(前の記事からの続き)
○ 寺の境内
美和子と淳一が 石段を登ってくる。
美和子 「まだ 気は変わらないの …… ?」
淳一 「姉キのほうこそ 変わらないのかよ ?」
美和子 「ジュンにも 生きてて嬉しいことが
できたはずよ」
淳一 「誘導尋問だな」
美和子 「好きなんでしょ? 多佳子ちゃんの
こと」
淳一 「ボッキします」
美和子 「ジュン、 あんただって 生きたいんだ
よ。 その気持ちが 生きたいってことなんだ
よ」
淳一 「 ……… 」
美和子 「ジュン、 多佳子ちゃんのためにも …
…」
淳一、 祭壇の前の鈴を鳴らす。
淳一 「(手を合わせて) 死ぬまで生きられま
すように !」
美和子 「 …… (淳一を見る)」
階段に 腰を下ろす二人。
美和子 「生きてれば、 きっと幸せなことがあ
る」
淳一 「生きるって、 長さじゃないよ。 質だ
よ」
美和子 「 …… 命の質 …… ?」
淳一 「ああ」
美和子 「 “質の低い命” より、 “質の高い
命” …… ?」
○ インサート・ 高層ホテル
世良 「命に “質の上下” があるんだろうか
?」
○ 寺の境内
淳一 「それを選ぶのは、 医者じゃなくて オレ
自身だよ」
美和子 「 ……… 」
淳一 「(独り言のように) 選ぶのは、 オレ自
身 …… 」
美和子 「 …… (つぶやく) ジュンは それでい
いかもしれないけど、 あたしはどうなるの
…… ?」
淳一 「え …… 」
美和子 「ジュンは 自分だけ満足ならいいの ?
自分だけ 純粋に死んでいければ それでいい
って …… !?」
淳一 「そんな …… (美和子の顔を見る)」
美和子 「(歯ぎしりする思いで) 自分だけの
命だと 思ってるわけ!? あたしは 何のため
に今までずっと …… !!」
淳一 「姉キ …… !? (美和子の腕に手をかけ
る)」
美和子 「(淳一の手を払いのけて 立ち上が
る) 少しは 残されるほうの身にもなってよ
…… !!」
美和子、 走っていく。
淳一 「姉キ、 待って …… !」
淳一、 追いかけようとして、 つまずいて
転ぶ。
手足が痙攣する。
淳一 「!? …… 」
(続く)
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