「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

よい自分、 悪い自分、 そして本来の自分 (1)

2010年05月18日 20時04分25秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 思春期を迎えるまでは、 親から与えられたままに、 自分を形成します。

 それは 親の価値観に支配された  「よい自分」 です。

 思春期から 自己意識が育ってくると、 その自分に気付いて、

 お仕着せを脱ぎ捨て、 正反対の自分を まとおうとするようになります。

 それが 「悪い子の自分」 です。

 親を恨みつらみ、 困らせ、 それまでの人生を すべて否定するのです。

 この時期は、 親に対する嫌悪と 自分に対する嫌悪が 同居しています。

 しかし 境界性パーソナリティ障害の人は、  「悪い子の自分」 になりきれません。

 「悪い子の自分」 として 振る舞いながら、

 罪悪感や後ろめたさを 感じてしまいます。

 「よい子の自分」 と 「悪い子の自分」 が 統合されることなく、

 バランス悪く併存しています。

 二分法的で 極端に揺れ、 不安定になるのです。

 そこからの回復は、 双方が大切な 自分だということを受け止め、

 両方の自分を 統合することです。

 それによって、  「本来の自分」 に辿り着くのです。

 否定してきた親や、  「よい子の自分」 を 再評価することです。

 同時に、  「悪い子の自分」 に対して 距離を取り始め、

 「悪い子の自分」 を もう一度否定します。

 「よい子の自分」 に戻るのではなく、 それを受け入れ、

 「悪い子の自分」 も通過した、 新たな自分が生まれます。

 この過程は 一回限りではなく、 何度か繰り返されて 成し遂げられます。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕

(次の記事に続く)
 

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