日本政府は、6月から入国時検査を免除する代わりに、全ての入国者(含む日本人)は、出国前72時間以内に検査を受け、医療機関により発行された陰性の検査証明書を入国時に、検疫所へ提示する必要があり、提示できない場合は、入国できないという制度を導入した。証明書を所持していないと航空機への搭乗が拒否されるというから、やっかいな制度ある。
外国人旅行者あれば、出発前に自国で検査を受け、陰性証明書を得ればいいだけなので、あまり問題はないが、日本人旅行者の場合、帰国にあたって、馴染みのない出発国で、PCR検査が受けられる医療機関を自分で探し、出発72時間以内に検査を受け、日本政府の要求する陰性証明書を取得する必要があり、極めてハードルが高い。団体旅行であれば、旅行会社が一括して検査、証明書発行の手配をしてくれるものと思われるが、個人旅行の場合は、すべて自分で慣れない土地で、医療機関を探し、検査を受け、陰性証明書を取得するということは簡単なことではなく、旅行者への負担は過大である。
日本政府は、証明書に関して、記載の必須項目、検体採取のタイミング、有効な検体、有効な検査方法について、細かく規定しており、素人の旅行者にとっては、高いハードルとなる。どうやって、PCR検査をやってくれる医療機関を旅行前に調べ、検査の予約を手配するのであろうか? どれだけ個人の旅行者にとって負担となるか日本政府は理解しているのであろうか?政府は、水際対策コールセンターなるものを設置して相談に乗っているようだが、電話はつながりにくいばかりか、スタッフの医療知識は素人程度で、検査の内容について質問しても的確に回答できないというお粗末ぶりである。
自分の場合、8月にタイのチェンマイで検査を受けようと計画しているが、何とか検査をやってくれる病院を探し当て、検査の情報を得つつある。病院によると、検査には、RT-PCR Test とAntibody Rapid TestのパッケージとRT-PCR Testだけのパッケージがあるとの情報が提供されたので、コールセンターに訊いてみたところ、的確なアドバイスはもらえず、自分で病院に問合せてほしいなど不親切な回答に終始していた。コールセンターにはドクター等専門家がいない感じであった。RT-PCRの意味を訊いたが、全く答えられず。どうも RTとは、Reverse Transcriptionの略で、ウィルスのRNAからDNAを合成してPCR法にて増幅、検出する方法のようである。コールセンターの女性は、全く知識をもっていなかった。
PCR検査はまだ受けたこともないが、医学的知識のない素人にとっては、どんな検査か理解するのはあまりにも難しい。そんな検査を見知らぬ土地の医療機関とやり取りして、証明書をもらってこいというのは、あまりにも無責任で過大な要求である。少なくとも、英語が出来ない人にとっては、証明書の取得はまず無理であると感じた。厚労省によるコロナ対応には、前から疑問を持っていたが、いざ海外旅行解禁となろうとしているこのタイミングでの理不尽な要求は、海外旅行の復活に水をさす結果となっている。旅先での証明書を苦労して取得する位なら、日本入国の際、各空港で検査を受けるほうがはるかに楽だし、合理的である。
この制度は、日本にやってくる外国人に適用するのは、出国前に自国でやることになるのであまり問題ないが、海外旅行から帰国する日本人旅行者に適用するのは大きな問題である。72時間以内の検査と限定しているので、乗り継ぎをして帰国する人や週明けに帰国する人は土日がかかる問題もある。検査をしても証明書発行に数日かかる場合もある。見知らぬ旅先での医療機関を探して検査、証明書を取得するというのは、普通の旅行者にとっては、ハードルが高すぎる。国際電話や英語でのメールのやりとりを事前にやれというのであろうか?ちなみに、バンコクの大使館に医療機関を問い合わせてみたが、物凄い数の病院を紹介するだけで、PCR検査可能な病院のリストすら持っていなかった。自分で探せというのは、無責任極まりない。
それに、もし検査で陽性が判明した場合、見知らぬ土地でどうしたらいいのか途方に暮れる。飛行機に搭乗できないことから、チケットもパーになってしまう。どう見ても現地での検査は弊害が大きい。日本入国時の検査であれば、陽性と判定されても、対応ができると思うが、政府として、現地で路頭に迷う邦人に対し、どうサポートしてくれるのであろうか?
こんな制度を導入するなら、日本政府は、世界中の大使館ともっと連携すべきであり、邦人のサポートにもっと力を入れるべきである。少なくとも海外旅行から帰国する日本人については、入国時に空港で検査する方法に戻してほしいものである。空港で検査結果に若干の時間待たされるほうがはるかにましである。立案する官僚たちは、旅先での検査、証明書の取得がどれだけ大変であるか、万一陽性判定となった場合の対処方法、問題点について何ら認識していないようにみえる。いざ自分にあてはめて考えてみたら、いかに大変なことを邦人旅行者に押しつけているかを実感するはずである。マスコミも問題点を取り上げるべきと感じる。