「兄弟は他人のはじまり」って言うけど、まったく他人だったらここまで深くお互いを意識することもなく、傷つけることもないかもしれない。
けっして他人じゃない分、良好な関係を保とうと、よけい気をつかうし、小さなことにもすごく嫉妬したりする。
そうなりたくないから、離れて暮らしていたのかもしれない弟「猛」。
その距離感が平穏を保っていたのかもしれない。
しかし、
母親の葬儀にめずらしく帰郷した弟に、やたら気をつかう兄「稔」。
そして、あのつり橋の事件。
つり橋から知恵子を
落とした? 兄は知恵子を突き落とした?
落ちそうになった? 兄は知恵子を救おうと手を差し伸べた?
遠くからその状況を目撃したのは弟、猛。
つり橋に駆けつけた弟は、兄の腕にひきづるように付いた指の後をまるで隠すように、兄のシャツの袖を下げる。あとにして思えば、このときの猛の気持ちは、どうだったのか?
その後の裁判シーンの兄、稔(香川照之)の微妙なセリフが見ものです。
「知恵子さんは、ぼくのことをどうも生理的に嫌いだったみたいで・・・」
なんて淡々と語るか?
いったい、その状況説明って本当?
始めは、かわいそうな実直な人と同情していたのに、だんだん彼がわからなくなる。
そして拘束中の兄の面接に訪れた弟、猛(オダギリジョー)とのやりとりも・・・
兄が落ち込んでいると、心底救ってやりたいと思う猛なのに、「ガソリンスタンドを改装しようと思う、ステキだろう・・・」と稔がちょっとえらそうに言うと、とたんに彼は、反発心が芽生えたようだ。そしてせっかくの面接に喧嘩別れしてしまう。
その翌日は、猛が証人として立った・・・
兄弟って、なんと危うくて残酷な関係なんだろう。
下手すれば、一生憎みあう関係に陥ってしまうかもしれない。
しかし、それでも修復できたりするのが、兄弟という不思議な関係らしい。監督西川美和さん、フランソワ・オゾンばりの濃い内容で、観る者の兄弟感や血縁感をえぐられる作品です。
親戚が集まったときのあの会話、「あるある」って感じでした。
どうして血縁ってこんなに難しいんでしょうね。それから智恵子の豹変ぶり。これも「あるある」
自分の恥部をみせられるような感じでした。
女のストレートさは、男とまったく違うものですね。
姉妹だったらまた違ったストーリーが展開したのかも・・・音楽もベースが効いて小気味よかったです。
監督 : 西川美和
出演 : オダギリジョー 、 香川照之 、 伊武雅刀 、 新井浩文 、 真木よう子 ★★★★☆