漢方薬剤師の日々・自然の恵みと共に

漢方家ファインエンドー薬局(千葉県)
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梨木香歩著「f 植物園の巣穴」覚書

2011-11-15 | 
ブックオフで偶然見つけてしまった。
美しい表紙、植物、梨木香歩、文句なしのお気に入りトライアングルや~。
敬愛する梨木さん、半額で買うけどごめんなさい。


久しぶりに味わう梨木ワールドの異空間。
いったいどこからが、椋(ムク)の木の「巣穴」に落ちた話なのか判然としないまま、
頭の中では不思議の国のアリスのようにさまよう。
そして最後に「あの千代」登場の「現実」にあっと驚いた。
やられた。
すぐさま最初からまた読み直した。
weblio辞書より「犬雁足」

「男ってのはねえ」

「これに(オオバコの葉)死んだカエルを包むと本当に生き返るのですか」

「一般常識!一般常識!」

初読ではただ不思議で意味不明だった妙な会話内容が、読み返してみると、
込められた深い意味とその痛さが沁みる。
weblio辞書より「月下香」

芋虫がさなぎとなりやがて蝶に至る変態の描写は驚きに満ちている。
そして巣穴に落ちた彼は、幼いころへと「逆行の変態」を遂げながら、
「未来のために」と封じ込めたつもりの悲しい記憶を思い出す。

辛い思い出を無理やり消し去って都合のいい記憶に変えてしまっている
ことってあるのかもしれない。
その都合のいい記憶の仕方が「男ってのはねえ」という千代の言葉につながる。
しかし真実の記憶に向かい合い受け入れなければ、未来へは進めないのかもしれない。
weblio辞書より「ムジナモ」貉のシッポみたいな食虫植物
不思議なカエル小僧に、父親として命名したシーンは涙がでた。

2度3度読み返したい。
梨木さんの本は何度読み返しても飽きない。
声を出して読みたくなる。
次々と登場する植物の姿を知っているとイメージのふくらみが倍増する。

梨木香歩 1959年鹿児島生まれ 


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4 コメント

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家守綺譚 (mi~ya)
2011-11-18 00:07:55
本ネタと映画ネタだと食いついて来るmi~yaです(笑)
(更年期の私に1番必要なのは漢方のような気がしてるんですが…)
梨木香歩、実は女性作家って桐野夏生くらいしか読まないので、森絵都と区別がついてない可能性もありますが、「家守綺譚」は読みました。とても面白かったです。その系列のようですね。
怖いのは苦手なんですが、これは不思議な世界といっても自然や植物や動物がちゃんと書けてるためか、マンガチックにならないところが好きです。
あっ漫画でも「百鬼夜行抄」なんかは相通じるものがありますね。
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mi~yaさんへ (やく)
2011-11-18 11:29:26
「食いついて」くださってありがとうございます
おまけにmi~yaさんのコメント中には私が食いつきたいものが複数!

梨木さんには「家守綺譚」でがっちり取りついたのです。
その続編ともいえる「村上エフェンディ滞土録」も好きでした。「巣穴」もまさにその系列です。
森絵都さん譲りたくない作者のひとり。

私は女性作家ばかり選んでしまうけど、先日のジェノサイドもすごく面白かったしおかげで新しい分野が開けた気分でした。
桐野さん、挑戦してみます。それから「百鬼夜行抄」、おお、いそがし。

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Unknown (mi~ya)
2011-11-20 12:32:47
「百鬼夜行抄」は同じテイストと思われますが、桐野夏生はどうかなぁ~??
実は以前、森絵都と梨木香歩好きな読書の友(?)に勧めたら、読んだ後、拒否反応が帰ってきました。勧めたのは個人的には桐野作品のベストと思う「柔らかな頬」でしたが、私も主人公には共感できないんですよ。でも読み終えるときに「彼らとの旅」が終わってしまうことをこれほど名残惜しくなる本はめったにない体験でした。まあ北海道が舞台っていうのもあるんですけど。
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mi~yaさんへ (やく)
2011-11-21 11:42:32
なるほど、なるほど。
人の感性は本当に違いますものね。
映画評論家の今年のベスト10とかを見てもそう思います。
それぞれ、人生の中の記憶に触れる部分が異なるのでしょうね。

先日その「百鬼」を注文しようと思ってネットをうろうろしていたら、まったく違う本を購入することになってしまいました。
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