「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

境界性パーソナリティ障害の 生物学的側面 (2)

2010年11月10日 18時27分10秒 | ボーダーに関して
 
(前の記事からの続き)

 普段は冷静に 現実検討もしっかりした 思考ができるのに、

 情緒的に負荷がかかると 一気に現実検討が低下し、

 「妄想的」 とも呼べる 混乱しやすい状態になってしまう。

 扁桃核など 辺縁系の活動が 過剰な状態になり、

 前頭前野が圧倒されて 機能低下を起こしてしまう 傾向がある。

 まさに  「感情が理性を 圧倒してしまう状態」 に 陥りやすいのだ。

 境界性パーソナリティ障害の患者は、

 自傷行為に伴う 不安や痛みなどの 不快反応を感じにくいことが 知られている。

 脳機能のレベルでも、 痛みに対する 体性感覚野の反応が 低いことに加えて、

 扁桃格の反応が 抑制されることが示されている。

 自傷行為をすると  「痛み」 に不快反応を起こすが、

 扁桃核の反応は抑制され、 そのため 自傷行為による 「痛み」 だけでなく、

 慢性的な心の 「痛み」 も 一時的に抑制されることになるのだろう。

 患者が自傷行為を  「安定剤代わり」 にするというのは、

 こうしたメカニズムによる。
 

 境界性パーソナリティ障害においては、

 「自分自身や相手の気持ちに しっかり気付き、 しっかり表現する能力」 である

 「内省機能」 が、 前頭前野の機能と相関している。

 そのような 生得的な脳の問題が、 治療によって改善するのだろうか? 

 世間一般には、 

 「生まれの問題」 = 「生物学的なもの」 = 「精神療法で治らない」

 = 「薬物療法」、

 「育ちの問題」 = 「心理的なもの」 = 「精神療法」 という、

 やや単純化された 図式があるようだ。

 しかし事実は そんな簡単なものではない。

 「内省機能」 は 精神療法によって 改善することが実証されている。

 生物学的に決定されている 脳の問題も、 治療で変えることができるのである。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 みすず書房 (小羽俊士) より 〕
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする