Fさんの日々の記録と山歩き

 山歩きが生き甲斐の団塊世代オッサン、ある事無い事日々感ずるままに綴っていこうと思います。

15年前登ったモンブラン登山

2013年11月27日 | 山歩き

平成10年8月8日~8月15日

 

 今は山に行けないので15年前に登ったモンブラン登山について振り返ってみます。その頃仕事で出世コースとは無縁だった私は、職場で嫌な顔されながらも厚かましく9日間の休暇をとりアルパインツアーサービス社のモンブラン登山ツアーに申し込んだ。私にとってこれが初の海外旅行でもあった。参加者は12~13名いた。(記憶が不鮮明?)飛行機は成田~香港~ヒースローを経由してジュネーブに着いた。シャモニーまではバスで移動した。

  1日目はル・ブレヴァン展望台までロープウェーで上りアルプスの大景観を堪能する。初めて見るボソン氷河の威容と聳え立つモンブランの高さに圧倒される。2日目もロープウェーで標高3842mのエギーユ・デュ・ミディ展望台まで行き、高度順応を兼ねてヴァレ・ブランシュ氷河を数時間歩く。モンブランやグランドジョラス遠くにはマッターホーンなどの名峰がズラリと見えて感激だった。

 ル・ブレヴァン展望台からモンブラン

 ヴァレ・ブランシュ氷河からモンブラン針峰群

 3日目いよいよモンブランへ向かう。登山電車を乗り継ぎ終点のニ・デーグル駅(標高2386m)で下車、ここからガイドと共に歩き始める。私のガイドはフランコという優しい中年の人だった。

 登山電車終点のニ・デーグル駅

 テート・ルース小屋(標高3167mまでの登山道は、雪もほとんど無く夏の北アルプス稜線を歩くような気分で気楽に登って行ける。左側足下には、シャモニーの街並みが絵本ように美しい。テート・ルース小屋からグーテ小屋(標高3817m)までは岩尾根の急登が続きます。

 テート・ルース小屋へ向かう登山道

 登山道からシャモニーの町並み

 ここからヘルメット。ハーネスを装着しガイドとザイルを結びあう。最も危険なのは岩尾根基部の岩溝で、夏場は上部の氷河が溶けて落石が頻繁に発生する。毎年何名もの人が命を落としているそうだ。

 バイヨ岩稜の急登(白くなった岩溝が落石多発帯)

 

  我々の前を行く登山者が通過中にも、その至近距離を大きな石が弾丸のように落ちていった。それを見たガイド前進を断念し、一旦テート・ルース小屋まで引き返す。落石の頻度が下がる夕方のPM6時過ぎに再び登り始める。緯度の高い当地では、まだこの時間でも充分に明るい。

 テート・ルース小屋(ガイドが相談している。)

 危険な岩溝は幅70~80m位で、ガイドの「ゴー」という掛け声とともに死にもの狂いで走り抜ける。まるで最前線で戦う歩兵のようだ。バイヨ岩稜の急登は標高差650m程で遠くから見ると岩壁のようだが、ワイヤーやハシゴが整備され以外と容易に登って行ける。

 グーテ小屋は氷河台地の崖っぷちにへばりつくような感じで建っている。規模の割に登山者が多過ぎて小屋は超満員状態だ。予約している我々はベッドを確保できたが、トイレや通路で寝ている人も多い。小屋の中は暑くて中々寝つかれなかった。それでもベッドで寝れるだけありがたい。

 グーテ小屋

 翌日はAM2時に起床、私はシャモニーの日本料理店で買ったオニギリ弁当を食べて栄養補給する。屋外に出ると寒気が強烈だ。アイゼンとハーネスを付け、私と同年輩の男性(名前を失念した)の二人がガイドとザイルを結びあう。

 同じツアーの参加者達と前後しながらヘッドライトの灯りを頼りに氷河のトレイルを登って行く。しばらく進んだら、私のアイゼンの片方が折れてしまった。スペアがある訳じゃなし、そのまま進んで行く。顔を上げると前方を行く登山者達のライトが点々と見える。スイスのガイドは急ぎはしないものの何時間も休憩せずに歩いて行く。その歩きに追いていけなければ下山を宣告される。

 モンブランへ続く道

 徐々に周囲が明るくなってくる。モンブラン山頂まで続く雄大なアルプスの山容が広がる。今日は無風快晴、絶好の登山日和だ。こんな壮大な風景は初めての体験で、寒さと感激で身体が震えてくる。

 登山コースからの眺め

 ゆるやかな雪稜のドーム・デュ・グーテ(標高4304m)ピークを越え、バロー小屋(避難小屋)辺りでやっと一息入れる。高山病なのか若い登山者が苦しげな様子、付き添うガイドに以上無理なら下山だと告げていた。

 山頂までもう少し

 更に雄大な雪稜を登って行くと雪道は徐々に傾斜を増し狭くなる。悪天になれば、この辺りで遭難する人も多いという。グランド・ボス4513mとプテット・ボス4547mのコブを左右に捲いてラ・トゥルネットの岩場を右に見ながら最後に狭い雪稜を頑張り、AM7時30分待望のモンブラン(4803m)に到着した。グーテ小屋から山頂まで4時間半の道程だった。思わずガイドや相棒の男性と抱き合って感激を露わにする。

 モンブラン山頂

 モンブラン山頂は何の目印も無い丸い雪のピークだが、周囲はアルプスの山又山の絶景が広がる。南のイタリア側には緑の谷間や集落も見えた。登山者が次から次と登り着き、スケールこそ違えまるで7月の剣岳山頂にいるようだ。

 下山は往路をニ・デーグル駅(標高2386m)まで一気に降る。その標高差は2400m余で、甲斐駒の黒戸尾根と同程度だ。大部分樹林帯で展望の無い黒戸尾根に比べ、このコースは大展望の道だから気分がすこぶるいい。それでも下山は7時間余の時間を費やし駅に着いたのはPM3時過ぎだった。

 参加者全員の無事に下山し、夕刻シャモニーのホテルに戻った。夕食は全員が参加して地元レストランで祝宴となった。登頂の余韻に浸りながら飲む本場のビールは実に美味かった。

 下山後の祝宴

 モンブラン登山を終えた感想だが、ガイドがサポートしてくれるせいもあるけれど、技術的には困難は感じなかった。まず長時間歩き通す体力が必要だろう。それから高山病に対する順応も大事だ。レベル的に言えば、残雪期の槍穂高同程度ではないだろうか。

コメント
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