「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

臓器提供 …… 「生死命(いのち)の処方箋」 (24)

2010年09月02日 20時40分35秒 | 「生死命(いのち)の処方箋」
 
(前の記事からの続き)

○東央大病院・ 外景 (夜)
 

○同・ 第二内科

  美和子と世良、 若林が電話をかけている

  のを 待っている。

若林 「(電話で) はい、 肝臓のレシピエント

 は うちの佐伯淳一。 膵臓と片方の腎臓は

 腎臓内科の 平島多佳子17才、 糖尿病性腎症。

 もう一方の腎臓は 竹林病院の高野晃46才。

 角膜は 眼科の白内障の 男性と女性ですね。

 はい、 よろしくお願いします」

  若林、 電話を切り、 美和子のほうへ向く。

若林 「それで 淳一くんは?」

美和子 「……首に縄を付けて 連れてきたんで

 すけれど ………」

世良 「いざ オペを目の前にして 不安になって

 いるのかもしれませんね」

若林 「緒方先生が オペ前のインフォームド・

 コンセント 〔*〕 を得るために 来てくださ

 ってる。 とにかく淳一くんに 説明を聞かせ

 よう」

 〔*インフォームド・コンセント …… 

   「充分な説明による同意」 と訳される。

   医師が治療について 患者に詳しく説明し、

   患者が よく理解・ 納得したうえで 自分

   の意思で 治療に同意、 選択することを

   言う。 近年、 医療全般について 求めら

   れていることである。〕
 

○同・ カンファレンスルーム

  緒方と若林が 淳一と多佳子に 移植の説明

  をしている。

  多佳子は車椅子に座り、 17才とは思えな

  いほど 小柄で華奢である。

  美和子、 世良、 多佳子の母も 聞いている。

緒方 「……… ということで ドナーの方の名前

 は お教えできませんが、 組織適合検査の

 結果が出次第、 電話で連絡します。 肝臓と

 膵臓は 脳死の状態で心臓が動いているうちに

 移植しないといけないので、 猶予はしてい

 られません。 いいですか?」

淳一 「…… 先生、 オレ、 やっぱりその気にな

 れません」

美和子 「ジュン …… ?」

(次の記事に続く)
 
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