「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

「誰も守ってくれない」 (2)

2009年01月22日 18時50分18秒 | 映画
 
(前の記事からの続き)

 自分は何もしていないのに、 次々と降りかかる 災難と悲劇、

 15才の沙織には とても受け止めることのできない 激動です。

 気丈な沙織ですが、 志田未来の涙の訴えは 峻烈に胸に迫り、

 涙を禁じ得ませんでした。

 特に後半では、 ネットの 偏執的な書き込みによる、

 プライバシーの暴露や 外野席からの糾弾を、

 荒々しい映像で 畳みかけていきます。

 自分たちは安全地帯にいて、 無謀な攻撃を広げる 傍若無人さは、

 人間の恐ろしい性 (さが) でしょう。

 ネットの被害は 僕も受けたことがあるので、

 その言いようのない脅威は 身に沁みて分かります。

 無責任に人を傷つける 匿名の誹謗も、 決して許されない 犯罪です。

 しかし、 人のプライバシーを知りたい,

 悪い奴を必要以上に 取っちめたいという気持ちは、

 誰の心にも あるものでしょう。

 そういう気持ちが、マスコミやネットの暴走を 招く要因になっていると思います。

 これは 日本で起きている現実です。

 我々自身も 戒めなければならない ことではないでしょうか。


 沙織は 自分の母親を助けられなかった 勝浦を憎み、

 決して 心を開きませんでしたが、

 身を挺して 沙織を守る 勝浦の姿に、 心が動かされていきます。

 そして 沙織もまた 兄を守ろうとしていたのでした。

 沙織が最後に見せる 勝浦への心情。

 口には出さず それを受け止める勝浦。

 印象深い ラストシーンでした。


 家族が罪を犯したばかりに、 いつまでも 激しく付きまとう 中傷や嫌がらせ。

 そのために 自殺してしまう家族もいます。

 しかし警察は それを公に認めず、 マスコミも取り上げてきませんでした。

 恐らくこれは人知れず 沢山起きている 悲劇でしょう。

 そこに着目し、 サスペンスフルな 人間ドラマに仕上げた、

 君塚良一の意欲と 手腕に敬服します。

〔* 映画が公開される 1月24日(土)、

 映画の 4ヶ月前のできごとを描く ドラマが放送されるそうです。

 フジテレビ 「誰も守れない」  午後9時~11時10分〕
 
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