「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

「世界仰天ニュース」 への連絡 (2) 送付した手紙

2008年01月08日 20時05分29秒 | 「世界仰天ニュース」でBPD誤報
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/52074441.html からの続き)

 日本テレビ 「世界仰天ニュース」 に 送った手紙を、以下にコピーします。

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                           11月4日
「ザ! 世界仰天ニュース」御中
                                稲本 雅之
拝啓

 稲本雅之と申します。
 どうぞよろしくお願い申し上げます。

 8月1日に放送されました、境界性人格障害を扱った番組についてのお話ですが、すでに放送直後より何回か手紙やメールなどを送らせていただきました。
 当方の立場を紹介させていただきますと、付き合っていた女性が境界性人格障害で、自死にて亡くなってしまいました。
 その体験を、同封の拙著「境界に生きた心子」(新風舎)として上梓いたしました。
 境界性人格障害のことを人々に少しでも理解してもらえるよう、微力ながら努めております。

 そういう立場からいたしますと、8月1日の番組は大変遺憾なものでした。
 諸事情により、それからすっかり時間が経ってしまいましたことをご了承ください。
 8月8日に迅速な謝罪が行なわれたのはとても結構なことでしたが、簡単な言葉だけではボーダーに対する誤解は解けないと思われます。
 映像のインパクトは非常に大きいものですから、植えつけられたイメージは容易には拭いされないでしょう。
 ボーダーの人の中には陳謝の気持ちを受け取った人もいるようですが、多くのボーダーの人があの謝罪にも憤っておりますし、かえって具合が悪くなってしまった人もいます。

 例えば謝罪の放送では、再現ビデオの女性について、「番組の中で彼女が『境界性人格障害』の可能性があると放送しました。」と言われましたが、番組を見た人は女性がボーダーであると断定している印象を受けるでしょう。
 「突発的暴力も典型的症」などと述べており、ボーダーは恐ろしいものだという意図で作られていると感じます。
 人格障害傾向テストも取り上げられていましたし、番組はボーダーと凶悪犯を直接結びつけた構成になっています。

 また、「紹介したケースは極めて例外的なもの」と言っておられますが、猟奇的な行為はボーダーとは無関係であり、「例外」というより「別物」です。
 「誤解を招きかねない」という文言も、事実「大変な誤解を招いてしまった」というのが正しい言い方だと思います。
 当事者はこういう所に敏感であり、失礼ながらあの謝罪は充分ではないと思っております。
 ボーダーの人の傷は癒されません。

 それを回復するためには、ボーダーの正しい姿を描いた新しい番組を作ることが最善であると考えます。
 しかし現実的には、それは非常に難しいことだと思いますので、次善の策といたしまして、日本テレビの他の番組(ニュース,ワイドショーなど)の中のひとつのコーナーで、ボーダーを題材として正確に取り上げていただけないかという、提案をさせていただきたいと思います。
 是非とも局としてご検討いただきたいと、心から強くお願い申し上げます。

 誠に僣越ながら、ボーダーの人たちに被害を生じさせてしまった番組として、誤解を正す大きな責任はあるのではないかと考えるのですが、いかがなものでしょうか。
 8月1日の番組で傷ついたボーダーの人は沢山います。
 ショックでリストカットしてしまったという人もいます(あるいは、それ以上の致命的な行為に及んでしまった人もいるかも知れません)。
 それだけ傷つきやすい繊細な人たちなのです。

 周囲に誤解が広まって、自分がボーダーであることをますます言えなくなったと嘆いている人たちも少なくなく、就職活動が絶望的になったという人もいました。
 多くの人たちが心身とも傷つき、実生活にも著しい実害を受けています。
 それらの切実な痛みを、どうかご理解いただきたいとお願い申し上げます。
(現在BPO「放送倫理・番組向上機構」にも問い合わせをしているところです。)

 ボーダーは若い人を中心に増えている、現代を象徴する心の病です。
 番組の謝罪や訂正の意味だけではなく、新しい情報として伝える意味があるテーマです。
 昨今、感情をコントロールできずにキレやすい,引きこもり,摂食障害,うつ,リストカットなど、若者の精神が不安定になっている背景には、ボーダーと関わる心理的症状があります。
 ボーダーを理解することは、社会として求められることだと思います。

 ボーダーは人口の1~2%いるとも言われており、誰でも近くにボーダーの人がいるのが実情です。
 ボーダーのことを知らないと、訳も分からずトラブルが起こってしまいます。
 互いに傷つけ合わないためにも、ボーダーについて知識を得ることが大切でしょう。
 今も苦しんでいるボーダーの人や、家族・パートナーの人たちが大勢います。
 報道の必要性が高い現代的なトピックでもあると考えております。

 また、ボーダーの人は極めて魅力的で、すぐれた才能を持っていることも少なくありません。
 ダイアナ元妃,尾崎豊,太宰治などがボーダーだったと言われています。それらの魅力を知ることも有意義でしょう。

 ボーダーは元々とても理解されにくいものです。
 正に8月1日の放送のような曲解をされかねません。
 だからこそ、間違いない情報を伝えることがマスコミの使命であると思う次第です。
 拙著も是非ご覧いただいて、ボーダーをご理解いただき、そのドラマチックな生きざまも伝えていただきたいと存じます。
 どうかくれぐれもよろしくお願い申し上げます。

 日本テレビのますますのご発展をお祈りいたしております。
                                   敬具

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(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/52100924.html
 
コメント
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