高大連携歴史教育研究会会員のうち20人が、教科書の執筆や編集に携わっていることが報道された。
12月3日に書いたところであるが、同会の油井大三郎会長(東大名誉教授)は会が提案した歴史用語精選案は民間任意団体の提言であり教科書の執筆や検定に影響を与えるものではないと繰り返し述べているが、この事実は氏と会の主張を覆すに十分なものと思う。また、林芳正文科相は教科書検定に影響しないと静観の構えであるが、検定は記述項目と内容についての適否を判断するもので、書かれていない項目を記述させるのは極めて困難と思う。文科省が今動かなければ、歴史用語精選案に沿った教科書が世に出ることは間違いないと思う。自分は南京事件や慰安婦について記述することを問題と考えるのではなく、二つの案件で近年明らかになりつつある事象をも等量に併記する公正な記述であれば、指導要領に記されている「考える歴史教育」に合致するであろうが、会長の歴史観から推測される記述方向の危険性を問題視しているのである。
歴史教育は過去を知識として得るツールではなく、過去から自分の将来を創造するための学問と思っている。油井教授は中国や韓国の「事実を曲げた歴史教育」が、国際社会から冷視される「いびつな民族」を作り出していることをどのように感じているのだろうか。