新型コロナが脅威なのはほぼ人間だけで、その人間が行動自粛したお陰で地球環境は改善し、鳥や魚は大いに喜んでいた、という作者。
これまで忙しく全国各地を飛び回り数学を語る生活が一変した2020年春以降、約一年間の日記。
その日々の素直な言葉に共感した。私が好む漢方の中医学と同じ世界観だった。
おびただしく多様な時間と空間の「尺度」があり、人間の尺度がいちばん偉いわけではないことに気づいていること(「エコロジカルな自覚」ティモシー・モートン)
「何をしても間違っている可能性があるくらい、この世は生態学的に豊かなのである」
「人間の知恵で思いつくことなど所詮、風に揺れる木の葉にも及ばない。まずは自分でないものに耳を傾け、謙虚に、観察してみること。」
「いまほど世界中で子どもたちが、人間ばかりと接触している時代はない。」
「自分が何に依存して生きているかを把握すれば、自分の存在が、まるで毛細血管のように地球生命圏全体にしみわたっていることを発見する」
「食べることは、食べられたものに置き換わる過程である。えんどう豆を食べリンゴを食べ魚を食べるときには、えんどう豆やリンゴや魚を構成していた分子が、それまで自分を構成していた分子と置き換わる。さっきまでえんどう豆だったものが僕になる」
「僕たちは弱く、悲しく、しかしだからこそ他者と呼応し、響き合うことができる存在として、」
「未来についてたしかなことは、今の自分が、自分ではなくなること、滅びてなくなるのではなく、果てしなく翻訳(translation)をかさねながら、いつしか自分の知らない何者かに生まれ変わっていく」
いまや農業排水(化学肥料や農薬)が海を汚染している。単一農業の危険性。
僕たちはどう生きるか 2021年9月発行
言葉と思考のエコロジカルな転回
森田真生(もりたまさお) 著 1985年東京都生まれ
京都府在住 独立研究家 鹿谷庵