(前の記事からの続き)
【ふたつめは、 いわゆる ロマンティック・ラブ・イデオロギーを前提として
描こうとする点である。】
ふたつめも ひとつめと重なる点がありますが、
心子がロマンティックなのも また障害に関係するものでもありました。
この点では 販促のためのイデオロギーではありません。
また、 拙著発刊当時ボーダーは、
一般の人にはまだ 名前さえよく知られていない存在で、
知っている人も 批判的なイメージしか持っていませんでした。
ボーダーを理解してほしいという 僕の第一の目的のため、
ボーダーに誤解を抱かないようにしてもらうのが、 まず重要なことでした。
そのため ボーダーの魅力的な面を 特に強調することに、 僕は腐心したのでした。
敢えて美化しているような点も ないとは言えません。
作品というのものには それぞれの役割があり、
ある題材を描くにも、 その時期によって 狙いは変わると 僕は考えています。
ボーダーを取り扱う 初期の作品は、
上記のように ボーダーをネガティブでないものとして 知ってもらうことが、
その役割だとするのが 拙著のポジションです。
次の世代の作品群で、 ボーダーをさらに深めるために、
暗部も究明したり、 難題に取り組んだりしていく必要が あるのではないかと、
思案するものです。
従って拙著では、
ロマンティック・ラブ・イデオロギーと言われても 構わないような面があります。
それによって、 一人でも多くの人に ボーダーのことを読んで知ってもらえるなら、
それが本望なのです。
〔引用:「境界性パーソナリティ障害の障害学」
野崎泰伸 『現代生命哲学研究』第3号〕
(以上)
*
野崎さんの論文 「境界性パーソナリティ障害の障害学」 が掲載されている
「現代生命哲学研究」 は、 下記で見ることができます
http://www.philosophyoflife.org/jp/
大阪府立大学の 「現代生命哲学研究所」 が 発刊している学術誌ですが、
どれも興味のあるタイトルが 並んでいます。
因みに、 筆者の一人である 森岡正博さん (大阪府立大学教授) は、
新進気鋭の生命倫理学者だったころ、 生命倫理のシンポジウムでご一緒したり、
手紙のやり取りをしたことも 思い出します。
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