(前の記事からの続き)
○ 東央大病院・ ICU
美和子 「今度は 前庭反射を調べる」
世良 「まだやるのか」
美和子、 水が入った注射器を 安達の右耳
に当てる。
美和子 「見てて。 右耳に冷水を注入すると、
脳が正常なら 眼球が右に寄るの。 これを
『眼振』 ていうんだけど」
美和子が水を注入するが、 安達の目は止
まったまま。
世良 「動かないな」
美和子 「左耳に注入すれば、 通常は左に寄る
はず」
世良 「動かない …… 」
美和子 「 『眼振』 も消失ということ」
世良 「 …… でも、 何だか変な気もする ……
こうやって 色んな反応を調べても、 実際に脳
の中が 見えるわけじゃない …… 脳は一体
どうなってるんだろう? この人の 頭の中は
…… ?」
美和子 「(答を避け) …… 眼球頭反射を調べ
るわ。 頭を動かしてみると、 脳死になって
いれば、 眼球は人形の目みたいに 固定した
まま動かな …… 」
美和子が安達の顔を 左に向けると、 眼球は
美和子をぎょろりと 睨むかのように、
右へ動く。
美和子 「!? …… (血の気が引く)」
世良 「目が動いた …… !?」
美和子 「 …… まさか …… !?」
美和子、 恐る恐る 安達の顔を 右に向けて
みる。
眼球は左に動き、 美和子を凝視する。
美和子 「(愕然とする) まだ、 生きている …
… !?」
世良 「本当か !?」
身の毛がよだつ思いがする 美和子と世良。
川添の声「何をしている !?」
驚いて振り向く 美和子と世良。
戻ってきた川添が 入ってくる。
川添、 注射器や脱脂綿が 置いてあるのを
認める。
川添 「何だこれは !? 君たちはなんてこと
を !!」
世良 「す、 すみません …… !」
川添、 美和子を 安達から引き離す。
がっくりと膝をつく美和子。
川添 「自分のやったことが 分かってるんです
か !?」
美和子 「 …… !! (川添を見上げる)」
川添 「 …… 私も バカなことをしたもんだ。
あなたたちに任せるなんて …… (わなわな
と)」
美和子・ 世良 「 ……… 」
(次の記事に続く)