在イスラエル米大使館のエルサレム移転が決定したようである。
エルサレムはキリスト・イスラム・ユダヤ各教の聖地で十字軍以来の係争の地であることから、主要国は首都エルサレムを避けてテルアヴィブに公館を置いている。アメリカは中東和平の進展に応じてとしながらも、クリントン時代から公館のエルサレム移転を決定していたが6ヵ月ごとに大統領令を出して移転を先送りしていたものである。今、トランプ大統領が移転を決定した理由として種々取り沙汰されているものの真意は分からないのが実情ではないだろうか。現時点でいえることは、米国の軍事的力点が北朝鮮から離れかけているということである。アメリカには伝統的に同時に二つの大規模紛争には対処しないという軍事力の限界を設けている。有名な1荷1/2戦略は、1個の大規模紛争と1個の中規模紛争に同時対処できる通常兵力を軍備の限界とするもので、この設定に沿って空母や地上兵力を整備している。このことから、アメリカは中東と北朝鮮を等視しているのではなく、武力行使を要する地域が比較的狭く、攻撃目標が限定できる北朝鮮は1/2規模の対応で十分と考えているのではないだろうか。一方、大使館移転に伴う混乱はシナイ半島のみならず中東全体に及ぶ大規模紛争に発展する可能性があり、この場合は極東の軍事力を抽出してでも主力を中東に向けることさえ想定しているものと思われる。
憲法の足枷を口実に、米国の軍事力に依存して自己防衛力の整備を放擲して来た日本としては、米国の思惑如何で右往左往しなければならい事態。まさに"今そこにある危機"で、平成30年度以降の地上型イージスの配備や巡航ミサイルの導入で、米軍の中東スィングに対応できるのだろうか。泥棒を見て縄を編むならまだしも刃物をちらつかされてさえ縄を編むことに反対する人のなんと多いことか。