高度な医療を提供できなくなる恐れも出てくる」と説明している。
(河北新報、2007年10月8日)
****** 朝日新聞、宮城、2007年10月8日
安心な出産ピンチ/県内医療機関アンケート
妊婦健診や出産を取り扱う病院は県内全域で減少、産婦人科医1人あたりの年間出産取扱件数は多い地域で240件に――。周産期医療のあり方を考える県の協議会が調べたアンケートで、お産を取り巻く窮状が浮き彫りになった。勤務が厳しく、訴訟リスクの高い産婦人科医の数が減少する一方で、現場の医師には負担がのしかかる。出産を控えた女性にとっても深刻な状況だ。
調査は昨夏、県内138の病院、診療所に対して実施した。産科・婦人科の医師数や出産実績、近隣病院との連携を尋ね、約7割が回答した。
その結果、県内の産婦人科の常勤医師数は123人で、7年前から37人減った。県内5地域は減少、同数のいずれかだった。少子化で出産件数は約2200件減の1万8千件となったものの、医師の減少が著しいため、1人あたりの年間出産取扱件数が約20件増加。県平均で146件になった。とりわけ医師不足の進む気仙沼(243件)、大崎・栗原・登米(236件)、石巻(213件)の3地域は年間の取り扱いが200件を超えた。
また、妊婦健診を実施している病院は27カ所減り、出産を手がける病院も18カ所減った。栗原、登米、気仙沼の産婦人科病院では、いずれも常勤医師が1人となっていた。産婦人科医が減っている理由については「勤務条件が厳しい」「訴訟リスクが高い」「報酬が見合わない」といった意見が多かった。
万一、母親の症状に問題が生じた場合、高度医療機関が集中する仙台市に搬送する事例も目立つ。仙南、岩沼、塩釜、黒川の各地では母親と異常新生児の9割以上が仙台に搬送された。
こうした現状があるために、各地域ごとに「病院の集約化・重点化が必要だ」と考える病院が56%に達した。医療の安全や、医師の負担軽減のためというのが主な理由だ。県はこれらの結果をもとに、今年度中にお産に関する病院機能の集約化計画をまとめる。県医療整備課の担当者は「とりわけ健診面積が大きい半面、医師不足が進む県北地域で緊急性が高い」としている。
(朝日新聞、2007年10月8日)
過酷な産科医勤務 お産に優しい環境づくりを
お産を取り巻く環境が厳しい。奈良県では昨年、妊婦が約20カ所の病院に受け入れを断られた揚げ句、大阪府内の病院まで搬送されたが死亡。さらに、今年の8月にも同県内で妊婦の搬送先が決まらず、死産するなど、痛ましいトラブルが相次いだのは記憶に新しい。
人生で最も喜ばしく、何より多くの祝福を受けるはずの出産という瞬間。そこで、このような仕打ちが待っているとは、誰が想像するだろうか。誰もが安心して産み育てる環境の整備が急務だ。少子化対策が叫ばれて久しいが、こうした足元への配慮を軽視して進めても、大きな成果は得られまい。
トラブル続発の大きな要因の1つに、産科医の過酷な勤務実態があらためて浮かび上がった。日本産婦人科医会の全国調査では、産婦人科勤務医の当直回数は2006年度は月平均6・3回で、6年前に比べて約30%も増えた。単純に計算しても、5日に1回以上となる。また、当直明けでもいつもと同じ勤務に就かなければならない施設が9割以上を占めるという。当直手当が増額された例もごく一部にとどまる。
調査はお産を取り扱う全国約1300施設が対象で、約800施設(62%)から回答を得た。
2000年度の調査では当直は月平均4・7回で、1・6回増えたことになる。当直明けの勤務緩和措置については「なし」が全体の92・5%。国立系の施設(大学病院を除く)では100%、大学病院は97・4%が勤務緩和をしていなかった。
産科医の勤務の過酷さと待遇の不十分さが数字で裏付けられた形だ。この調査結果を分析するだけでも、とるべき対策はおのずと見えてくる。もちろん、勤務がきつく待遇が悪いからといって、ずさんな医療が許されるわけでは決してない。しかし、この悪循環が改善されない限り、トラブルの芽が摘めないことも確かだろう。
そんな中、厚労省が5日、救急搬送された妊産婦を円滑に受け入れた医療機関に手厚い加算を実施する方針を決めた。2008年度の診療報酬改定に盛り込むことを中央社会保険医療協議会(中医協)に示したという。緊急時に妊産婦を広く受け入れるよう報酬面で医療機関を誘導するのが狙いだ。
もっとも、これですべてが好転するとは言い難い。一連のトラブルをめぐっては産科医療の現場から(1)施設の不備(2)勤務が過酷で産科医が減少している―ことなどから「不十分な医療提供体制が背景」との指摘がある。そのため、報酬面で優遇しても実効性は未知数、というわけだ。
とまれ、お産に優しい環境づくりに向けて、行政が一歩踏み出したことは素直に評価したい。
(琉球新報、2007年10月7日)
****** 沖縄タイムス、2007年10月7日
産科勤務医 長時間労働の改善急務
産婦人科の医師の勤務が過酷であり、待遇も不十分であることが、日本産婦人科医会の二〇〇六年度の調査であらためて浮き彫りになった。
当直勤務は月平均六・三回で、単純計算すると五日に一回以上の頻度となり、六年前と比べて、一・六回増えた。
当直明けでも、九割以上の施設が普段と同じ勤務をこなさなければならないというから、出産で母子の命を預かる産婦人科医がいかに厳しい労働環境に置かれているかが分かる結果であろう。
さらに、過去一年以内に当直手当を増額したのは9・4%にすぎず、過重労働の上、待遇面でも改善が進んでいない実態がある。
日本産婦人科学会の調査では、出産を扱う施設は一九九三年には全国に約四千二百カ所あったのが、二〇〇五年には約三千カ所に減った。厚生労働省によると、産科医の数も〇四年に約一万六百人となり、九四年から7%減少している。
背景には、産科医の過酷な勤務や訴訟リスクがあるとされ、当直勤務日数が増えていることは、労働環境が悪化していることを具体的に示しているといえる。
県内でも全国的な傾向と同様、産科医が不足している。県立北部病院に産科医がいないため、北部地区から救急車による妊婦の搬送は〇五年から〇七年八月末までに二百二件あり、うち五人が救急車の中で出産したという。
深刻な状況にあることは、沖縄も例外ではない。
出産は時刻を選ばず、不測の事態が起きやすい。産科医は過重労働の中でも、必死になって新しい命のために仕事をしているというのが現状であろう。
産科医不足を解消する“特効薬”はない。まず、現状の慢性的な長時間労働を改善する対策を講じなければ、産科医の数が先細りする懸念は増すばかりだ。
(沖縄タイムス、2007年10月7日)
****** 産経新聞、2007年10月6日
産科勤務医 当直、5日に1回超 医会全国調査 過酷な待遇浮き彫り
産婦人科勤務医の当直回数は、平成18年度は月平均6・3回で、6年前に比べ約30%も増えたことが、日本産婦人科医会(会長・寺尾俊彦浜松医大学長)の全国調査で分かった。単純計算で5日に1回以上の頻度。当直明けでも普段と同じ勤務をこなさなければならない施設が9割以上を占め、当直手当が増額された例もごく一部にとどまった。
産科医の勤務の過酷さと待遇の不十分さがあらためて数字で裏付けられた形で、同医会は今後、改善に向けた具体的提言をまとめるとしている。
調査はお産を取り扱う全国約1300施設が対象で、約800施設(62%)の有効回答を分析した。
当直回数は、12年度に行われた調査では月平均4・7回で、1・6回増加した。同医会は「この数字は小児科や救急と比べても多いのではないか」としている。
当直明けの勤務緩和措置については「なし」が全体の92・5%。国立系の施設(大学病院を除く)では100%、大学病院は97・4%が勤務緩和をしていなかった。
過去1年以内に当直手当を増額した施設は9・4%。妊婦が糖尿病や妊娠高血圧症候群であるなど、リスクが高いお産を扱った施設に加算される「ハイリスク分娩(ぶんべん)管理料」を、一部でも医師に還元した施設は1%にも満たなかった。
調査をまとめた同医会常務理事の中井章人日本医大教授(周産期医学)は「過重労働や労働に見合わない対価などが、産科医やお産施設の不足に拍車をかけている。妊婦の救急搬送に支障が出る一因もここにあるのではないか」としている。
(産経新聞、2007年10月6日)