漢方薬剤師の日々・自然の恵みと共に

漢方家ファインエンドー薬局(千葉県)
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宮本輝の「星宿海への道」

2005-10-07 | 
9月に急性腰痛症を患って寝込んでいる間に読書にはまってしまった。
ぎっくり腰

普段見向きもしない岩波新書の外国人作家をうろうろしてみたけど、島国育ちの中年日本人にはどうもしっくりこない。

で、ひさしぶりに”違いがわかる男”宮本輝に再会したら、昔より涙もろくなったのか、もろ琴線に触れまくり、心からしみじみしてしまいました。

星が宿る海と書く場所は黄河の源流らしく、それは星のようにたくさんの湖が寄せ集まっているのか、満天の星が写るほど美しい場所なのか、とにかく宮本の表現にうっとりと想像世界が広がる。
そして「異族」という言葉に強く興味を示した男は、新疆ウイグル自治区のある場所で自転車に乗ったまま姿を消してしまう。
いや~、まるでNHKbsの世界だ~。

そしてそのなぞを解き明かそうと、男の弟や男の子供を生んだ女性など次々と登場する人物たちが、男の幼い頃からの切ない人生を明らかにしてゆくんだけど、
昭和30年代から現在にいたるまでの紆余曲折した日本の様子が見事に描かれて、懐かしさに浸っちゃうんです。

でも「懐かしさ」という感覚だけじゃけっしてない。
男のことが、周りの人々にとって気がつけば、なにも残っていない空気のような生き方をしてきたその男の生き様に、じわ~っと感動するんだよね。
そして周りの人々の生き方にも・・・
心の闇を背負いながら、たまらなく孤独のようでも、出会った人と敏感に心を共鳴させながら暮らしてる・・・切なくてもいつもぽっと希望がある・・・人間ってそんな柔軟性がある。