ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

2年半で22病院が35診療科を休廃止/長野

2007年10月30日 | 地域医療

コメント(私見):

最近、勤務医不足が急速に進行し、産婦人科など非常に多くの診療科が次々に休止もしくは廃止に追い込まれている実態が、長野県衛生部より公表されました。

状況が好転する要素はなかなかみつけられないので、現在の診療科休廃止の連鎖は、今後まだまだしばらくは続くことも十分に予想されます。

いったん休廃止に追い込まれてしまった診療科を、また一から立ち上げて軌道に乗せるのは並大抵の事ではありません。

診療科の休廃止を回避するためには、現時点における科の常勤医師数で、無理なく、余裕を持って業務を継続できる程度に、科全体の業務量を厳しく制限することが重要だと思います。

****** 毎日新聞、2007年10月28日

2年半で22病院が35診療科を休廃止/長野

医師不足、急速に進行

 県内22の病院が05年4月から2年半の間に、産婦人科など35の診療科を休止もしくは廃止していたことが、県衛生部の調べで明らかになった。大半の病院が常勤医の退職など医師不足を理由に挙げている。入院の受け入れや夜間のみの休止など診療体制の縮小も合わせると、影響は27病院にも上る。休廃止の時期は今年4月からの半年間が最も多く、県内で医師不足が急速に進行していることが浮き彫りになっている。【神崎修一】

 県衛生部が保健所を通じ、今年9月時点の状況をまとめた。対象は病院だけで診療所は含まない。休廃止の内訳は、産婦人科・産科が11で最多。小児科・小児外科が4、整形外科が3と続く。麻酔科、眼科、循環器科もそれぞれ二つ休廃止された。休廃止の時期は4月からの半年間が最も多く、8病院11診療科にも及んだ。

 休廃止の理由は「2人いた常勤医師の1人が退職した」(下伊那赤十字)など医師不足を理由に挙げる病院が多い。医師不足は04年度からの新しい研修制度の影響で、医師が減った大学医局が医師を引き揚げたことが原因とされる。勤務がきつく、リスクを伴うことが多い産婦人科などが敬遠されていることも要因だ。

 休廃止や縮小した27の病院を地域別にみると、中信が最多の8。東信7、北信と南信の6と続き、県内全域に影響が及んでいる。このほか、県内では須坂市の県立須坂病院と駒ケ根市の昭和伊南総合病院が、来年4月から分娩(ぶんべん)の休止を予定。大町市の市立大町総合病院も、医師退職の影響で来年4月からの内科縮小を明らかにしている。

 県は特に深刻な小児科医、産科医不足を受け、「産科・小児科医療対策検討会」を設置。同委は今年3月に「医療資源の集約化、重点化が必要」との提言をまとめた。各医療圏の中心病院を「連携強化病院」とし、産科9病院、小児科10病院を指定。医師不足が生じた場合には連携強化病院に優先的に医師を配置することにしている。

 3人いた常勤医師が1人に減ったため、06年4月から産婦人科で分娩の扱いを休止している安曇野赤十字病院(安曇野市)。外来診療は継続されているものの、分娩再開のメドは立っていない。同病院の青山守事務部長は「深夜の対応などを考えると、最低でも3人の産科医が必要。1人の医師でお産を扱うのは難しい」と話す。

 同病院では医師を紹介する民間企業などを通じて、医師を探しているが、現状は厳しい。青山事務部長は「人材は大都市、大病院へ向いている」と漏らす。また、今年4月から分娩を休止中の別の病院関係者も「何とか医師を確保したいが、大学にすら医者がいない」と嘆く。

 厳しい現状の中で、医師確保に成功した病院もある。佐久市立浅間総合病院は、新たに常勤の産婦人科医1人を確保できた。これまで月28人としていた分娩の受け入れ制限を11月から解除する。来年5月までの分娩予約が既にいっぱいになるなど、反響は大きい。佐々木茂夫事務長は「少しでも市民の要望に応えたかった。医師に私たちの熱い思いが伝わったのでは」と振り返った。

 一方、26日の定例会見で県内の医師不足について言及した村井仁知事。「あの手この手と一生懸命やっている。何とか成果を出したいし、非常に焦燥感も持っている」と危機感を募らせている。

(以下略)

(毎日新聞、2007年10月28日)