【問題031~問題040】
問題031 子宮内膜細胞診で正しいのはどれか。
a)内膜細胞の細胞異型のみを評価する。
b)内膜細胞がみられなければ再検査を指示する。
c)細胞診陰性であれば子宮内膜癌は否定できる。
d)疑陽性の場合、内膜組織診は不要である。
e)卵巣癌細胞が検出されることはない。
問題032 わが国の女性10万人あたりの子宮体癌罹患数はどの程度か。
a)1 人未満
b)6~15人
c)106~115人
d)506~515人
e)1006~1015人
問題033 タイプⅡ子宮体癌で正しいのはどれか。
a)肥満
b)閉経後
c)予後良好
d)類内膜腺癌
e)エストロゲン依存性
問題034 子宮体癌の手術進行期分類(取り扱い規約、1996年)で正しいのはどれか。
(1)浸潤が筋層1/2を超えるものはⅠb期である。
(2)頚管腺のみを侵すものはⅡb期である。
(3)腟に転移を認める場合はⅢb期である。
(4)骨盤リンパ節に転移があればⅢc期である。
(5)鼠径リンパ節に転移があればⅣb期である。
a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)
問題035 子宮体癌の手術進行期分類(取り扱い規約、1996年)で正しいのはどれか。
a)腹腔細胞診で陽性であったのでⅠc期とした。
b)卵巣に転移がみられたのでⅡa期とした。
c)大網に径1 cmの転移がみられたのでⅢb期とした。
d)子宮傍結合織浸潤がみられたのでⅢc期とした。
e)傍大動脈リンパ節転移がみられたのでⅣ期とした。
問題036 子宮体癌の治療で正しいのはどれか。
(1)若年女性で類内膜腺癌G1かつⅠa期と予測される場合は子宮温存を考慮する。
(2)傍大動脈リンパ節郭清が長期予後改善に寄与するか否かは不明である。
(3)臨床進行期Ⅱ期の症例に対する腟壁切除の有用性は証明されている。
(4)進行例に対する手術療法の意義は低く、腫瘍減量手術は行うべきでない。
(5)内視鏡下手術は確立しておらず、その適応は慎重に考慮すべきである。
a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)
問題037 子宮体癌の化学療法で正しいのはどれか。
(1)中リスク症例の術後化学療法は放射線療法と同等かそれ以上に有効である。
(2)高リスク症例で術後残存腫瘍2 cm以下の場合に化学療法が推奨される。
(3)アンスラサイクリン系とプラチナ製剤の併用が推奨される。
(4)進行例に対する術前化学療法の有効性が証明されている。
(5)放射線療法後の再発例にはイリノテカンが有用である。
a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)
問題038 子宮体癌化学療法のkey drugはどれか。
a)エトポシド
b)ジェムシタビン
c)アドリアマイシン
d)サイクロフォスファミド
e)5-FU
問題039 子宮内膜増殖症および体癌の治療で誤っているのはどれか。
a)単純型子宮内膜増殖症に対して単純子宮全摘術を施行した。
b)子宮内膜異型増殖症に対して黄体ホルモン療法を施行した。
c)体癌で浸潤が筋層1/2を超えており傍大動脈リンパ節郭清を施行した。
d)体癌で頚部間質に深い浸潤を認めたため広汎子宮全摘出術を施行した。
e)体癌の高リスク例にdoxorubicinとcisplatinによる化学療法を施行した。
問題040 子宮肉腫の治療で正しいのはどれか。
a)第一選択の治療法は手術療法である。
b)標準的手術術式は広汎子宮全摘出術である。
c)進行例に対しては化学療法が有用である。
d)平滑筋肉腫には黄体ホルモン療法が奏功する。
e)低悪性度内膜間質肉腫の5年生存率は50%以下である。
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解答例 (誤答の場合は御指摘ください)
問題031 子宮内膜細胞診で正しいのはどれか。
a)内膜細胞の細胞異型のみを評価する。
b)内膜細胞がみられなければ再検査を指示する。
c)細胞診陰性であれば子宮内膜癌は否定できる。
d)疑陽性の場合、内膜組織診は不要である。
e)卵巣癌細胞が検出されることはない。
解答:b
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問題032 わが国の女性10万人あたりの子宮体癌罹患数はどの程度か。
a)1 人未満
b)6~15人
c)106~115人
d)506~515人
e)1006~1015人
解答:b
子宮体癌は近年増加傾向にあり、推定罹患数は1996年4507人(女性10万人あたり5.7人)、2015年には6623人(女性10万人あたり7.3人)にまで増加すると予測されている。(婦人科腫瘍の臨床病理、改訂第2版、118頁)
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問題033 タイプⅡ子宮体癌で正しいのはどれか。
a)肥満
b)閉経後
c)予後良好
d)類内膜腺癌
e)エストロゲン依存性
解答:b
・Ⅰ型子宮体癌
発生機序:unopposed estrogenの長期持続により、子宮内膜異型増殖症を経由しそれが癌に至るもの
好発年齢:閉経前~閉経早期
頻度:80~90%
病巣周辺の子宮内膜異型増殖症:あり
組織型:類内膜腺癌
分化度:高分化型
筋層浸潤:軽度
予後:比較的良好
遺伝子:K-ras(癌原遺伝子)、PTEN(癌抑制遺伝子)の変異が高率で見られる
・Ⅱ型子宮体癌
発生機序:子宮内膜異型増殖症を介さないで癌化するもの(de novo癌)
好発年齢:閉経後
頻度:10~20%
病巣周辺の子宮内膜異型増殖症:なし
組織型:漿液性腺癌、明細胞癌など
分化度:低分化型
筋層浸潤:高度
予後:不良
遺伝子:p53(癌抑制遺伝子)の変異が高率に見られる
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問題034 子宮体癌の手術進行期分類(取り扱い規約、1996年)で正しいのはどれか。
(1)浸潤が筋層1/2を超えるものはⅠb期である。
(2)頚管腺のみを侵すものはⅡb期である。
(3)腟に転移を認める場合はⅢb期である。
(4)骨盤リンパ節に転移があればⅢc期である。
(5)鼠径リンパ節に転移があればⅣb期である。
a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)
解答:e
子宮体癌の手術進行期分類
0期 子宮内膜異型増殖症
Ⅰ期 癌が子宮体部に限局するもの
Ⅰa 期 子宮内膜に限局するもの
Ⅰb 期 浸潤が子宮筋層1/2以内のもの
Ⅰc 期 浸潤が子宮筋層1/2をこえるもの
Ⅱ期 癌が体部および頸部に及ぶもの
Ⅱa 期 頸管腺のみを侵すもの
Ⅱb 期 頸部間質浸潤のあるもの
Ⅲ期 癌が子宮外に広がるが、小骨盤をこえていないもの、または所属リンパ節転移のあるもの
Ⅲa 期 漿膜ならびに/あるいは付属器を侵す、ならびに/あるいは腹腔細胞診陽性のもの
Ⅲb 期 腟転移のあるもの
Ⅲc 期 骨盤リンパ節ならびに/あるいは傍大動脈リンパ節転移のあるもの
(注:子宮傍結合織浸潤例はⅢc期とする)
Ⅳ期 癌が小骨盤腔をこえているか、明らかに膀胱または腸粘膜を侵すもの
Ⅳa 期 膀胱ならびに/あるいは腸粘膜浸潤のあるもの
Ⅳb 期 腹腔内ならびに/あるいは鼠径リンパ節転移を含む遠隔転移のあるもの
〔分類にあたっての注意事項〕
(1)初回治療として手術がなされなかった例(放射線療法など)には、従来からの臨床進行期分類が適用される。
(2)各期とも腺癌の組織学的分化度により、それぞれ亜分類される。
(3)0期は治療統計に含まれない。FIGOでは0期は設定されていないが、日本産科婦人科学会では従来の分類との整合性により0期を設定した。
(4)所属リンパ節とは、基靭帯リンパ節、仙骨リンパ節、閉鎖リンパ節、内腸骨リンパ節、鼠径上リンパ節、外腸骨リンパ節、総腸骨リンパ節、および傍大動脈リンパ節をいう。
(5)子宮傍結合織浸潤例はⅢc期とする。
(6)本分類は手術後分類であるから、従来Ⅰ期とⅡ期の区別に用いられてきた部位別掻爬などの所見は考慮しない。
(7)子宮筋層の厚さは腫瘍浸潤の部位において測定することが望ましい。
〔子宮体部腺癌の組織学的分化度〕
すべての類内膜癌は腺癌成分の形態によりGrade 1、2、3に分類される。
Grade 1: 充実性増殖の占める割合が腺癌成分の5%以下であるもの
Grade 2: 充実性増殖の占める割合が腺癌成分の6~50%のもの。あるいは充実性増殖の割合が5%以下でも細胞異型の著しく強いもの
Grade 3: 充実性増殖の占める割合が腺癌成分の50%を超えるもの。あるいは充実性増殖の割合が6~50%でも細胞異型の著しく強いもの
〔組織学的分化度に関する注意〕
(1)漿液性腺癌、明細胞腺癌、扁平上皮癌は核異型によりGradeを判定する。
(2)扁平上皮への分化を伴う腺癌のGradeは腺癌成分によって判定する。
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問題035 子宮体癌の手術進行期分類(取り扱い規約、1996年)で正しいのはどれか。
a)腹腔細胞診で陽性であったのでⅠc期とした。
b)卵巣に転移がみられたのでⅡa期とした。
c)大網に径1 cmの転移がみられたのでⅢb期とした。
d)子宮傍結合織浸潤がみられたのでⅢc期とした。
e)傍大動脈リンパ節転移がみられたのでⅣ期とした
解答:d
a)b)Ⅲa 期:漿膜ならびに/あるいは付属器を侵す、ならびに/あるいは腹腔細胞診陽性のもの。
c)Ⅳb 期:腹腔内ならびに/あるいは鼠径リンパ節転移を含む遠隔転移のあるもの。
d)子宮傍結合織浸潤例はⅢc期とする。
e)Ⅲc 期:骨盤リンパ節ならびに/あるいは傍大動脈リンパ節転移のあるもの。
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問題036 子宮体癌の治療で正しいのはどれか。
(1)若年女性で類内膜腺癌G1かつⅠa期と予測される場合は子宮温存を考慮する。
(2)傍大動脈リンパ節郭清が長期予後改善に寄与するか否かは不明である。
(3)臨床進行期Ⅱ期の症例に対する腟壁切除の有用性は証明されている。
(4)進行例に対する手術療法の意義は低く、腫瘍減量手術は行うべきでない。
(5)内視鏡下手術は確立しておらず、その適応は慎重に考慮すべきである。
a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)
解答:b
(2)CQ04:骨盤リンパ節郭清に加えて傍大動脈リンパ節郭清をすることの意義は?推奨:①正確な進行期決定を可能にする(グレードA)。②傍大動脈リンパ節郭清の治療的な意義は確立されていない(グレードC)。【子宮体癌治療ガイドライン2006、p28】
(4)CQ29:肉眼的な骨盤外腹腔内進展例に対し、腫瘍減量手術の治療的意義は?推奨:腫瘍減量手術を行うことにより、予後を改善し得る可能性がある(グレードC)。【子宮体癌治療ガイドライン2006、p94】
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問題037 子宮体癌の化学療法で正しいのはどれか。
(1)中リスク症例の術後化学療法は放射線療法と同等かそれ以上に有効である。
(2)高リスク症例で術後残存腫瘍2 cm以下の場合に化学療法が推奨される。
(3)アンスラサイクリン系とプラチナ製剤の併用が推奨される。
(4)進行例に対する術前化学療法の有効性が証明されている。
(5)放射線療法後の再発例にはイリノテカンが有用である。
a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)
解答:a
CQ21:術後補助化学療法は有効性が確立されているのか?推奨:①低リスク症例に対する術後補助化学療法は奨められない(グレードC)。②中リスク症例に対する術後補助化学療法は、放射線治療と同等あるいはそれ以上に有効である可能性がある(グレードC)。③高リスク症例術後残存腫瘍2cm以下の症例に対して、術後化学療法を行うことが奨められる(グレードB)。【子宮体癌治療ガイドライン2006、p74】
CQ22:術後補助化学療法を行う場合にはどのような薬剤が推奨されるか?推奨:①アンスラサイクリン系とプラチナ製剤を含む薬剤の選択が奨められる(グレードB)。②タキサン系薬剤も併用されているが、その十分な根拠は得られていない(グレードC)。【子宮体癌治療ガイドライン2006、p76】
CQ30:術前化学療法や術前放射線療法は有効か?推奨:①術前化学療法は推奨されない(グレードD)。②子宮頸部に明らかな浸潤がある場合に術前放射線療法が用いられることがある(グレードC)。【子宮体癌治療ガイドライン2006、p96】
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問題038 子宮体癌化学療法のkey drugはどれか。
a)エトポシド
b)ジェムシタビン
c)アドリアマイシン
d)サイクロフォスファミド
e)5-FU
解答:c
アドリアマイシンは子宮体癌に対するkey drugであり、単剤での効果は17%~26%である。
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問題039 子宮内膜増殖症および体癌の治療で誤っているのはどれか。
a)単純型子宮内膜増殖症に対して単純子宮全摘術を施行した。
b)子宮内膜異型増殖症に対して黄体ホルモン療法を施行した。
c)体癌で浸潤が筋層1/2を超えており傍大動脈リンパ節郭清を施行した。
d)体癌で頚部間質に深い浸潤を認めたため広汎子宮全摘出術を施行した。
e)体癌の高リスク例にdoxorubicinとcisplatinによる化学療法を施行した。
解答:a
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問題040 子宮肉腫の治療で正しいのはどれか。
a)第一選択の治療法は手術療法である。
b)標準的手術術式は広汎子宮全摘出術である。
c)進行例に対しては化学療法が有用である。
d)平滑筋肉腫には黄体ホルモン療法が奏功する。
e)低悪性度内膜間質肉腫の5年生存率は50%以下である
解答:a
a)b)子宮肉腫の治療の第1選択は手術療法であり、一般に標準的術式として単純子宮全摘出術、両側付属器切除、骨盤および傍大動脈の選択的リンパ節切除術が行われる。
c)術後の放射線療法あるいは化学療法によるアジュバント療法の有効性については不明である。
e)低悪性度子宮内膜間質肉腫の予後は比較的よく、Ⅰ、Ⅱ期では80%以上の5年生存率が期待できる。子宮内膜間質肉腫にはMPAによる内分泌療法も行われる。