「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

生体肝移植 …… 「生死命(いのち)の処方箋」 (46)

2010年11月23日 21時33分27秒 | 「生死命(いのち)の処方箋」
 
(http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/61315411.html  からの続き)

○ 東央大病院・ 正門
  

○ 同・ 消化器外科

  交換輸血をしている淳一。

  
○ 同・ 食堂

  世良が 丼飯をかき込みながら、 本やノート

  を見ている。

  淳一が来る。

淳一 「世良さん」

世良 「やあ、 こんちは。 元気?」

淳一 「まあね (作り笑い)」

  淳一、 世良の隣に座る。

淳一 「よく 勉強してるんだね」

世良 「大事なことだからね」

淳一 「(世良のノートを覗き込む) 生体肝移

 植 …… ?  何、 これ ?」

世良 「うん …… 生きた人の 肝臓の一部を切って

 移植する方法なんだ。 肝臓は 強い再生能

 力を 持っているから、 切ってもすぐ 元の大

 きさに戻る。 これなら 脳死の人から 提供し

 てもらわなくてもすむんだよ」

淳一 「ふーん …… 」

世良 「淳一くん、 それだったら 受ける気はあ

 るかい?  …… 例えば、 肉親のお姉さんから

  …… ?」

淳一 「え ?」

世良 「どうかな ?」

淳一 「 …… 姉キにはその話、 したの?」

世良 「いや」

淳一 「 …… 姉キには 言わないでおいて …… 」

世良 「でも 医者なんだから、 知らないはずは

 ないだろう」

淳一 「 …… (下を向く)」

世良 「それなのに美和子は 脳死にこだわって

 る …… (自問するように)」

淳一 「 …… 姉キが、 自分の肝臓切るのが いや

 だって言いたいの ?」

世良 「いや …… 」

淳一 「姉キを そんなふうに言うな …… ! (目

 に涙がにじむ)」

世良 「そ、 そんなつもりは …… 」

淳一 「(声を震わせて) …… 頼むから、 姉キ

 には そんなこと言わないで …… !」

世良 「 ……… 」

(次の記事に続く)
 
コメント
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