小笠原諸島・母島ジャイアン ブログ  -GIAN'S HAPPY BLOG-小笠原諸島・母島で自然農&便利屋

小笠原諸島・母島で持続可能な暮らしを目指しています。

その中や暮らしで学んだことを紹介したいと思います♪

硫黄三島クルーズに初参加!!

2017年09月12日 | 小笠原 野生動物
■去年、硫黄島訪島事業2016に初参加して、
今年は硫黄三島クルーズに初めて行ってきました!

硫黄三島とは、
父島、母島などがある「小笠原群島」から
南に約300km先にある「火山列島」にある三つの島、
北硫黄島、硫黄島、南硫黄島の事を指します。

ちなみに小笠原諸島というのはその小笠原群島に聟島列島や火山列島、
さらには南鳥島や沖ノ鳥島を含むとても広い島群の総称です☆

その硫黄島を中心とした火山列島の海域は
日本本土ではなかなか見れない海鳥の宝庫であり、
毎年のこのクルーズに数多くのバードウオッチャーが参加しに来ることで有名です。


今年は硫黄島の係留ブイが新おがさわら丸の重さを支えきれないということで、
6月に実施予定だった硫黄島訪島事業が中止となり、
それに参加予定だった島の中学2年生もこの硫黄三島クルーズに参加することになりました。
(うちの中二の長女もそちらで参加)。


■今回の三島クルーズは天候にも海況にも恵まれ、最高の船旅でした♪
入港日の夜19時に父島を出港し、
翌朝には一番南の南硫黄島に到着します。

素晴らしい朝日がお出迎えしてくれました。


このクルーズはなんと朝4:30に船内の電気が一斉に点きます(笑)。
目的がバードウォッチングだからです。
出発の夜には夜22時過ぎまで講演会があり、
パネル展示や解説員が各位置に配置されています。


■南硫黄島です。
ここは島の誕生以来、人の定住の記録がなく、
原生の自然が残される世界でも貴重な火山島です。

日本で初めて昭和50年に原生自然環境保全地域に指定されて、
立ち入りが厳しく制限されています。
そして島全体が天然記念物に指定されています。

標高は916mで東京の島の中では最高峰を誇ります。
島の直径も約2000mなので、なんと島の勾配は45°ということになります!
父島の二見湾に丁度収まるサイズの南硫黄はまさに絶海の孤島☆

今年と10年前を含め、過去4回山頂までの調査がされています。
調査隊の大変なエピソードを聞いて心していたのですが、
いざ目前にそびえ立つ、人を寄せ付けない雰囲気の島を見ていると、
超背ですらあの超急こう配な地形を上るというのが信じられない思いでした。

このあまりにも壮大な南硫黄島には
外来種のネズミすら入っておらず、海鳥の貴重な繁殖地として存在しています。

クロウミツバメの現在見つかっている世界で唯一の繁殖地です。

この周辺には
アカオネッタイチョウ、
シロアジサシ、
クロアジサシ、
ヒメクロアジサシ、

アナドリなどを見ることができました。

7月の台風5号、8月末の台風15号で猛烈に叩かれた痕跡が各所に見られます。
解説員の方も言っていましたが、
南島や母島の南崎で営巣中の海鳥の3分の1が台風で命を落としているのを考えると、
こうしてカツオドリの雛も含め、
厳しい自然の中を乗り切り、
元気な姿を見せてくれていることが嬉しいかったです☆


■戦争の爪痕が今なお生々しく残る硫黄島。

僕自身、去年初めて訪れた訪島事業で壮絶な戦争の爪痕を目の当たりにしました。


冒頭の事情で今年の訪島事業が中止となったので、
今年はこの三島クルーズで洋上慰霊祭が執り行われました。


これまで事前学習を重ねてきた島の中学生のスピーチがとても素晴らしかったです。
うちの長女も戦争で亡くなった方におもいを馳せて語っていました。

その後、硫黄島を1周し献花を全員で献花を行いました。

内地の友人もこの為に内地から花を持参していました。
乾きで苦しんだ兵士をおもって水を捧げる人、
ビールを捧げる方もいました。

それぞれの戦場への追悼を終え、
船は一路北硫黄島へ。

洋上慰霊祭に関しては別に記事を書いています。




■戦前までは人が住み、その集落跡があり、今は無人と化した北硫黄島。
大正時代は220人が住み、昭和19年の強制疎開時は島民90人全員が本土に引き揚げたそうです。
母島には北硫黄島出身の方が数年前までいて、色んな話を聞かせてくれていました。

北硫黄島の標高は792m。
夏の澄んだ空気の晴れた日は乳房山山頂から北硫黄島の山頂がわずかに見えるそうです。

こんな地形の島に2つも村(西村と石野村)があったと言われても、にわかに信じられないほど、
あまりに厳しい地形でした。


島の上部には「3万坪」と言われる広大な鞍部(平らなエリア)があり、
そこで牛を放牧していたというから驚きです!(どうやって上まで牛を上げたのかは謎です!)

平成3年の調査ではマリアナ系先住民のカヌーを掘る石器など遺跡が見付かっており、
江戸時代にナサニエル・セーボレーが小笠原に定住する遥か昔の石器時代に小笠原諸島に人が住んでいたことが明らかになりました!!

人が定住した記録のない南硫黄島の原生の大自然もとても魅力的ですが、
過去に人が住んでいた北硫黄も
また色んな時代のドラマに思いを馳せることができて、とても魅力的です♪

石器時代の人の暮らし、
戦前の人の暮らし、
そして無人島となった今の北硫黄…
様々なおもいを交錯しながら飛び交う海鳥と美しい情景を眺めます。


これはアカアシカツオドリ。
小笠原でもそんなに目にしない種類の海鳥です。
北硫黄島では森の樹上に営巣し、多くの姿を魅せてくれました。

先日の南硫黄の10年ぶりの調査で国内唯一のアカアシカツオドリの集団営巣地であることが判明したそうです!
きっと北硫黄も調査が進めば、南硫黄と同じような貴重なコロニーとなるのでは!?


これはそのアカアシカツオドリの幼鳥です☆


もちろんおなじみの普通のカツオドリが沢山いたほか、
シロハラミズナギドリ


オナガミズナギドリ、
シラオネッタイチョウ、
シロアジサシ、
クロアジサシ、
ヒメクロアジサシ
なども見れました!


■そしてOWA(小笠原ホエールウォッチング協会)の職員さん曰く、
過去7回参加した硫黄三島クルーズで一番鯨類がここまで見れなかったのは稀だとか(笑)。

そんな中、妻が得意のクジラ目になって見事、鯨類を発見しました!
大声で叫ばれて、慌てて撮った僕の写真がこれです(笑)↓


これだけではなんだかさっぱりわかりません!
その後、OWAの職員さんが見てコブハクジラと判定してくれました♪
約6頭ほどいます(もう少しいるかも)。

まったく知らない種類のクジラでした。
せっかくの機会なので調べてみると、
ハクジラ亜目アカボウクジラ科オウギハクジラ属に属するクジラであることが分かりました。

潜りで有名なマッコウクジラよりもっと深く潜るアカボウクジラの仲間で、
あまりに深く潜るせいか深海のダルマザメの食痕が体中に付いています。

そして、オウギハクジラの仲間の特徴でもある不思議な顎の形。
ネットで調べてみると分かりますが、
ホントに不思議な下あごから左右に突き出た歯があります(成熟オスのみ)。

いろいろ調べてみたら、ザトウやマッコウに比べて極端に情報が少なくてビックリしました!
本当に不思議な顎ですね~
以前、母島の南京浜にストランディングしたコビレゴンドウにしろ、
こうして少しずつ新しい鯨類の種類と親しみができてきて嬉しいです♡

コブハクジラはこれから気になる存在になりました♪

硫黄三島クルーズは
そんな不思議な生き物に逢ったりと
圧倒的な野生動物の雰囲気を
存分に味わうことのできる贅沢なクルーズでした!

帰りはなかなか通らない母島の東側を通り、
美しい夕日を眺めながら夜18時に父島に戻りました☆



夜遅くから早朝も含め、
出ずっぱりで活躍したスタッフの皆様、
戦没者慰霊祭の関係の皆様、
船員の皆様、
参加した皆様、お疲れ様でした!

講演会に早朝から連続で島周りまくりで、
ちょっとハードなスケジュールの工程でしたが、
とても楽しい船旅となりました!

どうもありがとうございました♪