高大連携歴史教育研究会(以下、研究会という。)が歴史用語精選案(以下、案という。)として提言したものである。
研究会の趣意書を箇条書きしたものを末尾に引用するのでご覧頂きたいが、要は、高校の歴史教育を大学入試準備に特化させようとの趣旨と理解した。現在、大学進学率が50%を超えているものの、中卒者・高校中退者を含めると50%以上の青年が高校までに歴史を含めた素養教育を終わるのである。更には、大学で歴史を学ぶ者が少数であることを考えれば、将来的には成人の90%以上が歴史教育を高校教育で終わることになり、案に基づく教育が正しい歴史認識を涵養するために最適のものであろうか。歴史認識は生涯を貫くバックボーンとなるべきもので、国際感覚を養なう上でも外国人との応接でも不可欠の要素であると思うが、研究会の趣意書からは歴史と人格形成の関係考察は見事に抜け落ちている。HPでは、案が教科書記述や大学入試作成を拘束するものでない民間団体の提言と述べているが、研究会構成員の経歴を見れば少なくとも教科書記述には大きな影響を持つものと思われる。だからこそ、坂本龍馬が教科書から消えると大々的に報じられているものと思う。また、用語個々の選定経緯を開示しないことから、選定が自虐史観に染まったものであろうことは容易に推測できる。
藤田嗣治は、パリコンミューンに参加した同志芸術家の多くが、第一次世界大戦勃発を知るや率先して祖国のために戦ったことに驚いている。トランプしかり、習近平しかり、メルケルしかり、国際人とは民族のアイデンティティを強固に内包する人であり、それ故にこそ世界に地歩を築けるものと思う。高額な分担金を拠出する傍ら少なからぬ日本人が働くユネスコにおいて、南京虐殺説の不当性さえ主張できぬ国際人の育成が研究会の真意であろうか。
《研究会設立趣意書から》
①高等学校の世界史・日本史教科書改革と思考力育成型授業のあり方
②各地の教育実践や史料集作成などの交流とデータベース構築
③高等学校における歴史系新科目のあり方
④大学入試・高校新テストなどの検討や歴史系出題のあり方
⑤大学における歴史系の教養教育や教員養成課程のあり方、