月の岩戸

世界はキラキラおもちゃ箱・別館
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コカブ・21

2021-03-21 05:38:38 | 詩集・瑠璃の籠

じぶんではない
じぶんを生きていて
何が楽しいのですか

そのじぶんは
愛ではない
愛のかたちを盗んだ
嘘なのです

上手にまねをすればするほど
あほうになる
むなしい夢なのです

あなたはじぶんがいやだった
じぶんはいいことなど何もない
馬鹿にしか見えなかったから
だからじぶんよりもずっとよく見える
他人になりたかったのだ

それが馬鹿だったのだと
わかるころになっても
あなたはまだ嘘をはなせない
はなしたら
嘘から生えた夢の山が
全部くずれてくるから

かわいそうに
じぶんではない
じぶんを生きながら
愛のふりをした
嘘を演じながら
あなたはだんだんと
しぼんでゆく

神の創られた
愛の庭から
転げ落ちてゆく

本当の自分こそが
愛なのです
愛のふりなどしなくても
もとから美しい
それは真実なのに

あなたは自ら
それを捨てたのです




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ミネラウヴァ・32

2021-03-20 05:27:11 | 詩集・瑠璃の籠

人はよく
世界で一番偉い神
宇宙で一番偉い神
などというものを考えたがりますが
事実上そういう神は
ありません

何よりもだれよりも偉い
ただ一つの神というものは
だれよりも自分が一番大事だという
人間の小さなエゴに発した
幻なのです

実在の神は
星の数ほどもたくさんいらっしゃり
それぞれが美しい自主独立の存在であり
愛で結ばれ
助け合い協力し合いながら
あらゆる創造をなしていく
すばらしい存在なのです

唯一の神というものに
隠喩すべきふさわしいものがあるとすれば
それは愛のみです
愛こそが全宇宙の共通語であり
すべての存在を真実の幸福に導く
道なのです

あらゆる存在は
愛という太陽をめぐる
美しい惑星なのです
神も人も天使も
すべての存在は
愛の申し子なのです

自分というものは
すべてが愛なのです

一番偉い神などというものを
たてまつって
孤独な自分を武装してはいけません
愛に心開き
すべてを愛のためにやりなさい
あらゆるものの幸福のために
全存在をかけて働きなさい

それこそが
すべての愛の存在の
真実の幸福なのです




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アークトゥルス・50

2021-03-19 05:38:32 | 詩集・瑠璃の籠

永遠の砂漠を泳ぐ
青いめくらの魚よ

神の悲しみの涙が
おまえのために
沈黙の山から噴火する

神が与えた水晶のまなこを
おまえは自分で捨てたのだ
もう二度と
真実を見るのは嫌だと

めしいの闇の中に
幻想の黄金をまき
小便の酒をなめながら
おまえは永遠に
しびれる苦悩の中に
住むことを決めたのだ

永遠の砂漠を泳ぐ
青いめくらの魚よ

日照りにかわいていく骨を
小便で濡らしながら
忘れるために費やした時間を
はてしない砂丘の中に幻視する
おまえの痛みに
神が泣いていることに
気づかないのか

絶望の淵に
おまえが捨てた
水晶のまなこの中から
生えてくるあえかな光の草を
涙でかきたてようとする
神の悲しいためいきに
いつまで
聞こえないふりをするのか




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セギン・27

2021-03-18 05:32:12 | 詩集・瑠璃の籠

遠いまぼろしの宮に
水晶のように透き通った
塩の女神がすむという

なりたかった自分という名の
美しい馬鹿がすむという

煮えたぎる鍋の湯の中に
嘘と本当を練り混ぜて
砂糖と香辛料を
山ほど入れて
一粒の金平糖を作った

それを食べれば
嘘が本当になるという
汚らわしい毒を

愚か者よ
愚か者よ

神が創ってくださった
おまえの青銅の足が
砂糖菓子のように折れていく

おまえの心臓に住んでいた
銀の声で鳴く小鳥が
ただれて死んでいく

もう二度とは
元に戻れない




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アルヤ・54

2021-03-17 05:31:29 | 詩集・瑠璃の籠

沈みゆくガラスの船にとりすがり
神の声を吹くあしたの笛に
耳を背ける者よ
もうそろそろやめなさい

あなたの足の底から
自分が散り破れていく音が
少しも聞こえないわけでもあるまいに

嘘で塗り固めた
黄金の天使のマスクが
あなたの本当の顔を
煮え殺していることに
気づかないのか

嘘が本当になるまじないなど
ないと知っていながら
毎日のように唱える
架空の呪文が
あなたの舌先で腐ってゆく
もうやめなさい

ガラスの船は沈んでゆく
これこそが真実だと叫ぶ
おそろしい偽神の幻を
信者のひとみに描きながら

もうやめなさい
もうわかっているはずだ
すべては
間違っていた自分を
許すために作った
愚か者の舞台だったことが




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カノープス・55

2021-03-16 06:19:52 | 詩集・瑠璃の籠

象牙の舞台の上で
白鳥から盗んだ脚本を演じている
馬鹿な女よ

こんなことはみんな嘘だと
気づいている自分をだまして
白鳥の真似をしている自分が
馬鹿らしくはないのか

あなたは千年に一度の女優だと
象牙の舞台を支えている
大勢のフクロネズミの追従を
まるごと信じているわけでもあるまい

愛の姿を盗んだ
狸になっている自分が
偽物の白鳥の羽根の下で
かゆくてたまらない
このままでは
自分で自分に
アレルギーを起こしてしまう

魚の腹を開くように
すっきりと自分を開いて
真裸の本当の自分に
戻っていきたくはないのか

そんなことをすれば
舞台を支えている
大勢のフクロネズミが
みんな噛みついてくる

馬鹿な女よ
象牙の舞台の上で
永遠に
盗んだ白鳥の羽根をかぶり
アレルギーを薬でごまかしながら
生きていくつもりなのか




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エダシク・14

2021-03-15 05:42:04 | 詩集・瑠璃の籠

金色の蛹を首に下げて
美しい羽化を夢見る旅人よ
道は
お前が思うほど簡単ではない

壁のような逆風が
お前を打つだろう
蜃気楼のような森が
一筋の理想の道を
覆い隠すだろう
暗い情念をこねながら
小言ばかりを言う偽物の母親が
お前の前に立ちふさがるだろう

山のように積もった
蛍の死骸の上の
玉座に横たわる
偽物の聖者を助けるために
生涯をかけねばならないだろう

それでもおまえは
いかねばならぬ
美しいこの星の
虹色の羽化の夢を
捨てることなど
できるはずがないからだ




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プルケリマ・25

2021-03-14 05:36:54 | 詩集・瑠璃の籠

閉じた真空の矛盾の中で
ゆらいでいた背骨が
ふとおのれを捨てた時
火花のような閃光が
宇宙にはねあがる

黒熊のような闇が
もくもくとひっていた糞を食べて
黄金の夢を見ていた獏が
琴のつるのように弾かれて
突然目を覚ます

岩屋の中に憩う
天使の夢から生えた
大きな楠の金色の実が
世界にふりしきるのだ

偽神を映すブラウン管の
小さな真空管の中で
小鳥の悪口を言う馬鹿者は
首がさかさまになる不思議な病の中に
とじこまれていくだろう

生まれ変わった星の
産声を抱きながら
目を覚ました人々は
満点の星を見上げる

億年の間待っていた
永遠の愛の抱擁の手が
空に広げられている




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アンタレス・36

2021-03-13 05:34:08 | 詩集・瑠璃の籠

青白い嘘のひれを
まといながら
小鳥のたましいのように
樹上に踊るおまえよ
その自分は楽しいか


小鳥の王の冠から
宝石を一つ盗み
えらくはぶりのいい暮らしをした
その自分を
記憶の墓場に隠し
神の恵みに酔いしれる
無垢な小鳥のたましいのふりをする
おまえよ
その自分は嬉しいか

謀略に生えた
きのこの群れが
雨のように浴びせる
称賛の声が
嬉しいか

冷えた血の声を
自分の中に聞く
これはみんな嘘だと
知っている自分を
永遠にごまかせる
魔法などない

矛盾にねじれていく
背骨のきしむ音を聞きながら
美しい小鳥のたましいのように
樹上に踊るおまえよ
それがおまえの
永遠の幸せなのか




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ヴィンデミアトリックス・46

2021-03-12 05:43:30 | 詩集・瑠璃の籠

おまえが後生大事に抱いている
偽物の縄文の壺の中には
おまえの罪がたっぷりと潜んでいる

ゆるぎない愛を歌う天使の
大きな足を豚の穴に落とそうとして
夜中に掘り起こした土が
腐るほどためこまれている

罪の雨が
嵐のように 
あふれてくる日も近い
遠い昔に語った嘘が
はさみのように
自分をちょん切る日も近い

偽物の縄文の壺は
死骸のように膨らんで
おまえの手の中で
今にも爆発しそうだ

かわいそうな愚か者よ
まだ
神に謝る気にはならないのか
いつまでも
忘れたい罪を抱いて
蛇の子宮の中に
隠れているだけなのか




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