中医学でいうところの「腎」の概念は、西洋医学の腎臓だけでなく、生命を維持する様々なものを総括した生命力といったところに及ぶので、なかなかイメージしずらいかもしれませんね。
臓器の腎臓の働きだけを上げても、尿をつくる(老廃物の除去)他に、ミネラルバランスを調整し、細胞内外の水系をコントロールし、血圧の調整や造血の働きもあるし、骨代謝にも関係しています。副腎ではホルモンの分泌もやってくれます。
さらに中医学の「腎」は、腎臓、骨、骨髄から脳に及び、ホルモン分泌を刺激する物質を血液に載せて副腎、子宮、卵巣、睾丸などに届けます。これにより生殖、成長、発育をつかさどり、自律神経系をコントロールして酸素や二酸化炭素や水素などなどエネルギー代謝のすべてを担っていてるのです。
そして「腎虚」になった時の指標は「髪、耳、二陰」。
脱毛、耳鳴り難聴、生殖の衰え、排尿排便力の衰えです。ほかに足腰の衰え、老眼などもあります。巷でも「それは年のせいだね」と言われる症状ですね。
つまり「年のせいでしかたないよ」とか「まだ若いのになぜ?」という症状を何とかしたいと思ったら「補腎」するのです。
生命力のもと腎精は、親から授かった生命力(先天の精)に、日々の養生によって補われる生命力(後天の精)を注ぎ足しながら命を繋いでいると考えます。
後天の精を上手に補えば、いつまでも元気で過ごすことができるのです。この漢方薬が「補腎剤」です。
補腎剤の基本処方は六味丸で、よく宣伝している八味地黄丸は六味丸に附子と桂皮を加えたもので、冷え性体質の腎虚(腎陽虚)の人に向いています。
さらに、「精血同源」と言って血を作り出すものによって腎精を充実でき、「血肉有情」つまり動物性のものを摂ると精血が養われると言われます。たとえば鹿茸や紫河車、冬虫夏草などです。
どれを用いるかは体質によって異なりますので、補腎剤の選択は、よくご相談になって決めたほうが良いでしょう。