今回はジャズの話です。
999円と安かったこともあって、Earl Anderza, Outa SightというCDを買いました。EMIミュージック・ジャパンでは「天才アール・アンダーザ」という邦題を付けていますが、オリジナルはパシフィック・ジャズから出ていました。このCDのことは、数年前に購入した『ジャズ・サックス』(シンコー・ミュージック)で知りました。
最初の曲であるAll The Things You Areを聴いた瞬間、「惜しい人もいたものだ」と思いました。曲のテーマは普通にアルトサックスを吹いているのですが、アドリブに入ると、いきなりフリーキーな音が飛んできます。一瞬、あのエリック・ドルフィーか、はたまたフリー・ジャズかと思わせるような音なのです。ドルフィーと共演をしたケン・マッキンタイヤはどんな音だったかなと考えたのですが、思い浮かびません。オーネット・コールマンとも違います。そもそも、アドリブはビ・バップそのものと言ってもよいほどで、ドルフィーのようなソロではないのです。ドルフィーならば、敢えてコード進行を無視したような無調のラインとなりますし、高音と低音が交互に飛び交ったりするでしょう。
このCDの演奏が録音されたのは1962年3月だそうですが、どこで録音されたのかは書かれていません。実は、当時、アンダーザは麻薬中毒のためにサン・クエンティン刑務所に収監されていました。そのような状態で初の、しかも唯一のリーダー作を残した訳です。また、彼がサイドマンとして参加した録音もほとんどないようです。
麻薬で人生を棒に振るようなことがなければ、彼のスタイルはもっと注目され、何枚もリーダー作を残したでしょう。それだけでなく、ジャズの一つのスタイルとして別の方向性を開いたかもしれません。だから「惜しい人もいたものだ」と思うのです。
また、このCDで面白いのは、ジャック・ウィルソン(Jack Wilson)が数曲でハープシコードを弾いている点です。ジャズに合うのかどうかと疑わしくなりますが、2曲目のBlues Baroque(これはアンダーザのオリジナル)ではスチール弦のギターをかき鳴らしているかのような部分もあり、「なるほど」と感心しました。この曲の中のアンダーザのソロは、このCDの中では最もドルフィーに近いかもしれません。突飛にも聞こえる音の使い方はよく似ています。それほどに、ブルースの枠を超えているかのようなソロです。私が大学生時代から好きな曲、Chasin' the Traneでのコルトレーン(John Coltrane)のソロも、ブルースの枠からはみ出ていますが、全く別の種類の超え方です。
ただ、全体を通じて、フリーキーな音が使われるものの、バップの範疇に留まっていますので、聴き易いと言えます。少し毛色の変わったジャズを聴きたいという方にはおすすめですし、「別にそんなジャズは聴きたくない」と思われる方であってもおすすめします。面白いCDですから。
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