「老後の資金がありません」という映画が封切りされました。これは今私が一番好きな小説家、垣谷美雨さんの作品を映画化したのもので、小説の方は随分前に読んでいました。
物語の主人公、後藤篤子(天海祐希)は、会社員の夫、章(松重豊)と二人の子供を持つ、何処にでもいるような中流家庭の主婦です。持ち家も有りこのまま平穏な暮らしが続くものと思っていたのだが、立て続けに親の葬式、娘の結婚と出費が嵩み、尚且つ夫はリストラで失業し、篤子もパート先の契約を打ち切られてしまう。
当然の如く貯金の残高は坂道を転げ落ちるように目減りして、後藤家の家計は火の車となり絶体絶命の窮地に立たされた。これが現実ならば悲惨な老後が待つわけだが、そこは垣谷美雨さん原作の映画で、紆余曲折モロモロのドタバタがあり、ハッピーエンドで幕を閉じます。
しっかり者で凛とした天海祐希さんがオロオロと悩む姿はギャップがあって面白く、松重豊さんの頼りない夫ぶりも味わいがありました。脇を固める登場人物も多彩な役者さんが揃い、楽しく笑えるコメディー映画でした。
映画の題名が「老後の資金が・・」というせいもあったのか、盛況の観客は大部分が中高年の方々で上映中笑い声が絶えなかったが、映画が終わりフト現実の我が身に戻った時、その笑顔が切ない苦笑へ変わった方も少なからずいたのではないでしょうか。